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第38回大会 ミスミ賞

シルバーキャット 大阪工業技術専門学校ロボット研究部

  • 松林 幸希(まつばやし こうき)さん
  • 佐々木 北斗(ささき ほくと)さん
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変化しながら世代をまたいで受け継がれた機体

特徴的な“猫耳”ヘッドが目立つ『シルバーキャット』。先輩が作った機体をベースに大会ごとの改造を施されて様々な大会に出場する、見た目の可愛さからは想像できないほどタフなロボット。今大会でも失敗が命取りとなるリモート大会のために、オペレーターの松林さんが確実性を上げる改造を施しました。

ミスミ賞を狙って作り始めたロボット

ミスミ賞の受賞おめでとうございます。

松林さん、佐々木さん:ありがとうございます。

ロボット研究部は、
どんな活動をしていらっしゃるんでしょうか。

佐々木さん:「ヒト型レスキューロボットコンテスト」や「全国専門学校ロボット競技会」、二足歩行ロボット以外では「ロボット相撲」などにも参加しています。

シルバーキャット

  • Concept

    リモートに最適化した汎用機

  • Weight

    2950g

  • Height

    540mm

  • Axis

    サーボモーター26個

ロボット研究部自体は結構長い歴史をお持ちなんですね。

佐々木さん:二世代前の顧問がスタートさせたことはわかっているのですが、何年続いているかはわからないくらい長いです。

ROBO-ONEはいつごろから参加されているのでしょうか。

佐々木さん:東京まで遠征するのは予算の関係もあって難しく、神戸の大会(30回大会・2017年2月)が初参加でした。安価な市販キットからスタートした二足歩行ロボットの活動ですが、徐々に強力なサーボモーターも増やせるようになり、私の手元にあったサーボモーターや部品を加えてROBO-ONEに参加できるロボットを作ることができました。それが『シルバーキャット』です。

『シルバーキャット』の制作コンセプトは何ですか?

佐々木さん:もともと作った時のコンセプトは「ミスミ賞を狙うロボット」でした(笑)。予算が少ない中で、外装をしっかり作っていったのはそのためです。今のコンセプトは出場した松林くんにお願いします。

松林さん:今回はリモート大会なので、それに適した「挟むハンド」を付けました。コンセプトは「リモート大会に最適化した汎用機」でしょうか。出場する大会によっていろいろ改造される機体です。例えば昨年参加したIRC*1では全方向移動ができるように下半身の自由度をかなり増やしていました。

佐々木さん:当校は2年制なのですが、最初に『シルバーキャット』を作った世代は2年生だったため、制作してすぐ卒業してしまったんです。そのあと1年ほどは私がIRCに参加するために使ったりしていましたが、また学生の手元に戻した形です。

松林さんは『シルバーキャット』がある程度出来上がっている状態で引き継いだ形になるんですね。

松林さん:そうですね。あとはリモート用に手や足を改造したりとか。重量制限に引っかからないように軽量化して、余裕ができたところで外装を付けました。

佐々木さん:足部分は『キング・プニ』*2を参考にして制作されています。私たちも二足歩行ロボットを始めたばかりでノウハウが少なかったので、まず強いロボットをお手本にしようと考えました。

佐々木 北斗さん、松林 幸希さん

リモート大会を見据えて、ミスを減らす設計に

今回の『シルバーキャット』で、松林さんが設計・制作したのはどの部分ですか?

松林さん:手と足です。別大会に出る際には胴体も設計していたのですが、重心規定に合わないため、市販品に交換しました。一番の特徴はハンド部分ですね。リモート大会規定ではダミーロボットを持ち上げて倒さなければならないので、アバウトに取ってもミスしないよう意識して作りました。ダミーロボットの腕をつかんで持ち上げる際に、ダミーロボットが前に倒れ込まないよう支えられる意図で、下側が長くなるハンドを設計しています。

ロボットの設計は専門学校に入学する前からされていたんですか?

松林さん:高校で高校ロボコンに出場していました。専門学校に入って初めてCNC*3を使ったんです。それまでは設計図も書かないで部品をバンドソーやボール盤の手加工で作ったりしていましたが、二足歩行ロボットを作るには、やはりCNCが必要でした。CADを利用して設計データを作るのも専門学校に入ってからです。

『シルバーキャット』ではなく、松林さんオリジナルのロボットを作ろうとは考えませんでしたか?

佐々木さん:実は今回のROBO-ONE、松林くんはこの機体で出る予定じゃなかったんです。

松林さん:リアルバトルを想定して、卒業制作として9月頃から別の機体を開発していました。11月にリモート大会になることになって、急遽出場できる機体を探した結果、『シルバーキャット』を使うことになったんです。しかし卒業制作のほうから手を離せない状態になってしまったんで、『シルバーキャット』の改造を始めたのが2月、試験が終わって春休みに入ってからと、スタートがかなり遅れてしまいました。

準備にかけられた時間が1ヶ月なかったんですね。

佐々木さん:でも、ロボット研究部自体が年間10大会くらいに出場しているので、結局どの大会もそのペースなんですよ。だいたい直前になって次の大会の準備に取り掛かるんです。先ほどのような状況の中でも、松林君は年末に他の大会に出て、そちらではデザイン賞をいただいてます。

ロボットの“制作環境”を支えるミスミ

ミスミ製品が使用されている部分はありますか?

松林さん:『シルバーキャット』では肩のスラストベアリングがそうですね。

佐々木さん:3年前から毎年「ミスミ学生ものづくり支援」に選出していただきお世話になっています。大会のロボットにもミスミさんの部品は使っていますが、部品よりも環境整備に使わせていただいている割合が大きいですね。ロボットを作るための支えになっている部分をミスミさんから購入して、はんだごてやCNCの防塵カバーの材料といった機材、部材を揃えています。

サポートとして利用されているイメージでしょうか。

佐々木さん:CNCのカバーはミスミさんのアルミフレームを使って松林君が設計したんですが、おかげで制作環境はとても良くなりました。1年前はカバーがついていなくて、音も粉塵もすごかったので。

松林さんはこの春に卒業されるそうですが、今後はどんなロボットを作られたいですか?

松林さん:今「ROBO-ONE Light」規格のロボットを作っているんですが、それでいろんな競技会に参加できたらなと思っています。面白い機構もそうですが、ロボット感がある、メカメカしくてカッコいいロボットを作りたいですね。モチベーションもアップしますし。また、いろいろなことができるロボットにも挑戦したいです。自律競技からバトルまでできるような、そういった競技に参加できるロボットを作りたいです。

佐々木さん:松林君は卒業してしまうんですが、今大会の「ROBO-ONE Light」でも大人気でデザイン賞を獲得したドラゴン型ロボットように、今の1年生が3Dプリンターを駆使していろいろなロボットを作ってくれているので、来年も楽しみです。

  • *1 韓国で開催される「International Robot Contest」。バトルだけでなくカーリングやサッカー競技などが行われる。
  • *2 第29回・30回ROBO-ONEを連覇した機体。その後小改良を受けて一旦改名した『ミスミ・プニ』を経て、第34回・35回ROBO-ONEも再度連覇している。
  • *3 エンドミルとテーブルの移動がコンピュータで制御された切削加工機械。

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