独自施策の効果と緩やかな需要回復により、売上高は過去最高を更新
独自施策の効果と緩やかな需要回復により、売上高は過去最高を更新
2024年度における世界経済は、製造業を中心とする設備投資需要がグローバルで緩やかな回復基調を継続しました。自動車や通信関連の需要が中国、アジアおよび日本を中心に底堅く推移しました。一方、欧州では市況の低迷が続き、アメリカでは先行き不透明感が増し、設備投資意欲の低迷により本格的な需要回復が見られませんでした。
こうした環境において、当社はメーカー事業と流通事業を併せ持つユニークな業態を活かしています。これを支える事業基盤をグローバルで進化させ、顧客の確実短納期ニーズに応えることで世界の製造業を中心とした自動化関連産業に貢献しています。これまで当社が築いてきたIT、生産、物流の強固な事業基盤やグローバル拠点網を活用しながら、新商品・新サービスを含む新事業開発を継続し、顧客の需要を的確に捉えることに努めました。この結果、2024年度の連結売上高は4,019億8千7百万円(前年同期比9.3%増)となり、過去最高を更新しました。
セグメント別に見ると、FA事業は、中国では通信関連需要の攻略や「エコノミーシリーズ」、日本においては「meviy」など、各地域特性に合った独自施策が奏功し、売上高は1,358億3百万円(前年同期比14.9%増)となりました。金型部品事業は、自動車関連需要の緩やかな回復により、中国や日本を中心に顧客ニーズを獲得し、売上高は864億5千1百万円(前年同期比8.2%増)となりました。VONA事業は、アジアや中国が成長をけん引し、売上高は1,797億3千2百万円(前年同期比6.0%増)となりました。
利益面につきましては、持続的成長に向けた施策に関わる支出は継続しましたが、売上数量増・商品ミックス改善および為替効果等により、営業利益は464億8千万円(前年同期比21.2%増)、経常利益は499億1百万円(前年同期比20.9%増)、親会社株主に帰属する当期純利益は365億4千9百万円(前年同期比29.8%増)となりました。
デジタルモデル第4弾の発動と米国企業買収により新たな事業領域の拡大を図る
デジタルモデル第4弾の発動と米国企業買収により新たな事業領域の拡大を図る
世界経済および日本経済は、グローバルサプライチェーンの地域ブロック化が進み、アメリカの関税政策による影響の顕在化など、景気の先行きが一層不透明になっています。今後は厳しい経営環境が続くものと想定する一方で、産業界では様々な社会課題を見据えて自動化の需要はグローバルで持続的に伸びていくと認識しています。
当社では、こうした顧客のニーズに対応すべく、今後もIT、生産、物流の事業基盤を進化させ、「グローバル確実短納期」にさらに磨きをかけてまいります。顧客時間価値の向上に向けて、地域市場、新商品、新サービス等の開発を加速させるとともに、異なる市場毎のニーズに対応できるように、各市場に合致したデジタルモデル化を推進してまいります。
2025年度の主な取り組みについてご紹介します。
引き続き、自動化関連顧客ニーズの多様化に対応すべく「デジタルモデルシフト」を推進し、地域毎成長戦略とのシナジーによって、ユニークな競争優位性を築いていきます。これまでにデジタル施策として、第1弾機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy」、第2弾価格競争力に優れた「エコノミーシリーズ」、第3弾大量調達でも顧客希望数量に短納期で応える「D-JIT」をそれぞれ展開し、順調に事業規模を拡大しています。
これらに続く第4弾として新たにスタートしたのが、間接材トータルコストダウンサービス「floow」です。お客さまが工場で調達する間接材について、高頻度で使用する消耗品は工場常設の自販機で常時提供、中頻度使用品は定期便で配送、低頻度の都度調達品はECサイトや専任窓口にて迅速な見積回答を行います。購入頻度に応じたサプライチェーンを構築することで、間接材費だけでなく作業負荷などのトータルコスト削減に寄与します。先行展開している中国では、すでに420工場に1,700台以上のミスミが提供する自販機が導入されています。日本では50工場110台でのテスト運用を経て2025年度から本格展開を開始しており、今後アジア全体に横展開していきます。こうした施策に取り組むことで、2025年度の売上高は4,000億円、営業利益は435億円、親会社株主に帰属する当期純利益は320億円を見込んでいます。この予想につきましては、アメリカの関税影響とそれに伴う各国設備投資需要の減退を一定の想定に基づき反映しています。
また、当社は2025年4月17日開催の取締役会において、米国にてカスタム機械部品のオンライン調達サービスを提供するFictiv Inc.(以下「Fictiv社」)の買収を決議いたしました。
これまで当社は、特注品とされてきた機械部品を標準化し「規格品」としてカタログ等に掲載することで、インダストリアル・オートメーション(IA)産業の部品調達に変革をもたらし、顧客の時間価値向上に貢献してまいりました。さらに、標準化対応が難しい「図面特注品」についても、機械部品調達のAIプラットフォーム「meviy」を通じて顧客に提供し、クロスセルによる相乗効果を創出しております。
Fictiv社は2013年の設立以降、米国製造業におけるカスタム機械部品のオンライン調達サービスを展開し、カスタム機械部品のオンライン調達サービスプレーヤーとして近年成長を遂げております。Fictiv社の事業は当社の展開するmeviy事業と高い親和性があり、高度な技術力と顧客サービス体制、強力な顧客基盤を有しています。
当社の顧客基盤が主に設備製造領域にあるのに対し、Fictiv社は商品開発領域において高い専門性と実績を有し、当社とは異なる顧客ドメインを築いております。今回の買収を通じて、成長ポテンシャルの大きい「オンライン加工事業」のさらなる展開を図るとともに、新たな顧客領域である商品開発分野への進出により、当社グループ全体の事業領域の拡張が期待されます。あわせて、重点地域と位置付ける米国市場での事業拡大に資するものと考えており、クロスセルの深化やサプライチェーンネットワークの活用を通じて、商品・顧客・地域の各軸におけるシナジー最大化を追求してまいります。
なお、前述の2025年度の業績予想には買収に関する影響額は精査中となるため含まれておりません。
株主還元
株主還元
当社グループは、社員の挑戦を起点として、顧客であるインダストリアル・オートメーション(IA)産業の持続的成長へ貢献し、IA産業の自動化、省力化による社会の持続的発展を支える成長連鎖経営を志向しております。この実現に向けて、地域・事業・新商品・新サービス開発等へ積極的な成長投資を行い、顧客時間価値向上に貢献する事業モデルの進化に取り組んでおります。また、中長期的な企業価値向上の実現に向けて、資本コストを的確に把握し、資本コストを超える資本収益性となるよう、エクイティスプレッドの拡大を目指しております。そのため、中長期的な視点での成長投資と株主の皆さまへの還元は、バランスを取りながら実施してまいります。
自己株式の取得に関する方針
自己株式の取得に関する方針
手元資金、成長投資機会、株式市場の動向など状況に応じて、機動的に実施してまいります。
配当方針
配当方針
これまで、配当性向30%を目安としておりましたが、経営基盤拡充、財務体質の強化、資本効率の向上なども勘案し、配当性向35%を目安に実施するよう変更いたします。

代表取締役会長

代表取締役社長

