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インタビュー

第44回大会 ミスミ賞

HurtMaker(ハートメーカー)

  • 林 睿杰(リン エイケツ)さん
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“教え子に示す、研究と挑戦の背中”

今大会では、台湾からのロボットが2機もベスト4に勝ち進み、海外勢にとって躍進の大会となりました。その中でも、独特なシルエットで注目を集め、印象的な強さで4位入賞を果たしたのが、チームJRH ROBOTICSの『HurtMaker』です。設計・製作・操縦までを一手に担う林さんに、挑戦の背景と機体製作の思想を伺いました。

台湾でも知られる二足歩行ロボット最大の大会「ROBO-ONE」

今回のROBO-ONEでは4位という成績でした。印象に残った対戦相手、そして大会全体の感想について教えてください。

林さん:もっとも記憶に残っているのは、昨年・今年と連覇を果たした『コビス』との対戦です。前半の3分間は互角に渡り合えた手応えがありましたが、最後は私の操作ミスで倒されてしまいました。大会全体としても、選手たちのレベルが一段と上がっており、どの試合も強度の高い攻防が繰り広げられていたと思います。

HurtMaker

  • Concept

    相手が対戦を恐れるほどの一撃を

  • Weight

    3900g

  • Height

    60cm

  • Axis

    サーボモーター25個

ROBO-ONEを知ったきっかけと、参加までの道のりを教えてください。

林さん:台湾でロボットを学んでいたころ、日本で開催される「ROBO-ONE」が二足歩行ロボット最大の大会だと教わり、国内の大会で好成績を収めたことを機に「次は日本に挑戦しに行きたい」と決心しました。一昨年に初参加し、昨年は残念ながら体調不良で参加を断念しました。今年ようやく再挑戦が叶い、参加できたことをとても嬉しく思います。

ROBO-ONEの魅力はどんなところにありますか?

林さん:ROBO-ONEは単に技術の優劣を競う場にとどまらず、世界の産業レベルを押し上げる可能性を秘めた大会だと思っています。ロボット製作では、ギアの配置やモーターの選定などの機械設計について綿密に考え抜くことが欠かせません。競技者が勝利を目指し、試行錯誤を重ねる中で生まれる革新的なアイデアは、いつの日か産業分野に応用される日も来るはずです。そうした試行錯誤のサイクルとそこから生まれるアイデアこそが、ROBO-ONEの一番の魅力です。

初参加の頃から現在まで、設計思想や『HurtMaker』のコンセプトにどんな変化がありましたか?

林さん:第42回大会では予選競技であったデモンストレーションを意識し、人間に近いシルエットを追求したロボットを製作しました。一方、今大会は、予選も格闘競技に一本化されたレギュレーションに合わせて、重心を極限まで低くし、格闘に特化させた構造に舵を切りました。機体名『HurtMaker』は、試合で相手の記憶に残るような強力な一撃を加えたいという思いから名付けました。手の先にある“HM”はその意思の表れとして刻み込んだ、機体名の頭文字です。このコンセプトは初参加の頃から変わっていません。

兄弟で立ち上げたロボット教室の生徒とともに遠征

現在、台湾ではどのような二足歩行ロボットの競技が行われていますか?

林さん:台湾では数多くの二足歩行ロボット競技が開催されています。台北市教育局が主催する政府レベルの大会では、格闘や障害物競争など複数の競技が用意されているほか、市主催のイベントではバスケットシュートやボウリングも行われています。上位入賞者には日本遠征に必要な航空券の補助が出る制度もあり、挑戦できる体制が整えられています。

林さんは今までどんなものづくりをしてこられたのでしょうか。また、なぜロボットを作るようになったのでしょうか。

林さん:私はもともとメカトロニクスを専門とする技能五輪の選手で、過去に金メダルを獲得したことがあります。ロボット製作を始めたきっかけは、兄が二足歩行ロボットを始めたのを見て、自分もやってみたいと感じたことからです。過去のものづくりで培った基礎技術と経験が、ロボット製作を行う上での大きな強みになっています。

現在はどのような立場でロボット製作を行われているのですか?

