イベント2019.4.3
サレジオ工業高等専門学校「ものづくり教室2018」
二足歩行する恐竜ロボットを作ろう!
2月23日(土)にサレジオ工業高等専門学校(以下、サレジオ高専)が、小中学生を対象に、「2018年度ミスミ学生ものづくり支援」の提供品による「ものづくり教室」を開催しました。主催する機械電子工学科のサポートのなか、参加者約20名が二足歩行の恐竜型ロボットの作成にチャレンジしました。
楽しみながら創造力・空間認知能力を養い、機構設計を学ぶ
「ものづくり教室」は、もともとは体験入学イベントとして、各教員が中学生を対象におこなっていました。
地域貢献の一環として「ロボットづくりを小学生にも楽しんでもらいたい」と対象範囲を広げての開催は、今回が2回目です。指導するのは、助教の山口貢先生。運営をサポートするのは、機械電子工学科の有志の学生たちです。
機械電子工学科の山口貢先生は着任2年目。昨年「ものづくり教室」を担当することになり、その第一弾が「恐竜型ロボット」でした
学生による手作りのキットたちが机に並び、わくわく感が高まります。材料のほとんどが、ミスミからの提供品ということです
「恐竜型ロボット」にしたのは、「子どもたちに興味を持ってもらえるように」と山口先生はいいます。「アクリル板の23個のパーツをはめ込む立体的なロボット製作により、創造力、空間認識力を養います。また、モーター、歯車、ギヤ等を組み合わせて二足歩行させるため、機構設計の基礎を学ぶことができます。スケルトンボディなので、歯車やギヤの仕組みを見て学ぶことができますし、電源、モーター、スイッチ等の配線により、電気回路の基礎も学ぶこともできます。小中学生には機構学は難しいですが、遊びを通して学んでもらおうという試みです」
参加者は20名弱で、小学生と中学生はちょうど半分ずつの割合です。女の子の参加者も3人ほど
手間暇かけた“オリジナルキット”の準備は、学生たちの学びに
驚くのは、この恐竜型ロボット制作キットが、サレジオ高専の完全オリジナルということ。プロトタイプを何度も試行錯誤しながら設計しなおし、完成までに約半年をかけました。「CADの設計からはじまり、材料となるパーツづくりも手間がかかっていて、加工機を使って本体となるアクリル板の切り出しもすべて自分たちで作りました」。
1体分のアクリルのパーツ23個を加工機で切り出すには約1時間。20人分の参加者分のキットを用意するためには合計20時間も
山口先生は原案と基本設計を担当。実際に組み立てて不備が出たポイントは、学生たちに手伝ってもらいながら図面修正を重ねました。
「ものづくり教室」は、参加者の方に楽しみながらロボット制作に興味をもってもらうのが狙いです。でも「サポートする側の学生たちにとっても学びが多い」と山口先生はいいます。
「たとえば1年生にとっては、まだ授業で出てこない技術を学べます。CADの使い方や、加工プログラムを作って、実際に加工して組み立てるなど5年間通して学ぶことが集約されていて、一度に身につけられるんですね。だから参加する学生たちは皆モチベーションが高いです。希望する学生は、全員参加できるようにしています」
小学生の参加者もサポートしてもらいながら、どんどん完成に近づきます
学生がアイデアを持ち寄り、開催ごとに改良を重ねていく
「ものづくり教室」は、4年生の吉田さんの司会進行でスタート。教室の前には大きなスクリーンが用意されています。お手本として学生が同時進行でロボットを作成し、その制作手順をカメラで映しながら説明するためです。
説明マニュアルに沿って説明しながら、同時進行で組み立てていく様子をスクリーンに映し出します
「前々回開催したときに口頭の説明では、なかなか伝わらなかったので、手元をスクリーンで見せるといいんじゃないかと学生からアイデアが出たんです。やってみると実際に非常にスムーズに進みました」と山口先生。
今回は、体験入学での「ものづくり教室」も含めると6回目の開催になります。開催後は毎回反省会を開き、次回への改良点をピックアップ。少しずつ進化させているのです。たとえば、開催時に配布する説明書や参加者の受け入れ体制など。ロボット本体以外の運営面でも、あちこちに学生たちの創意工夫が詰め込まれています。
設計段階から参加している4年生の黒沢さんいわく、アクティブラーニングの要素もこだわりだそう。「足や重心の位置は、あえて簡単に自由に変えられる設計にしています。まっすぐ歩くように自分で工夫して調整する楽しさを体験できるように。ちょっとアドバイスすると小学生でもすぐコツを飲み込んで取り組んでくれます」と教えてくれました。
山口先生も「今回のロボットは彼らがいなければ完成していません」というほど、学生たちのサポートは大きいようです。
教室の後ろでは、「組み立てが上手くいかない」「動線が切れてしまった」などに対応するメンテンナスコーナーが大活躍。万一、失敗したり上手くいかなかったりした場合は、学生たちが修理をお手伝いします
もちろんロボット本体の改良点もあります。使用するアクリル板の厚みはどうしても0.5mmのばらつきが生じます。そのため前回は、アクリル板のはめ込み部分を少しゆるめに設計。ところがゆるすぎる箇所も出たため、一部、接着剤が必要になりました。
そこで今回は接着剤なしで組み立てられるよう、はめ込み部分を少しきつく設計。組立時にやすりで削って調整する方法をとりました。ただし、実際にやってみると削る作業に時間がかかる参加者も……。「ここは次回にむけて設計改良のポイントですね」と山口先生は話してくれました。
外部の方との交流も楽しみのひとつ
1年生から5年生まで異なる年齢層の学生がいっしょに運営方法を相談したり工夫したり、集団で成し遂げる良さ、社会性を学ぶ場にもなっています。さらには学生同士の交流だけでなく、参加する外部の保護者やお子さんと触れ合うことも、よい経験になっていると山口先生は考えています。「社会に出れば当然ですが、同世代以外の人とのコミュニケーションも社会勉強のひとつになっていると思っています」
学生たちが教室を回りながら、難しそうにやっているなと思うと「大丈夫?」と声をかけて、制作のお手伝い
実際に、開催後に感想をきくと「小中学生ともロボットを通して交流できるのが嬉しい」という3年生や、「専門的な用語を子どもにも解かるよう説明するのは難しいけれど、教えるのは楽しい」という1年生の声もありました。
色とりどりの恐竜ロボットが完成しました!
最後に、「今回、小中学生が同時に参加するというのは初めての試みでした。ただ小学生には少し難しかったようです。次回は、その点を改良してやっていきたいですね」と山口先生。次回さらなるパワーアップを遂げた恐竜型ロボットが登場するでしょう。
運営チームの皆さんで記念撮影
サレジオ高専はものづくりを通して、豊かな心を持つ「人」を育てる学校です。
さまざまな成果やイベントが紹介されていますので、ぜひWebサイトをご覧ください!
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