支援団体インタビュー

2021年度

九州大学 宇宙開発体験サークル

PLANET-Q

インタビューイメージ

【活動内容】

九州大学 宇宙開発体験サークル「PLANET-Q」は、ハイブリッドロケット※1の製作とロケット打ち上げ活動をはじめ、CanSat※2やモデルロケット※3、スペースバルーン※4などの製作活動をしています。

※1固体燃料と液体酸化剤を組み合わせて飛ばすロケット
※2小型衛星で用いられる技術を使用して製作される、缶サイズの小型模擬人工衛星
※3固体の火薬燃料を使用したロケットで小さいものから大きいものまで様々な形のものがあります
※4ヘリウムガスによる浮力のみで成層圏 高度30,000mに到達できる気球

■PLANET-Q公式HP
https://planet-q.jimdofree.com/

【インタビューに答えてくれた方】(2022年5月現在)

池田 亘さん(構造班設計担当/工学部機械航空工学科 3年)

『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して

今回は、「放課後は宇宙開発を。」をスローガンに、日々ハイブリッドロケットの製作と打ち上げ活動をしている、九州大学「PLANET-Q」の池田さん(構造班設計担当)にお話を伺いました。

ミスミ学生ものづくり支援では、機体表面を研磨するために使用するオービタルサンダーという作業工具、エンジンの燃焼試験における環境測定のための温度・湿度計、燃焼試験時に高圧ガスの温度上昇を防ぐためのテントを支援していただきました。

GFRP※5製の機体はそのままではデコボコしていますが、サンダーを使用することによって表面を滑らかに整えることができ、ロケットの空力特性※6が向上することが期待できます。燃焼試験では、温度・湿度計で環境を測定することで、これまでよりも正確にエンジンの性能を評価することが可能になりました。

※5ガラス繊維強化プラスチック(Glass Fiber Reinforced Plasticsの略称)。プラスチックをガラス繊維で強化したもの。プラスチックだけより強度が高い。
※6機体などが、空気中で動く物体に対して気流が作用する力

インタビューイメージオービタルサンダーで機体表面を研磨

日頃よりミスミでは旋盤用のバイトやドリルなどの工具や機体締結用のネジなどを購入していますが、商品ラインナップが多く、細かい条件の違いにも柔軟に対応できるため、設計や加工の自由度が高くなっています。

インタビューイメージ燃焼試験でエンジンの性能を評価

自作のロケット機体やエンジンを日々改良、
打ち上げ実験に挑む

PLANET-Qは、九州大学公認の宇宙開発体験サークルで、2004年に設立され今年で18年目となる歴史あるサークルです。現在は約60名が所属しています。「放課後は宇宙開発を。」をテーマに宇宙関係のあらゆることに関して活動しています。

能代宇宙イベントや種子島ロケットコンテスト、伊豆大島共同打上実験に向けてのロケット開発、スペースバルーンやCanSatの製作のほか、ゼミや対外交流イベントなども行っています。

インタビューイメージPLANET-Q製作のハイブリッドロケット
「Felix-ad astra」

2014年からは過去に製作を行っていたハイブリッドロケットの製作を再開しました。『高度10kmへの到達』を目的として、構造班、燃焼班、電装班の3つの班に分かれて製作活動し、それぞれの班が協力し合って1つの機体を作りあげます。私たちの機体の製作特長としては、機体はGFRP製で、このGFRPは自分たちで手作りしたものを使っています。エンジンやGSE※7も自作しており、ロケットを安全にかつ効率よく運用できるように日々改良を重ねています。

また、ロケットには気圧計、加速度計、電流電圧計測計、GPS、LoRa通信モジュール(無線機)、ピトー管(速度計)などの各種計測機器を搭載しており、打ち上げ時の詳細な環境データの取得も可能としています。

※7地上支援装置(Ground Support Equipmentの略称)。エンジンの点火に使う高圧ガスの制御をする装置。

インタビューイメージ分離機構の組み立ての様子

インタビューイメージインタビューのお答えいただいた
池田 亘さん

ハイブリッドロケット製作では、2021年度3月伊豆大島共同打上実験に参加しました。
「内保持式分離機構、および2段階減速の実証」をメインミッションとし、将来的な高高度打ち上げのための技術実証として、パラシュート2個を搭載しました。パラシュートの開くタイミングを2段階にずらすことで風に流されにくく、打ち上げたロケットが落ちる場所の特定を容易にするためです。またノーズ先端にはピトー管を搭載しました。

残念ながら、今回はパラシュートが放出されず、減速の実証ができなかったほか、電装系のトラブルによりピトー管によるデータ取得もできませんでした。今回の実験結果を受け、部内で原因を検討した結果、電装部品の取り付け部に問題があったので、強度を上げたり動作試験を細かく行ったりして、確実にデータ回収ができるように工夫をしています。また、パラシュートが分離機構に詰まってしまったことが、パラシュートが放出されなかった原因の一つであることが分かったので、次回製作の機体ではパラシュートの放出機構にもパラシュートを押し出す工夫をして開きやすいように改良を進めていきたいと思います。

インタビューイメージ豆大島共同打上げ実験の様子

その他の製作活動では、2021年3月にオンラインで開催された種子島ロケットコンテストにモデルロケット1チーム、CanSat2チームが参加し、各部門において好成績を収めることができました。

【Model Rocket部門】
滞空・定点回収部門 1位
【CanSat部門】
遠隔制御カムバック部門 1位
自律制御カムバック部門 6位

また、2021年度5月に発足したスペースバルーンプロジェクトでは、これまでに高知県、福岡県、愛媛県の3箇所で打ち上げを行い、その全てで打ち上げと回収に成功しています。 福岡県の打ち上げ実験では、多くの企業・大学の方々にサポートをしてもらいながら、福岡県で初、そして世界初となる洋上フロートからのスペースバルーンの放球に成功し、大学内のユニークなアイデアや研究プロジェクトに対して表彰される「九州大学Challenge & Creation」においては2021年度最優秀賞を受賞することができました。

インタビューイメージ洋上フロートからのスペースバルーン放球(写真左)
スペースバルーンから撮影した成層圏(写真右)
インタビューイメージChallenge & Creation2021年度最優秀賞受賞
九州大学総長(左)、
スペースバルーンプロジェクト
プロジェクトマネージャー 須藤路真さん(右)

ロケットだけでは成し得ない、
チームで取り組む宇宙開発

宇宙開発はロケット開発だけでは進みません。そのため、私たちはロケットのみならず宇宙開発に関連するCanSatやスペースバルーンロケットの開発や製作も行っています。また製作活動は一人では決して実行することもできません。私たちはロケット開発活動をする中で、仲間の大切さを学ぶことができました。現在、世界中で宇宙開発がかつてないほどのスピードで発展しています。大学の授業やネットで調べるだけでは体験できないことが多いため、実際に自分たちの頭で考え、手を動かしながら試行錯誤することをとても大切にしています。
今私たちが学んでいる宇宙開発に関する技術を活かして「世界を1歩リードするロケット」を日本から生み出したいと考えています。

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」へ
メッセージをいただきましたのでご紹介します。

私たちのものづくり活動では、プロジェクトを進めるにあたりさまざまな壁にぶつかることがあると思います。「ミスミ学生ものづくり支援」は、製作面や支援金不足による「壁」を乗り越える大きな手助けとなりました。みなさんも活動される中で、大きな壁にぶつかることもあると思いますが、諦めずにプロジェクトの成功を目指して頑張ってください!

インタビューイメージ

インタビューイメージ

インタビューイメージ

製作活動風景