支援団体インタビュー

2010年度

横浜国立大学

フォーミュラプロジェクト

【インタビューに答えてくれた方々】

鈴木 大貴さん(工学部生産工学科3年、チームリーダー)
大光明 佑歩さん(工学生産工学科3年、パワートレイン担当)

横浜国立大学フォーミュラプロジェクトは、学生フォーミュラ大会に向けてフォーミュラカーを製作している団体です。大会では車の走行性能だけでなく、車両コンセプト・設計・コスト審査など、ものづくりの総合力が試されます。2011年9月の大会で総合2位の成績を収めた報告をもらい、インタビューに伺いました。
リーダーの代のメンバーが3人しかいなかったり、予算が少なかったりといろいろな苦労があったようです。それを乗り越えたポイントは何だったのでしょうか?

横浜国立大学 フォーミュラプロジェクト

チーム紹介・マシンの特徴

開発の様子

ミスミ:本日はよろしくお願いいたします。簡単にチームの紹介をお願いします。
鈴木さん:横浜国立大のフォーミュラプロジェクトYNFPは、毎年9月に開催される学生フォーミュラ大会に向けて、自分たちの手で一人乗りのフォーミュラカーを造っています。前回大会に向けては25人で活動していました。多くの大学が院生も参加していたりするのですが、学部生1~3年だけでチームを運営していくことが特徴かなと思います。そして、総合優勝を目指しています。 基本的には工学部のメンバーが多いんですが、経済、経営等文系のメンバーもいて、自分達でどうしても加工できない部品の提供を企業にお願いしに行ったりすることもあります。

ミスミ:マシンの特徴を教えてください。
鈴木さん:大会のコースは特徴的でパイロンで仕切られていて、すごく狭い。そのパイロンに1回当たるごとに減点されてしまいます。ということで、自分達はかなり学生フォーミュラのコースに特化したコンパクトな車両を造ろうと考えました。

開発の様子

ミスミ:今年はどれくらいコンパクトになりましたか?
鈴木さん:ホイールベースは去年より70mm小さくなり、トレッドは前と後ろで小さくなった幅が違うのですが、大きい方で50mm小さくしました。大会の規定でホイールベースは1525mmより小さくしてはいけないというルールがあるので、自分達はそのギリギリ1530mmに設計しました。多くのチームが、1600~1630mmなので、自分達はかなり小さめです。

ミスミ:どのように、チームの役割分担をしていましたか?
鈴木さん:基本的にはパワートレイン、シャシー、電装、カウル、運営に分かれて活動していました。
大光明さんはそのパワートレイン班のリーダーです。メンバー7人をまとめていました。もう一人の3年生がシャシー班のリーダーをやっていて、自分はパワートレインに所属し、運営班にも入っていました。

前回大会への取り組み

前回大会への取り組み

ミスミ:前回大会で、なかなか解決できない課題等ありましたか?
鈴木さん:作るだけだったらいいんですけが、走らせるとトラブルが出るということが、かなりありました。シャシーの例ですと、ホイールベースとトレッドを短くすることでアームの長さが少し短くなってしまいました。大会でインリフト(タイヤが浮いてしまって、動力がうまく伝達できないこと)が発生してしまったのは、それが原因の一つかなと思っています。
大光明さん:今年あまり天候に恵まれずに、なかなか晴れた日に走る機会がありませんでした。大会が3回目ぐらいでした。

ミスミ:少しの改良がマシン全体に影響を与えて、それを調整していくのが大変そうですね。運営については、どうでしたか?
鈴木さん:今年は本当にお金がなかったのと、自分達の代のメンバーが3人しかいなかったので、新しいものの採用はせずに、昨年度の悪いところをどんどん潰して、いい成績を取ろうと考えました。自分達で企業に消耗品等の提供をお願いしに行くことにも力を入れていました。それで、なんとか大会を迎えることができました。

ミスミ:カウルはマシンの外側の部分ですよね?今年の製作はどうでしたか?
鈴木さん:今年はかなり問題になったところです。毎年うちのチームはカウルの塗装にかなり力を入れますが、時間もかかる、人も手もかかるので、どうしても後手後手になってしまいます。今年も取り掛かりが3週間ほど遅れて、大会ギリギリでした。軽量なマシンを目指していたんですが、カウルのところで手を抜いてしまいました。カウル単体で見ると重さの目標の2倍くらいになってしまいました。管理がうまくできなかったところです。

