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大会レポート

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第42回 ROBO-ONEロボワン

2023年9月23日〜24日の2日間にわたり、神奈川県立青少年センターにて、二足歩行ロボット格闘競技大会・第42回「ROBO-ONE」が開催されました。1チームずつがロボットの性能をアピールするパフォーマンス部門、ロボット同士が1対1のバトル競技を行うファイト部門の2部門が設けられたROBO-ONEは、COVID-19の影響を受けて第37回大会からオンラインでのリモート競技が続き、前回も無観客で開催。しかし今回ついに、会場に観客を迎え入れた本来の姿が戻ることとなりました。

23日のパフォーマンス部門には、86機のロボットが参加。そのうち海外からの参加ロボットは、台湾・香港・チリから合わせて20機を数え、全体の1/4に迫りました。

パフォーマンス部門の上位は僅差でひしめく展開となりました。『ME-16』(まこエレクトロニクス)は、重量制限が4kg以下であるROBO-ONEにおいて、1.1kgという他の出場ロボットよりも明らかに小さくスリムな機体に凝縮された技術力が高評価につながり、296点で3位に。37回大会のバトル(現:ファイト部門)優勝者である『コビス』(ビスコ)は、デモンストレーションで倒される“やられ役”までを自律制御するなど卓越したパフォーマンスを見せ、前大会のトップスコアと並ぶ299点で2位となります。その2チームを上回ったのは、前大会でもパフォーマンス部門を制した『四代目ヨコヅナグレート不知火』(DrGIY)。安定した動きを見せるだけでなく“投げられた箱をキャッチする”自律デモンストレーションも成功させ、自己記録を更新する301点で連覇を果たしました。上位3チームの差はわずか5点。素晴らしいロボットを作り上げるだけでなく、それぞれ自分のロボットをいかにアピールするかを考え抜いたからこその高得点だったのでしょう。順位こそつきましたが、それぞれ負けず劣らずと言っていい結果だったのではないでしょうか。

パフォーマンス部門の終了後には、ファイト部門トーナメントへの出場権をかけた生き残りバトル競技・ランブルが4試合行われました。『リキット』(大阪電気通信大学自由工房HRP)と『エデルクリーガー』(大阪電気通信大学自由工房HRP)、『煉』(ジャッキー)、そして香港から参戦した『Black King Kong』(WETD)の4機が激戦を勝ち抜き、翌日のファイト部門へ進出しました。

24日のファイト部門は、パフォーマンス部門で上位を獲得したロボットと、ランブルを勝ち抜いたロボット、そして全国各地で開催されたバトル競技で選抜されたロボットが集結した、計47機によるトーナメント戦となりました。選手からも「観客の応援など、熱気が直接伝わってくるので気持ちが高まります」というコメントを聞くことができましたが、3年ぶりに同じ空間を共有した選手と観客は、互いに刺激し合って会場を盛り上げ、ROBO-ONEを楽しんでいました。

今大会のファイト部門では、新ルールとして採用された「アルティメットタイム」が注目を集めました。「アルティメットタイム」とは、試合のラスト30秒に突入すると、派手で高度な“大技”でしかダウンが奪えなくなるかわりに、それまでの競技時間中に反則だった攻撃も有効となるルールです。選手たちにとっても初めて実戦で体験するルールのためか、活かしきれないチームや戸惑うチームが多い中、3位決定戦でダウンカウント1-1から「アルティメットタイム」に突入したとたん、狙いすました前転キックを2回連続で命中させて勝利した『クロムキッド』(kupakuma)の戦い方は、さすがベテランと思わせるものでした。

熱い戦いが繰り広げられる中、決勝戦には『Typerion』(皆川)と、『ハードラックス』(セキ)が顔を合わせることとなりました。『Typerion』は前回初優勝を果たして連覇を狙う立場、『ハードラックス』は準優勝2回の実績を掲げて大会初優勝を目指す立場です。他のバトル競技でも幾度となく対戦したことがある2機の戦いは、開始直後からほとんど動きが止まらない、目も追い付かないスピードで展開します。最初のダウンを奪ったのは『Typerion』でしたが、それも『ハードラックス』が攻撃を空振りして生まれた一瞬の隙にカウンターでパンチを入れるという高度な技。『ハードラックス』はその後、機体トラブルでタイムを取得し、さらに1ダウンが加算されて2ダウンとなります。『Typerion』は後がなくなった『ハードラックス』に1ダウンを奪い返されるも、直後に再び『ハードラックス』をすくい上げて3ノックダウン。優勝を決めた後、リングサイドで何度となくガッツポーズを繰り返す皆川氏の姿から、連覇を果たした喜びの大きさが見て取れました。試合途中で見られた通信不良のような場面は、一定のタイミングで通信機にリセットをかけるというフェイルセーフシステムによるものだと話し、起こりうるトラブルに対して油断なく備える姿勢こそが連覇を引き寄せたのだと感じました。

24日にはファイト部門のエキシビションマッチとして日本を加えた4か国対抗戦も行われ、世界大会の看板に相応しいイベントとなりました。

ミスミ賞には、“平和”を名前に冠し、カラーリングにもその思いを投影した『NeutrinoーPeace』(飛騨神岡高校(ヒダカミロボ部))、3kgを切る非常に軽量な機体を活かして素早い動きを繰り出していた『Shibatank Jr.』(九州大学ヒューマノイドプロジェクト)、パワフルなパンチと安定した動きで4位まで駆け上がった『Taiwan No.1』(台湾No.1)の3機が選ばれました。

第42回ROBO-ONEは、かつての日常を取り戻し始めたことを確信できる大会になりました。観客席に集まるROBO-ONEのファン。ロボットのパフォーマンスに驚く声やどよめき。飛び交う応援の声。熱い想いを持った参加者が作りあげたロボットに呼応するように、会場の熱も上がっていきました。映像では伝わりにくい、目の前で動くロボットの戦いは、きっと会場に来ていた次世代のものづくりを担う子供たちにも強い印象を残したことでしょう。

ミスミはこれからも、「ROBO-ONE」を通じてものづくりの熱い想いを応援します。

試合風景

試合風景

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