大会レポート
2024年9月21日~22日の2日間、神奈川県立青少年センターにて、二足歩行ロボット格闘競技大会・第43回「ROBO-ONE」が開催されました。これまでの大会では、ロボットが新体操のような演技を行う「パフォーマンス部門」と、格闘競技を行う「ファイト部門」の2つがありましたが、今大会では初日の予選を含むすべての試合が「ファイト部門」として実施されました。
大会を主催する二足歩行ロボット協会の西村輝一氏は、「格闘競技に集中してロボットを開発することで、“大技”などの技術がさらに発展することを期待しています」と、その意図を語っています。「大技」とは、観客を魅了するような華麗な技です。対戦相手を投げ飛ばし完全に空中に舞う技や、プログラムが難しいダイナミックな技が想定されており、3ダウン先取で勝利となる中で最大で2ダウンを奪うことができるなど、試合の流れを一瞬で変える力があります。一方、成功・失敗に関わらず同じ技は1試合1回しか使用できない制限もあります。そんなハイリスク・ハイリターンな“大技”ですが、格闘競技のみとなった今大会だからこそ、参加者たちも開発に力を注ぎやすく、大きなチャレンジや技術進歩のきっかけとなりました。
また前大会からは、「アルティメットタイム」も導入されました。試合のラスト30秒に設けられたこの時間は一度使った“大技”も無制限に使用できるようになり、互いに大技を連発する派手な戦いが繰り広げることができるようになります。前大会からの変更を受け、技の進化やバリエーション拡充など新しい変化が予想される中で始まった21日の予選には、110機がエントリー。32機までに絞られる激しい戦いとなりました。
今大会では香港・台湾など海外からのエントリーも多く、年々国際色が強くなっています。参加機体の形状もまるで「箱」のようなロボットやしっぽが付いたロボット、巻き付けるようにして腕が畳まれるロボットなど、これまで見たことがない設計の機体が次々と現れ、お互いに格闘能力を大いにアピールする、興味深いトーナメントとなりました。
予選から格闘競技を行う形式になったことは、多くの選手たちにとってポジティブに受け止められたようです。「ROBO-ONEではみんなバトルがしたくてロボットを作っているので、大会に参加した全員が1度はバトルをして終わることができるのは、とても良かったと思う」「バトルだけに集中できるので、機体の熟成度が上がる」といった感想を複数の選手から聞くことができました。
22日の決勝トーナメントには、前日の予選を通過した32機に加え、すでに全国各地で開催された認定大会で勝ち進みROBO-ONEの“決勝出場権”を手にしている11機の合計43機が参加しました。予選から勝ち上がった中には香港から6チーム、台湾から9チームの海外勢も含まれており、海外選手の勢いを感じさせてくれました。
香港から出場した『BigHead Ting』(BHNKC)は、第3回戦の試合開始直前に機体にトラブルが発生。2分間の準備時間を越えてもリングに立つことができませんでした。しかし諦めず、1ダウンのペナルティを受けるかわりに2分間の整備時間をとれるタイムを活用し、最終的に4分、2ダウン分のペナルティを受けた状態で試合を開始しました。『BigHead Ting』は、1ダウンも許されない状況から1つずつ相手のダウンを奪い、最終的に3ダウンを奪って逆転勝ちしました。製作者の諦めない姿勢と周囲のサポートが勝利を呼び込んだ、心震える場面でした。
諦める勇気が喝采を呼んだ場面もありました。準決勝で『フェムト』(いんしゅろっく)と対戦した『<』(クレシェンド/ニジガクロボ部ぷくたい)が、試合中に転倒すると突然脱力。オペレーターは急いでタイムを取り、機体を確認しました。考え込んだ末に彼が出した結論は「棄権」。トラブルは電源系統で発生しており、修理は可能なものの、短時間で完璧に直せるかは未知数。ロボットはバッテリーの故障等、発火の可能性もあり大会の安全を考え、万が一にも事故にならないようにと判断したとコメントしてくれました。決勝が見える状況でその決断を下す勇気と、安全こそが最優先であるという、ものづくりの基本を大切にした姿勢に、会場からは惜しみない拍手が送られました。
