INTERVIEWS

インタビュー

第36回大会 ミスミ賞

KaLMIAガルミア 神戸市立科学技術高等学校OB

  • 島田 晶(しまだ あきら)さん
  • 増田 紘人(ますだ ひろと)さん
  • 宗平 怜央(むねひら れお)さん
INTERVIEWS

仲間の絆は、ロボットが繋いでくれた

ボクサーのような重いストレートパンチと機動力を武器に、本戦4位まで勝ち上がり、ミスミ賞と技術賞を同時受賞したのが、神戸市立科学技術高等学校OBのロボット「KaLMIA(ガルミア)」。実は、ROBO-ONEの決勝トーナメントで、一度も勝ったことがなかったそうです。悲願達成の原動力は、チームメンバーとの絆でした。

苦節5年。決勝のバトルで初めて勝てた

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。

島田さん: ありがとうございます。実は密かにミスミ賞をずっと狙っていたので、とても嬉しいです。

KaLMIA(ガルミア)

  • Concept

    ボクサータイプのロボット

  • Record

    第36回 ROBO-ONE 第4位

  • Weight

    2.99㎏

  • Height

    30cm

  • Axis

    サーボモーター21軸

予選の床運動を無事突破し、決勝トーナメントのバトルでも強敵を次々に倒して、4位というすばらしい成績でした。

島田さん:欲を言えば優勝したかったですが、ここまで勝ち上がれて本当に嬉しいです。実はROBO-ONEには高校1年生の時から出ていながら、決勝のバトルで勝ったのは今回が初めて。あまりに勝てないので、「向いていないのでは」と落ち込み、辞めようと思った時期もありました。今回4位になれたのは、チームメンバーの増田くんや宗平くんのおかげです。

島田 晶さん、増田 紘人さん、宗平 怜央さん

勝つための研究から見出した戦法

御三方は、神戸市立科学技術高等学校時代の同級生ですか?

宗平さん:はい。機械工作部ROBOの同期です。高校生の時にもチームを組んで、優勝を目指していました。

島田さん:高校時代と同様に、今も3人で役割分担しています。ガルミアに関しては、僕が主に設計と操縦を担当しています。

増田さん:僕と宗平くんは、どちらかというとサポート役です。フレームの加工をしたり、設計のアドバイスをしたり。試合中はセコンドとしてタイムキープを行いながら、故障などの緊急時には、その原因や修理の方法を考えたりします。

島田さん:僕と増田くんは就職、宗平くんは大学進学と別々の進路を選んだため、高校時代のように毎日顔を合わせることはできませんが、週末に集まって「こうやって攻撃したほうがいいんじゃないか」などと意見を出し合います。

3人で協力し合ったことが、好成績に結びついたわけですね。

島田さん:今回は、バトルで勝つために皆で研究を重ねた結果、ボクサーのようにストレートパンチ主体で戦うことにしました。機動性を高くして、相手の攻撃を避けながら、隙を見つけたら踏み込んでパンチを繰り出す。「どこをパンチすれば倒れやすいのか」を分析し、小さな大会にたくさん出て、その急所を攻撃する練習を積み重ねてきました。

宗平さん:頑丈さにもこだわりました。練習や試合をしていると、機体が捻れてくることがあるのです。すると、だんだんロボットが弱くなります。

島田さん:とにかく足は頑丈にしたい、と二人には話していました。

増田さん:そこで、足の平行リンク機構のフレームを2枚重ねにして補強。軽量化のための肉抜きをできるだけ避けて頑丈にする一方、重量を減らすために最低限の数のサーボモーターで動くようにしました。

右腕が動かなくなるトラブルを乗り越えて

その結果、3回戦まで危なげなく勝ち進みました。

島田さん:1回戦は、ストレートパンチを立て続けに3本決めることができ、理想の勝ち方でした。

ただ、決勝進出をかけたタイペリオンとの戦いで、途中、右腕が動かなくなりました。

島田さん:片腕が動かなくなるのは想定内。そうなっても攻撃できるプログラムを入れていましたが、勝てませんでした。

でも、キングプニとの3位決定戦では、右腕が復活していました。

増田さん:3位決定戦までの時間は十数分。その間、「どこだ!どこだ!」と、宗平くんと2人で故障の原因を探し、配線を引きちぎりながら試行錯誤し、なんとか間に合わせました。

島田さん:2人には頑張ってもらいましたが、強豪ロボットにはかないませんでした。これは僕の操縦の責任です。もっと腕を磨いて、次こそは優勝を手にしたいと思っています。

ロボットづくりから、人間同士の絆が生まれた

ROBO-ONEのようなロボット競技を始めて、良かったなと思うことはどんなことでしょう。

島田さん:なんといっても「仲間」ができたことです。こうやって皆で集まって、ロボットをつくるのは何よりも楽しい。正直、高校時代はロボットづくりを巡って、衝突することもありました。でも、助け合ったり、仲間のロボットを応援して一緒に喜んだりすることで、だんだんと心が通い合っていった。

増田さん:ロボットづくりをすると、目に見えて絆が深まっていくのです。だから、卒業後も、何かあるとすぐに同期が集まる。3人だけでなく、同期が全員集まってくるのです。

宗平さん:そこで、誰かが大会で優秀な成績を収めたりするとすぐに、「その賞金でどこか行くか」となる(笑)。同期を繋ぐきっかけという意味でも、ROBO-ONEはすごく大切な大会です。

ロボット競技を通じて、人間的に成長できた部分もありそうですね。

増田さん:間違いなくあります。機械工作部ROBOの顧問が掲げているモットーは「ものづくりの前に人づくり」。ロボットづくりをするなかで痛感したのですが、ネジ締めひとつとっても、その人の個性や行動、生き方がすべて表れるものです。すると、自分の短所も見えてくる。そこを正すことが、ロボットづくりだけでなく自分の成長にも良い影響をもたらすことに気づきました。

宗平さん:僕も、部活の皆とロボットづくりに励むなかで、コミュニケーション能力が高まっていった。入部前と後ではずいぶん変わったなと感じます。

島田さん:今回がまさにそうですが、自分ひとりではできなくても、皆と協力することで、大きなことができる。簡単にあきらめないことの大切さも、強く実感しました。自分もすごく成長させてもらいました。

増田さん:「ものづくりの前に人づくり」は、社会人になっても重要なことだと思います。ロボットづくりから学んだことを仕事でも活かしていきたいと思っています。

インタビュー一覧