イベント2022.10.17

SAKURA Tempesta
「FIRST® Robotics Competition 2023」へ向け始動!

SAKURA Tempestaは国際ロボット競技会「FIRST® Robotics Competition(以下FRC)」に参戦する、千葉を拠点とした中高生チームです。チーム発足初年度から5大会連続で各種アワードを受賞し、3度の世界大会出場権を獲得するという目覚ましい活躍を続けています。今回は、2022シーズンの活動報告とともに、2023シーズンの新たなチーム体制や意気込みについてお話を伺いました。

集合写真

コロナ感染症拡大に伴いFRC 2022シーズンは3年ぶりの
実地開催となりました。皆さんにとってどのような大会でしたか?

はい、コロナの影響により、2020シーズンは大会が中止、2021年はオンライン開催でした。2022シーズンは3年ぶりの実地開催ということもあり、今回初めて地区大会に参加をするというメンバーがほとんどでした。2022シーズンは、大会経験者と初めて参加するメンバーの間でノウハウを共有することができた貴重なシーズンだったと感じています。

FRCではまず大会ルールが1月に開示されます。ルールブックは英語のため翻訳からとりかかります。今年はSAKURA Tempestaがリードして、日本の全FRCチームが共同で翻訳を行いました。その後、ハワイ地区大会開催までの期間は、ロボット製作やプログラミング、操縦の練習などを僅か3カ月という短期間で行わなければなりません。これがFRCルールの難しさであり、やりがいでもあります。

ロボットは、ミスミの商品を多く使っていただいているとのことですが、今回どの部分に使用されているのか、また製作に苦労した点などお聞かせいただけますか?

今回製作したロボットは、重量約56kg高さ1.5mに及びます。その中で、約95%ものパーツにミスミ部品を使用しました。また、ロボットが雲梯のような棒を順番に登っていくための「クライム」の機構は強度と精密さを特に意識して設計しました。ラチェット機構を使い、目的の動きを達成するためmeviyでのオリジナル金属板を多用しました。合計48個ものmeviyで加工した部品を組み合わせリンク機構を組み、弱い力で掴める一方、ロボットの全体重がかかっても内側からは開かないという機構を実現しました。
製作途中で、大会規定重量を7kgオーバーしてしまったこともあり、ステンレス製のパーツをアルミ素材に変更したり、フレームの肉抜きを行ったり、モーターの軽量化を図るなど、大会ギリギリまでロボットの調整を行いました。

今回7kg重量オーバーしてしまったことと、SAKURA Tempestaの桜から、今年度のロボットは七桜(なお)と名付けました。

製作途中のロボット

製作途中のロボット

48ものmeviy部品を活用しました

48ものmeviy部品を活用しました

試行錯誤を繰り返し、完成したロボット七桜(なお)

試行錯誤を繰り返し、完成したロボット七桜(なお)

大会直前まで、メンテナンス作業が続き大変でしたね。
地区大会結果についてお聞かせください!

今年の地区大会はハワイで3月30日~4月2日に開催され、久々に実地大会ならではの本番の熱気を味わえました。試合では、まず予選を突破し、決勝トーナメントに進みました。

ハワイでの地区大会の様子

ハワイでの地区大会の様子

決勝トーナメントは固定された3チームで同盟を組んでポイントを競います。私たちは同じ日本からのチーム「SAZANKA Robotics」と地元ハワイチームと同盟を組み試合を行いました。第2戦目で75pt VS 56ptで惜しくも敗れてしまいましたが、ゲームミッションの「クライム」を成功させることができました。「クライム」とは、50kg以上あるロボット自ら、専用バーにぶら下がり、雲梯のように登っていく動作のことで、最難度のミッションです。何度も失敗し操縦の練習をしてきましたが、本番で成功できたときは、チーム内から歓声があがりました。

RAPID REACT

今年のゲーム内容は「RAPID REACT」(提供: ボーイング社)、2つのALLIANCE(同盟)に赤か青のカーゴ(ボール)が割り当てられ、カーゴを回収、HUB(ゴール)に入れて得点を競います。

結果、地区大会の成績は16位となり世界大会出場は果たせませんでしたが、私たちはGracious Professionalism Award を受賞しました。この賞はFIRST®の理念でもある「Gracious Professionalism=他者への尊重と親切心」を実践しているチームに与えられる賞で、該当者がいない場合は授与されないとても貴重な賞です。私たちSAKURA Tempesta が、日本から参加する他チームをとりまとめ、ルールブックの翻訳を協力し進めたことなどを評価いただきました。

FRCのアワードは技術や大会成績に対する評価だけでなく、オフシーズンに行うアウトリーチ活動(社会貢献活動やSTEAM教育の普及活動)なども重視されています。コロナ禍でのアウトリーチ活動は、中高生向けワークショップのオンライン開催や、動画でのロボット紹介、オンラインイベントに登壇させていただくなどの工夫をすることで乗り越えてきました。

記念撮影

大会後、受賞トロフィーをもって記念撮影。5大会連続でアワードを受賞!