前回大会への取り組み

ミスミ:どのように設計は進めていますか?
大光明さん:一番最初に、昨年度の分析をやります。そこから、今年度の目標を立てて、その目標に向かって、どうアプローチするかを考えていきます。分析は1年生には難しいのでリーダーの代のメンバーが目標やアプローチを決めてから1年生に設計を分担します。1年生も初めての設計だとやり方がわからなかったりするので、引退した先輩にお願いして設計の仕方を教わったりしています。

ミスミ:学生フォーミュラの大会期間中に、ハプニング等ありましたか?
鈴木さん:かなりありました(笑)。車検では、分厚い英語で書かれたレギュレーションがあって、それに合わせてマシンが作られているかどうか確認されます。自分達としては、項目を満たしているつもりだったんですが、「やっぱりここダメだよね」とか、「レギュレーションに書かれていなくても、安全面を考えるとここはおかしいよね」という注意も受けました。その場で直せるものばっかりだったので、なんとか合格できました。
あとは、今年晴れの日に走ったことが少なくって、ラジエータ、エンジンの温度を下げるための冷却の性能がちゃんと出せていないまま、大会まで持ち越してしまいました。マシンにカウルを外から被せるんですけど、被せると風が入らなくなってしまって、エンジンが壊れてしまう可能性があるくらいオーバーヒートしてしまいました。本当は大会前に不安要素は潰していくのがいいんですけど、できなくて、大会のエンデュランス走行では、冷や冷やしながらマシンを見ていましたね。

前回大会への取り組み

ミスミ:結果的には、ギリギリ大丈夫だったんですか?
大光明さん:はい。マシンが帰ってきた時に、ちょうど沸騰していましたが…。
鈴木さん:エンデュランスは配点が大きいのですが、不具合が出るチームも多いです。上位のチームでもリタイヤする可能性がある。いつ自分達もリタイヤしてもおかしくなかった状況でした。毎年冷や冷やします。

ミスミ:総合2位に加えて、耐久性、加速度性も2位でしたね?想定通りでしたか?
大光明さん:加速性能の方は前から、上位にはいたんですが…。
鈴木さん:耐久は自分達としては勝てなかったと思っています。去年から今年にかけて、どの大学もレベルアップしてきていました。ドライバーが20分間一度もパイロンに当たらず、かついいタイムで走ったことが2位という結果につながったと思っています。コンパクトに設計したことが狙い通りだったのかなと思います。

前回大会への取り組み

ミスミ:9月上旬の大会だと、まだまだ暑い時期ですね。
鈴木さん:そうですね。大会のスケジュールがかなりハードです。朝も早くて6時くらいに出ます。静的審査の前日は寝ないで、朝まで準備をやっていて、そのまま会場に行くみたいな感じでした。これが4日、5日続くので、体力的には大変でした。

ミスミ:終わったらぐったりですね。終わった時、それと2位の喜びはどちらが大きかったですか?
鈴木さん・大光明さん:ぐったりの方が(笑)
鈴木さん:1年間のプロジェクトだったので、ほっとしたりもしました。3人でやっていくのも、お金も大変で、大会までに全部終えることができるかなと思っていました。成績がよかったことは、それはそれでうれしかったんですが、無事大会を迎えることができて、競技もリタイヤなく終われたので、よかったなっていうのが一番大きかったです。

今後の目標

今後の目標

ミスミ:鈴木さんと大光明さんは、引退ということになりますか?
鈴木さん:はい。アドバイザーの立場で、後輩たちへアドバイスをしていくことになります。
大光明さん:方針に対しては関わりません。1年間やった経験があるので、どうしたらもっとよくなるよとか、日程の面となどはアドバイスします。
鈴木さん:毎年そうなんですが、自分達が口出しをすると決まるものも決まらなかったりするので(笑)先輩から意見を言われるとどうしようって迷います。自分達もそうでした。 まあ、引退したから、徹夜することはなくなるかな(笑)

ミスミ:本日は、長い時間ありがとうございました。

インタビューを終えて

人やお金が少なくても、マシンのコンセプトやメンバーの努力が、学生フォーミュラ大会の総合成績2位という結果に結びついたように感じました。大会期間の苦労などは、うんうんとうなずきながら読んでしまった学生の皆様もいたのではないでしょうか?本当にものづくりの総合力が求められる大会です。活動場所では、次の代のメンバーが前回大会のマシンの解析等を始めていました。目指すは優勝とのお話も伺い、非常に頼もしく感じるとともに、先輩たちのアドバイスももらいながら、1年間のプロジェクトを無事に乗り切っていただきたいと思いました。がんばってください!

横浜国立大学フォーミュラプロジェクト ホームページ
http://ynfp.jp/