支援団体インタビュー

2021年度

岡山県立玉野高等学校

海ゴミロケット開発チーム

インタビューイメージ

【活動内容】

隣接する瀬戸内海の海ゴミを回収し、発泡ポリスチレンなどの素材をロケット燃料として再利用できるよう研究開発を行っています。

【インタビューに答えてくれた方】(2022年3月現在)

松本 真綾さん(プロジェクトリーダー/岡山県立玉野高等学校 1年)
雁木 ひなたさん(開発担当/岡山県立玉野高等学校 1年)
板﨑 心花さん(開発担当/岡山県立玉野高等学校 1年)

『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して

今回は、海岸に漂着する発泡ポリスチレンなどの海ゴミを回収し、ロケット燃料として再利用の研究開発をされている岡山県立玉野高等学校「海ゴミロケット開発チーム」のプロジェクトリーダー松本真綾さん、開発担当の雁木ひなたさん、板﨑心花さんにお話を伺いました。

ミスミ学生ものづくり支援では、これまで利用していたロケットランチャーを新調するために、アルミのアングルやビス、ワッシャー、ナット等の部品、電動工具としてインパクトドライバーや卓上ボール盤などを支援していただきました。また、ロケットの推力を得るため最も重要なエンジン、そして点火装置となるペットボトルの内部に充填した酸素ガスを燃料棒へ送るための接続部品や、気密を保つOリング、そして酸素ガスを送りかつ点火剤となるポリウレタンチューブなどを注文しました。

今回、初めてミスミECサイトを利用しましたが、品揃えの良さと使い勝手の良さに驚きました。私たちが必要とする部品や工具など全て揃っているので大変助かりました

インタビューイメージ電動工具や、ワッシャーやナット類を注文
インタビューイメージ燃料棒となるアルミ缶底に、インパクトドライバーで噴出口を開ける作業

海ゴミを再利用し、
資源循環を目指したものづくり

私たちは普通科の高等学校でありながら、年2回つくばで開催されるモデルロケット全国大会に向けて、高度競技用と滞空競技用のモデルロケットを製作しています。また、ロケット製作だけでなく、海洋汚染問題にも着目し、海ゴミなどを固形燃料として再利用する研究開発にも力をいれています。

私たちが廃棄ゴミをロケットの燃料として再利用できないかと考えるようになったのは、海洋汚染問題によりプラスチック製品削減が求められるなか、地元岡山県にあるプラスチックストローメーカーの会社社長の「プラスチックストローって本当に悪者ですか?」という言葉がきっかけでした。私たちはこの言葉に大変衝撃を受け、プラスチックストローが悪なのではなく、不法投棄などによって海洋に流出される海ゴミが大きな問題なのではないかという課題認識を持つようになりました。

学校の近くには瀬戸内海があり、よく見ると多くの海ゴミが浮遊したり、海岸に漂着したりしています。先生からの呼びかけもあって、まず、それら海ゴミの再利用ができないかと考え、ペットボトルを使って水ロケットを作り、JAXAが主催する世界大会のオンライン国内予選会に出場しました。

残念ながら世界大会への出場はかないませんでしたが、そこで私たちは、ロケットに対して大きな興味を持ちました。その後、火薬を用いたモデルロケットの研究を行う中で、廃棄プラスチックストローや漂流する海ゴミを用いてロケットの固体燃料にできないか、改めて研究活動を始めました。

インタビューイメージロケットに興味を持つきっかけとなった、
水ロケットの製作風景

それからは地元ストローメーカー会社と連携し、ポリプロピレン製の廃棄プラスチックストローを固体燃料としたロケットの打上げを行ってきました。スクリューキャップ式のアルミ缶に充填する方法を採用した結果、到達高度5mの打ち上げに成功しています。

特に苦労した点は、推力を高め、到達高度を高くするために、噴出口の径を小さくして燃料棒内部の燃焼ガスによる内圧を上げようとすると、燃料棒が破裂してしまうことでした。改善を重ね、自分たちで研究開発した廃棄燃料でロケットを打ち上げた時のワクワク感は今でも忘れられません。

インタビューイメージ廃棄燃料を使用したロケットの打ち上げ

現在新たなチャレンジとして、海ゴミ回収のボランティア活動などを行いながら、漂流ゴミの主である発泡ポリスチレンの形状を改良し、ロケットの固体燃料として、どのようにすれば安全かつ効率的に利用できるようになるかの研究をすすめています。

今後は発泡ポリスチレンを固体燃料に用いたロケットの打ち上げに挑戦し、廃棄ストローを燃料とした約5mの打ち上げ記録を超えたいと考えています。

インタビューイメージロケット燃料に再利用するため、海ゴミを回収

インタビューイメージ海ゴミとして回収した発泡ポリスチレン
インタビューイメージ発泡ポリスチレンを固体燃料にするために
拍子木状にカット

ロケット製作や燃料開発の他にも、地域の幼稚園や小学校、公民館、玉野高校を会場とし、ゴムボールで飛ばすロケットや紙コップと紙皿などで作る着陸船などのものづくり教室を開催しています。年間で40回ほど実施し、延べ400名を超える地域の子どもたちに、海ゴミ問題やものづくりの楽しさを広く伝える活動をしています。

また、高校生が発表する学会や研究発表会にも積極的に参加し、研究開発などで得られた成果を専門家に向けて発表し、アドバイスをいただいています。

インタビューイメージ中高生SDGs環境フォーラム in 岡山2022での
ハイブリッドロケット研究成果の発表

持続可能な社会実現にむけて、
ワクワクを大切に次なる挑戦へ

私たちは持続可能な社会実現のため「プラスチックって悪者なの?」をテーマに、資源を循環させる社会をどのように作り上げれば良いのかを考えていきたいと思っています。ものづくりやボランティア活動を通じて、SDGs 4つ目の目標「質の高い教育をみんなに」の中の、「4-7:持続可能な開発を促進するために必要な知識及び技能を習得できるようにする」と、9つ目の目標「産業と技術革新の基盤をつくろう」の中の「9-4:技術・産業プロセスの導入拡大を通じたインフラ改良や産業改善により、持続可能性を向上させる」、そして、12番目の目標となる「つくる責任つかう責任」の中の「12-4:化学物質や廃棄物の大気、水、土壌への放出を大幅に削減する」の達成へ貢献していきたいです。廃棄物や海ゴミのロケット燃料への再利用研究は、私たちにとってとても貴重な体験となっています。

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」へ
メッセージをいただきましたのでご紹介します。

私たち「海ゴミロケット開発チーム」は」ロケット製作や打ち上げの経験を通じて大きなワクワク感を得てきました。そのワクワク感が次の活動や研究への大きな励みになることを実感しています。まだまだ知識も技術も未熟な私たちですが、発泡ポリスチレンを固体燃料としたハイブリッドロケットの打ち上げを成功させたいですね。未来の地球のため、SDGsの達成に向けて、失敗をもワクワク感で乗り越えて研究を続けていきたいです。みなさんも身近な社会問題解決のため、ものづくりの技術を活用していただけたらと考えています。

インタビューイメージ

インタビューに答えてくれた(写真左から)
板崎さん、雁木さん、松本さん