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第39回大会 ミスミ賞

ソルビア 大阪工業技術専門学校

  • 橋本幹央(はしもと みきひろ)さん
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「3Dモデリングを駆使した外装とフレームで出場してみたい」

得意の3Dモデリングを活かして前大会でも注目を集めるロボットを制作していた橋本さん。今大会ではコロナ過によって学校での活動が制限されてしまった中、最大限ご自身の能力を発揮した『ソルビア』でミスミ賞を見事受賞しました。

学校での制作ができずに、自宅で3Dプリント

ミスミ賞の受賞おめでとうございます。

橋本さん:ありがとうございます。

先輩に続いての受賞ですね。ROBO-ONEへの参加はいつごろからですか?

橋本さん:今2年生で、1年生の終わりから参加しています。前回の「ROBO-ONE Light」にドラゴン型のロボットで出場していました。

ソルビア

  • Concept

    3Dキャドを駆使して作った
    ロボット

  • Weight

    1940g

  • Height

    38.2cm

  • Axis

    サーボモーター20個

「ソルビア」は市販ロボットをベースにしたロボットですか?

橋本さん:はい。「ソルビア」は部室にあったKHR-3HV*1をベースにしています。前回のロボットも、ほとんど原型が残っていませんが、「PLEN」*2という市販ロボットをベースにしています。どちらも市販ロボットの改造機体になります。

最初から市販ロボットをカスタマイズして出場する予定だったのでしょうか?

橋本さん:今回のROBO-ONEは、学校の仲間たちと一緒に卒業制作で設計していた自作機で出場する予定でした。しかし、緊急事態宣言が続いていたため学校での部活動ができず、市販ロボットで出場することになりました。

橋本幹央さん

制作期間はどれくらいでしたか?

橋本さん:大会1週間前から3Dデータを作り始めて、プリントしました。9月の中旬くらいに緊急事態宣言が解除されることを想定していたんですが、延長になったために3Dプリンタを学校から自宅に送っていただいて、自宅で制作するという流れになりました。

驚きの短期間ですね。データを作るのに何日、実際のプリントにどれくらいかかったのかを教えていただけますか?

橋本さん:3Dモデル自体を作るのには3日ほどです。残りの4日でプリントしたのですが、ぎりぎりまで行っていました。足と胴体の下のほうは、モデリングまでは終わっていたのですがプリントが間に合わず、ベースのロボットそのままの状態で出場しました。

3DCADは、学校で使い方を習得されたのでしょうか。

橋本さん:学校では機械設計のCADとして習うのですが、私は独自に滑らかな面でモデリングする、3次元曲面を勉強して作っています。YouTubeに参考にできる動画がありまして、そちらを参考にして作り始めました。

光造形で作ったこだわりの外装

外装が大会ぎりぎりまでできていない中、モーション作りはどうされたのでしょうか?

橋本さん:基本のモーションデータ自体は先輩から引き継いでいたので、そこから外装をつけても動かせる範囲を探りながら作りました。今回はデザイン優先で制作していたので、モーションは徹夜で作りました。

いちばん苦労されたのはどの動きでしたか?

橋本さん:歩行モーションは機体の重量バランスが変わってしまうので、大変で時間がかかりましたね。足の角度の調整をして、サーボモーターの最高速度調整なども行って、何とか歩くようになりました。また、肩の外装は「起き上がり」のモーションを行う際に干渉してしまい、試合当日に割れてしまって大変でした。

苦労をしてでも付けたかったこの外装には、元になったあこがれのロボットがいるんでしょうか?

橋本さん:過去にも3Dプリンタで胸像を製作したことがあるのですが、『機動警察パトレイバー』という作品に出てくる「グリフォン」というロボットです。肩のあたりとか黒っぽい色は影響が強いかもしれません。

シルエット以外でのこだわりを紹介していただけますか。

橋本さん:少し光量が足りずに暗いのですがLEDを使った電飾がこだわりです。透明なフィラメントでプリントした部品を使って、目と肩と胸を光らせています。配線や基板の製作には先輩が前大会のミスミ賞の時に部品提供でいただいたはんだごてやはんだ吸い取り機が活躍してくれました。

透明な3Dプリンタの部品は珍しいですね

橋本さん:一般的なFDM方式*3ではなく、光造形*4の3Dプリンタで出力しています。表面がきれいにプリントできるところや、繊細な凹凸を再現できるのが外装にぴったりでした。スピードが速いのもありがたかったです。

自律バトルも同時にこなせるロボットを目指す

今後の活動はどういった方向に向かわれるんですか?

橋本さん:ROBO-ONEに卒業制作の4kg級の新機体を使って出場したいと考えています。『ソルビア』は1人で作ったのでデザイン重視でしたが、新機体は一緒に作るチームの皆と打ち合わせして進めていきます。

今後のROBO-ONEへの参加、新機体にかける思いを教えてください。

橋本さん:今後は「ROBO-ONE auto」にも出場したいと考えていまして、「ROBO-ONE」と両立して高い順位を獲ることができる機体を制作しようと頑張っています。実は今回の『ソルビア』も「ROBO-ONE auto」とダブルエントリーしていて、センサーは搭載していたのです。目標を見つけるプログラムまでは作っていたのですが、間に合わずに棄権してしまったので、次こそは出場したいです。新機体については、1人で作っているわけではないので、チームコンセプトに合わせ制作したいです。

橋本さんは今2年生ということですが、卒業後にロボットやものづくりで目指すものはありますか?

橋本さん:僕は3Dモデリングが得意で、趣味でフィギュアや外装系のものづくりをしていました。昔はオリジナルキャラクターのイラストを描いていたりもしたので、今後はそれらを活かして、3Dモデリングで作った外装を使い、できればフレームも3Dモデリングで制作したものを組み込んでROBO-ONEに出場してみたいです。

  • *1 近藤科学製の二足歩行ロボットキット。全高約40cm、重さ約1500g、サーボモーター17軸。
  • *2 プレンプロジェクト製二足歩行ロボットキット(生産終了)。全高約20cm、重さ約450g、サーボモーター18軸。
  • *3 3Dプリンタの造形方式の1つ。溶けた樹脂などの素材を1層ずつ積み重ねて造形していく。熱溶解積層方式(Fused Deposition Modeling)。
  • *4 3Dプリンタの造形方式の1つ。光硬化樹脂に紫外線を当て、硬化させて造形する。SLA(stereolithography apparatus)とも呼ばれる。

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