決勝戦は、優勝経験を持つ決勝トーナメント常連の『コビス』(ビスコ)に対し、今回初めて決勝の舞台を踏んだ『フェムト』(いんしゅろっく)が挑む構図となりました。開始から果敢に間合いを詰めて攻める『フェムト』でしたが、低い姿勢から繰り出される『コビス』のパンチがカウンターのように命中し、ものの1分あまりで立て続けに2ダウン。起死回生を狙った『フェムト』は“大技”の前転キックを放つものの不発。再開直後、今度は近い間合いで『フェムト』の右サイドに入った『コビス』が捻り投げを放ち、3ダウン目を奪取。『コビス』が無傷での優勝を飾りました。
『コビス』はダイナミックな“大技”が強みです。前転で相手との距離を詰め、足がリングに着くより前に相手を挟み、そのまま相手を宙に持ち上げて頭の向こうへ投げ飛ばすという大技をトーナメント中に成功させ、今大会で新設された大技大賞を獲得。優勝とのダブル受賞となりました。
また、第41回大会でミスミ賞を受賞されている水野谷氏が製作した新型機『Raptor-COLZA』(カトジュン)は、アルティメットタイムにだけ許されるしゃがんだままの歩行など、バリエーション豊かなモーションが評価されて技術賞を受賞。“大技”の進化はもちろん、今大会に出場した機体の高いバトル能力は、それらを開発した制作者がバトル一点に情熱を注ぎ込んだことで結実したものと言えるでしょう。
そしてミスミ賞に選ばれたのは、前述の大逆転勝利を収めた『BigHead Ting』、勇気ある棄権から立て直しての3位入賞を果たした『<』、そして特長的な見た目と戦い方から観客のみならず参加者からも注目を集めた『elephant』(長岡動物園)の3チームとなりました。
決勝トーナメント当日は、神奈川県が主催する「青少年のためのロボフェスタ2024」も同館内で併催されました。いろいろなロボットの体験操縦やワークショップ、デモンストレーション見学ができるイベントで、大勢の親子連れが来場し、「ROBO-ONE」の観客席も大いに賑わいました。また、ROBO-ONEのプログラムの中で実施されたロボット操縦体験には、多くのお子さんが列をなしロボット操作に夢中になっていました。二足歩行ロボットが人間のように素早く動き、熱い格闘バトルを繰り広げる様子を間近で見た子どもたちに、きっとものづくりへの興味と憧れが芽生えたに違いありません。
ミスミはこれからも、「ROBO-ONE」を通じてものづくりの熱い想いを応援します。
2024/09/21-22 神奈川県青少年センター
第43回 ROBO-ONE
2023/09/23-24 神奈川県青少年センター
第42回 ROBO-ONE
2022/09/24-25 厚木商工会議所(無観客試合)
第41回 ROBO-ONE
2021/09/25-26 リモート大会
第39回 ROBO-ONE /
第23回 ROBO-ONE Light /
第8回 ROBO-ONE auto
2021/02/27-28 リモート大会
第38回 ROBO-ONE /
第22回 ROBO-ONE Light
2020/09/19-21 リモート大会
第37回 ROBO-ONE /
第21回 ROBO-ONE Light /
第7回 ROBO-ONE auto /
第4回 ROBO-ONE 剣道
2020/02/08-09 日本科学未来館
第36回 ROBO-ONE /
第20回 ROBO-ONE Light /
第6回 ROBO-ONE auto
2019/09/28-29 神奈川県立青少年センター
第35回 ROBO-ONE /
第19回 ROBO-ONE Light /
第5回 ROBO-ONE auto
2019/02/23-24 バンドー神戸青少年科学館
第34回 ROBO-ONE /
第18回 ROBO-ONE Light
2018/09/23-23 神奈川県立青少年センター
第33回 ROBO-ONE /
第17回 ROBO-ONE Light /
第4回 ROBO-ONE auto
2018/02/24-25 日本科学未来館
第32回 ROBO-ONE /
第16回 ROBO-ONE Light /
第3回 ROBO-ONE auto
2017/09/23-24 神奈川県立青少年センター
第31回 ROBO-ONE /
第15回 ROBO-ONE Light /
第2回 ROBO-ONE auto