林さん:兄と一緒にロボット教室を運営しており、教育面にも携わりながら製作を行っています。運営する教室には小学生から高校生までの生徒、合計50名ほどが在籍しています。基礎を固めて台湾の大会に出場し、次に日本の強豪に挑むという成長プロセスを設計しています。競技経験が進学にも良い影響を与え、ロボット活動を通じて希望の学校に進んだ学生もいます。

子どもたちに教える際、一番大事にしていることは何ですか?

林さん:やはり重要なのは、ロボットに対する熱意と姿勢です。私たちは『学ぶ意欲があれば、しっかり教えます』という方針で教室を運営しています。できないことがあっても、できるようになるまでしっかり指導しています。

「どんな試合でも負けない、百戦百勝のロボットを作りたい」

『HurtMaker』の特徴を教えてください。

林さん:まずは色です。私が大好きな金色の部品を3Dプリンターで出力して、各所に用いています。また、脚部もとても気に入っています。モーターを多く搭載したこの脚部で、他のロボットより自在な動作ができるようにしています。

『HurtMaker』が他のロボットと比べて有利なのはどの部分でしょうか?製作する上で参考にしたロボットがあればそれも教えてください。

林さん:相手をすくい上げる形状の手は有利だと思いますし、気に入っている部分です。また、腰の前に防御用の盾を取り付けたことにより、今まで何度も狙われていた弱点を克服しています。もちろん、試合中には限りなく低い姿勢になるので、相手にとって攻撃を当てづらくなることも有利に働いています。
製作する際は、特定の一機を参考にするのではなく、TwitchやYouTubeを活用して大会の映像を注意深く鑑賞し、すごいと感じたロボットたちの特長を取り入れました。特にモーション製作に時間をかけており、9か月ほどかかった製作期間のうち2か月くらいはずっとモーションを製作していました。

ROBO-ONEで勝利するための秘訣を教えてください。また、ロボット製作をしていて楽しかったこと、苦しかったことはなんですか?

林さん:まず、自分のロボットに誰よりも精通していることが大切です。そして、相手のロボットをしっかり分析することも重要です。そうやって努力してきたことが試合で結果につながったときの達成感は何にも代えがたく、その瞬間が一番楽しいですね。反対に、新しく設計したロボットが思い通りに動かず、理想に届かないと感じたときは、落ち込むこともあります。

今回ミスミ賞を受賞されましたが、実際にミスミの製品を利用されたことはありますか?

林さん:ミスミのことは、各種部品の製造・販売を手がけている会社として以前から知っていました。私も実際にロボット競技や技術開発に取り組むなかで、ミスミ品を頻繁に使用しています。製品の精度が非常に高く、ラインナップも豊富で、設計から調達までの使い勝手がとても良いと感じています。
今回の受賞や今後の競技活動を通して、ミスミ製品の魅力や優れた点を、より多くの人に知ってもらえるきっかけを作ることができればうれしいです。現在は予算の制約もありますが、できることなら今後さらに多くのミスミ品を導入したいと思っています。

ロボット製作を通して今後成し遂げたいことはありますか?

林さん:ROBO-ONEでは、どんな試合でも負けない百戦百勝のロボットを作ることが目標です。センサーなどを導入して、ロボットをより知能的にしていきたいです。さらに、二足歩行ロボットの大型化を進め、競技だけでなく、社会でも役立つロボットにしたいです。たとえば、倒壊した建物の中を自由に移動して、人を助けることができるようなロボットです。

将来、どんな人になりたいですか?

林さん:将来は、ロボットに携わる教育者として成長し、より多くの人に二足歩行ロボットの技術や魅力を伝えていくことを目指しています。今後もROBO-ONEに出場して、試合に挑戦することを楽しみにしています!