そして優れたリーダーに送られるFIRST Dean’s List Finalist Award では、2022シーズンリーダーの立崎乃衣さんが受賞し、Winner候補としてノミネートされました。Dean’s List Winnerの発表は世界大会で行われるため、立崎さんと選抜メンバーで世界大会を視察してきました。

立崎乃衣さん

■個人賞を受賞された立崎乃衣さん
機械設計職の父の影響で自宅にあったミスミのカタログを幼少期から読み、小学校時代からロボット製作を続けてきた、生粋のミスミファンの工学女子です!

アワード受賞、立崎さんの個人賞受賞おめでとうございます!!
世界大会の印象やそこからの学びがありましたら教えてください。

久しぶりの世界大会会場の雰囲気に圧倒されると共に高揚感を感じました。過去に出場した時は、ロボットの調整に追われ、他のチームをじっくり視察する機会はありませんでしたが、今回は強豪チームのピットをたくさん訪問し、各チーム活動内容や、ビルディングシーズンの進め方、ロボットの機構について多くのヒアリングをすることができました。試合観戦では注目しているチームのクライム機構やカーゴの発射機構を主に観察しました。これらはチームにとって大きな収穫であり、新たなインスピレーションを得ることができました。

私たちビルディングシーズン中、毎日遅くまでロボットを製作します。完成までさまざまな試練がありますが、一つ一つみんなで力を合わせて乗り越えます。自分たちの製作体験を世界大会出場チームと重ね合わせることでとても深い感動を覚えました。そして、多くのチームの奮闘を観ることで来年こそまた世界大会に出場したいという想いが一層高まりました!

FRC世界大会 FIRST Championship

ヒューストンで開催されたFRC世界大会 FIRST Championshipを視察

2023シーズン リーダーに就任した後藤さん(高校2年生)、
新シーズンへの意気込みをお聞かせください。

後藤さん:大きく3つあります。まずは、チーム全体の技術力向上のための人材育成です。前回の大会では最善を尽くしロボットを製作しましたが、世界大会には届きませんでした。その悔しさを胸に日々改善点を探しています。世界大会に出場できるロボットを作れるチームになるために、ロボット製作経験をもつメンターの方とメンバーが共に機構について話し合う勉強の機会を増やしています。人との繋がりを大切にし、出会った方々とのご縁を代々引き継ぎながら、チームメンバーと一緒に技術力を高め合い、成長していきたいと思います。

2つ目は、ものづくりの楽しさを伝えるのアウトリーチ活動を積極的に行うことです。一般的に「機械ってよくわからない」というイメージを持つ方が多いかと思います。私たちの開催するイベントでは、簡単なロボットキットを組み立て、他の参加ロボットと対戦し、その結果からよりよいものにロボットを改善していくというような内容を実施しています。イベントを通じて、ものづくりの成功体験を味わってもらい、多くの方に楽しさを伝えていきたいです。

3つ目は、日本のFRCチームを増やし活性化させることで、FRC地区大会の日本開催を実現することです。これはSAKURA Tempestaが以前より目標として掲げていることの一つです。「FRCって何だろう、挑戦してみたい」と多くの方に興味を持ってもらえるよう、今後も活動を続けていきます。

最後に、エンジニアリングの魅力について教えてください。

エンジニアリングの魅力は不便を解消できるところです。

人間にはできない動きや、対応できない大きさ・重さのものに対して、かなえたい動きをどのようにこなすか考え、実際に自分の手を動かして作り、何度も失敗して、理想の動きに近づけていく、そういった試行錯誤を実際に手に触れるものでできるところが私たちにとっての魅力です。かなえたい動きを作ることができた時の感動は最高です。これからも、人を助け、生活を便利にするツールであって欲しいと願っています。

FRC Team SAKURA Tempseta
2017年設立。メンバー38名 メンター16名
FRCに参加するためのロボット製作や、中高生へのSTEAM教育の普及などの活動を行っています。
※SAKURA Tempestaではメンター(活動をサポートして下さる大人の方)を募集中です!
(活動拠点:千葉)

お問い合わせ時「ミスミの記事を読んだ」と一言添えて頂くとスムーズです。