インタビュー
第35回大会 ミスミ賞
決勝トーナメントでは強豪を破るなど、今回活躍したロボットの1つが、大会常連の「BJ05 ASURA」です。「ASURAが、自分に自己表現の場を与えてくれた」という、大同大学OBの青木康弘さんに、二足歩行ロボットの醍醐味を伺いました。
長身の赤いボディ、長い足から繰り出されるサイドキック、攻撃のたびに発せられる効果音。大会のなかでもひときわ目立つ存在でした。
青木さん: ありがとうございます。ASURAをつくるにあたっては、「壊れないこと」を最優先に考え、スピーディな動きや大技を繰り出すことができる設計にしていますが、同じくらい「魅せる」ことも意識しています。
ASURAはロボットですが、私は「プロレスラー」のようなイメージを持っています。リングに上がって人前で戦い、歓声を浴びる。その嬉しさを味わうために、外見を良くするとか、音を鳴らすとか、何かしら目立つことをやろうと思っています。
BJ05 ASURA(アスラ)
Concept
会場を沸かせるプロレスラー
Record
第35回 ROBO-ONE ベスト16
Weight
2.96㎏
Height
47cm
Axis
サーボモーター20軸
決勝トーナメントの1回戦では、試合中いきなり360度回転をしました。
青木さん: あれはギャグです(笑)。1回戦で戦った相手は強いロボットで、これまで何回も対戦しています。ただ、相手の身長が低いため、長身のASURAとうまくかみ合わず、なかなか勝負が決まらないことが多かったのです。だったら見せ場でもつくろうかなと思い、360度回転をしました。
予選の床運動でも、回転や姿勢が評価されていましたね。
青木さん: 実はいろいろと、ほかの人がやらないような工夫を行っています。腰に軸を2つ設けることで、回転スピードを速くしていますし、長身ですが片足立ちで停止できるぐらい、バランスも良くしてあります。足に軸を1つ加えたら、歩行できなくなってしまったという失敗もありますが……。
ただ、かなり繊細につくっているため、細部に至るまで手を抜くことができません。少しでも手を抜くと自分に返ってくる。そこがロボットづくりの難しさですね。
青木 康宏さん
ロボットづくりを始めたきっかけを教えてください。
青木さん: 大同大学の研究室に、近藤科学株式会社の「KHR」という二足歩行ロボットが飾られていたことです。それ以前からロボットに興味はあったのですが、高くてとても手を出せないなと思っていました。そんな時、誰にも使われずにいたKHRを見て思い立ち、一度入部しながらも離れていたロボット部に改めて入り直しました。
ただ、当時ロボット部には二足歩行ロボットを製作している人がいなかったので、独学でつくりました。それで、「大会があるなら、一度出てみようか」と、製作を開始した数カ月後に、無謀にもROBO-ONEに出場しました。もう14年前の話です。
結果はどうでしたか?
青木さん: 32位までが予選通過できたのですが、私は33位でした。思ったより健闘しましたが、どうせやるなら予選通過したかった。その悔しさを晴らしたくて、ハマってしまったわけです。大会に出ては参加者に話を聞き、新しいロボットをつくったり、改良したりしていきました。
ROBO-ONEは強いロボットが多いので、第31回大会の3位がASURAの最高位。いつかは優勝したいですね
最初に出場した時から、ASURAだったのですか。
青木さん: 最初は別のロボットでしたが、社会人になってからはずっとASURAで出ています。10年以上付き添った相棒です。
思い入れも強いのでは?
青木さん: そうですね。分身みたいなところもあります。まあ、僕はASURAみたいにイケメンじゃないですけど(笑)。そのため、ASURAが大会で傷むと、「無理させてゴメンな」「俺が悪かったよ」と心のなかで語りかけています。
二足歩行ロボットづくりの醍醐味は?
青木さん: いろいろありますが、自己表現ができることでしょうか。リングに上がって勝ち名乗りを受けて「やったぞー!」とこぶしをあげたら歓声を浴びる、なんてことは、人生経験としてなかなかできません。ROBO-ONEに出ることで、その面白さを知ってしまいました。今回、ミスミ賞をいただき、こうしてASURAの写真をカッコよく撮ってもらえたことは、とても光栄です。
ベアリングの会社に勤められているそうですが、仕事にも影響はありますか?
青木さん: 良い影響があるかは分からないのですが、ロボットづくりをしていると、「かっちりモノをつくらないといけない」ということを日々痛感しています。そういう心構えに関しては、良い面があるのかもしれません。
最後に、今後の抱負をお聞かせください。
青木さん: ASURAを今よりも強くすることです。いつかはASURAを完結させたいと思っているのですが、優勝することでそれができるのかというと、自分でもよく分かりません。どのような花道を飾るのが良いのか、考えていきたいと思っています。