支援団体インタビュー
2023年度
東海大学 学生ロケットプロジェクト
TSRP
【活動内容】
学生に向けて手作りで低コストなロケット開発ができる場を提供し、実践的な宇宙理工学の知識や技術を習得させ、将来の宇宙技術者を育成するチームです。
【インタビューに答えてくれた方】(2024年10月現在)
谷田貝 萌絵さん(H-59号機 プロジェクトマネージャー/工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻 3年)
小倉 丈さん(H-59号機 プロジェクトマネージャー/工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻 2年)
堤 大樹さん(計測制御班 広報担当/工学部精密工学科 4年)
安江 航大さん(計測制御班 広報担当/工学部航空宇宙学科航空宇宙学専攻 2年)
『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して
今回はロケットの大型化と高高度化を目指し、日々活動を続けている東海大学学生ロケットプロジェクトの谷田貝 萌絵さん、小倉 丈さん、堤 大樹さん、安江 航大さんにお話をお伺いしました。
私たちはミスミ学生ものづくり支援で提供された部品を、新たに開発している点火に必要な設備であるGSEと各装置を接続するためのケーブル購入に使用しています。ケーブルには外径や芯数、配線のAWGサイズなど多くの製品がありますがWebサイトの絞り込み条件を用いて一つずつ条件を絞っていくことで製品を短時間で探すことができ、非常に助かっています。
加えて、これまで実験に向かう際には大小様々なコンテナを使用してしまい、物品の詰め込み、運びだしに時間がかかっていました。
そこで、統一された規格のコンテナを注文することで一人一人にかかる負担を軽減し円滑な荷物運びを行うことができました。
また、本開発では初めて 「meviy」 を利用しボタンなどを取り付けるための操作パネルを注文してみましたが、3Dデータをアップロードするだけで簡単に見積もりや出荷日が表示されることに感動しました。
プロジェクトとして履歴が残る点も魅力的で同じものであれば必要なときに図面を書くことなく注文できる点が良いと感じました。

次世代宇宙技術者の育成と挑戦
TSRP(東海大学学生ロケットプロジェクト)では、手作りで低コストなロケット開発の場を学生に提供し、机上の勉強だけでは得られない宇宙理工学の知識や技術を習得させ、将来の宇宙技術者を育成しています。私たちの活動は、燃焼班、構造機構班、計測制御班に分かれ、設計・製造・打上げ・解析の全サイクルを学生自身が担当しています。
私たちのハイブリッドロケット※1は自作のエンジンとバルブシステムを搭載し、ロケットを打上げる際にはGSE※2のボタンを押すとカウントダウンシーケンスが始まりエンジンに点火できることが特徴です。そのため、数少ない打上げでの人為的ミスを最小限に抑えることが可能となっています。
ロケットの発射台のほとんどはミスミのアルミフレームを採用しています。入手性が良く、初心者でも組み立てやすく、拡張性が高いという特徴があります。加えて、火薬を使わず、空気とばね、電気を用いた2段階分離機構※3を搭載しており、2024年3月の打上げ実験では現在のメンバーで技術実証を行うことができました。この打上げ実験では自作のパラシュートにも挑戦し、ロケットの仕様に合わせたパラシュートを作成することができるようになりました。これにより、高高度化へ向けた新たな一歩を踏み出すことができました。
また、今後数年の持続的な運用を見据えた搭載計器※4には「すばる」というシリーズ名をつけ初フライトを達成しました。「すばる」の開発目的は、10年程度運用可能なロケット搭載計器を設計することです。特に毎回のプロジェクトで共通して必要な機能を基幹システムとして開発することで、プロジェクト毎の共通部分の開発コストを最小限に抑え、限られた開発リソースを新しいこと(ミッション)に割くことができます。


共通化したシステムを開発するに至った経緯としては、人的と金銭的な開発リソースの制約があります。人的な制約としては、大学特有の教育と引継ぎの難しさが挙げられます。私たちのチームは学部生が主として活動しており、プログラミングや基板設計の経験がない状態での参加が大多数です。
また、参加から4年後には卒業するという企業などと比較すると短い年月で人員が入れ替わるという特徴を持ちます。これにより、教育に掛けられる時間が実質1年程度であり、経験を積みながら計器を設計できるようになる頃には卒業が近づいているというのが実情です。
私達のロケットは打上げてからパラシュートを開傘し落下するまでおよそ2分という短い時間ですがこの2分を成功させるために約半年という期間をかけています。これは、射場※5でも同様で打上げ日の数日前から現地でのリハーサルやロケットの組み立て、確認をします。
打上げ実験当日は早朝からGSEの敷設や発射台へのロケット挿入を行いますが、ここで不具合が生じると不具合を解消しそのまま実験を続行するのか、別日に実験を移すのか、それとも実験を取りやめるのか大きな決断をすることになります。この決断が遅れてしまうとメンバーの集中力低下や体力を消耗してしまうため広く周りをみながら指示を行うことが大変です。
限られた時間やリソースの制約、決断力が求められる環境下で、私たちは先ほど述べた持続的運用可能な基幹システム開発や専門知識や技術の継承へ注力し、チーム力を高めています。
※1 固体燃料と液体酸化剤を用いるロケット
※2 地上支援装置 / 酸化剤を供給する配管や電装類設備の総称
※3 パラシュートが2つ格納されており、展開前の姿勢制御と予備減速を担う機構
※4 高度算出、通信、位置情報取得を担う電装類
※5 ロケットの打上げ実験を行う場所


チームの力で未来を拓く挑戦と想い
TSRPでは、ロケットを飛ばしたいという強い想いを持つメンバーが溢れています。その各メンバーの想いを大切にし、また今学んでいる技術を将来の宇宙開発に少しでも役立てられるよう、日々活動に取り組んでいます。
プロジェクト活動やものづくりから得た最大の教訓は、一人では何も成し遂げられないということです。
最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」へ
メッセージをいただきましたのでご紹介します。
この度は、東海大学学生ロケットプロジェクトをミスミ学生ものづくり支援の特別支援団体に選んでいただき、ありがとうございました。
ミスミ様からのご支援により、H-59号機の打上成功までもっていくことができました。ものづくりを行っていく上で多くの壁にぶつかることがあると思いますが、お互い目標に向かって頑張っていきましょう!