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第36回大会 ミスミ賞

伊都ノ島イトノシマ 九州大学ヒューマノイドプロジェクト

  • 佐藤 大貴(さとう だいき)さん
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目指したのは、機能美の追求

フィギュアスケーターのように、高く舞い上がりながら横回転。360度以上回り、ピタッと着地も決めた――。予選・床運動のジャンプ回転で最高評価の5点を叩き出し、ミスミ賞に選ばれたロボットが「伊都ノ島(イトノシマ)」です。製作者である九州大学ヒューマノイドプロジェクトの佐藤大貴さんに、製作への思いを伺いました。

他の人が使わないサーボモーターを、あえて使う

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。

佐藤さん:ありがとうございます。ミスミ賞はデザイン性を評価されることが多いと思っていて、僕には全然縁がないと考えていたので、内心ビックリしていますがとても嬉しいです。

伊都ノ島(イトノシマ)

  • Concept

    機能美を追求したロボット

  • Record

    第36回ROBO-ONE 決勝トーナメント出場

  • Weight

    2.93kg

  • Height

    40cm

  • Axis

    サーボモーター21軸

予選の時、「伊都ノ島」の華麗なジャンプ回転に、会場がどよめきました。

佐藤さん:今回のROBO-ONEは、前回大会と同様に、まず予選を突破することが目標でした(前回は予選6位で突破)。予選の床運動のポイントは時間制限があること。最も時間をかけずに高得点を取れる可能性が高いのはジャンプ回転だと考え、それが得意なロボットをつくりました。

「伊都ノ島」はジャンプの高さと回転の鋭さが目立ちました。その秘訣とは何でしょうか?

佐藤さん:最大の特徴は「HPS-CB700」という、ROBO-ONEの出場者があまり使わないサーボモーターを足回りに使っていることです。

サーボの性能は、トルク(力)とスピード(速度)で表され、通常はどちらか一方が高いのですが、このサーボは両方とも強力。ジャンプ回転をするには最強のサーボです。

ただ、これを使うと、3kg以内というROBO-ONEの重量制限を超える可能性があるので、上半身を強化できません。つまりバトルで不利になるのです。だから使う人が少ないのですが、僕はジャンプ回転にこだわっていたので、バトルはおまけ程度に考え、このサーボを迷わず使いました。

ジャンプするや否や、腕を高く上げて回転するのも特徴的でした。

佐藤さん:ジャンプ回転で5点をとるには、270度以上の回転が必要です。それを成功させるにはどうしたらよいかを突き詰めて、あの形にたどり着いたのです。ほかにも、肉抜きをして軽くしたり、すべての配線を中に通したり、足の裏に樹脂を配して着地の衝撃を和らげたりと、ジャンプ回転を成功させるために、ありとあらゆることをしました。それが本番で実を結び、嬉しかったです。

佐藤 大貴さん

予選上位のロボットも、躊躇せずつくり直す

ロボットづくりはいつから始められたのですか?

佐藤さん:中学の頃からです。中学・高校と部活でロボットをつくるなか、「よりレベルの高いことをしてみたい」という欲が高まり、大学に進学すると、すぐにロボット製作サークルの「ヒューマノイドプロジェクト」に入りました。毎日、授業が終わると部室に顔を出し、5~6時間は作業しています。

そこまでやるのは、ROBO-ONEで勝つためですか。

佐藤さん:もちろん勝ちたいという気持ちはありますが、僕の場合は、単純にロボットをつくることが好きなのです。

いろいろな機構が入っていて、剛性やメンテナンス性が高い。そんなロボットが、僕の理想。機能性に優れたロボットには、機能美が感じられます。しかも、ほかの人がやらないような方法で、自分ならではのロボットをつくりたいのです。

設計から加工まですべて1人でやっているため、1体つくりあげるまでにかなり時間がかかります。ほかの選手は1体つくったらそれを改良することが多いと思うのですが、僕は思い切って一からつくり直すことも多い。実は、前回大会と今回大会の機体はまったく別物です。

前回大会のロボットも予選6位の好成績。それをつくり直したのですか。

佐藤さん:はい。同じパーツはほとんどないぐらい、丸ごとつくり直しました。前の機体は、結果は出ましたけど、どうしても悪いところに目がいってしまって……。

でも、つくるのが好きなので、苦にはなりません。トライ&エラーをしているうちに時間が経つのを忘れてしまい、気が付いたら「あ、もう深夜か」というのが日常です(笑)。

心底、つくるのが好きなのですね。

佐藤さん:ただ、何か人前で披露できる大会がないと、計画的につくろうとはしませんし、ここまでのめり込めないと思います。そういう意味で、ROBO-ONEは非常に良い機会になっています。

機能美のあるロボットをつくり続ける

次回のROBO-ONEにも参加される予定ですか?

佐藤さん:ROBO-ONEに関しては、今回で最後にする予定です。というのも、サーボモーターはサークルで所有しているものなので、後輩に譲ろうと思っているからです。

その代わり、今後は、自前のモーターを買って、ROBO-ONE Lightに参加しようと考えています。ここではより機体を軽くしなければいけないので、いろんな機構を組み込むことが難しいのですが、僕のように機能美を追求したい人間にとっては、ものすごくやりがいがあります。ROBO-ONE Lightで好成績を残したいですね。

ロボットづくりの経験は今後の人生にも活きるのでは。

佐藤さん:上手くいかなくてもあきらめずにつくり続ける根性は役立ちそうですね(笑)。

卒業後は、大学院に進もうと思っているのですが、ゆくゆくは、ロボットの仕事に携わりたいと考えています。興味があるのは産業用ロボット。壊れにくく安全で、皆さんの役に立つ。そんな機能美のあるロボットを仕事でもつくれれば、と思っています。

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