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第33回大会 ミスミ賞

Neutrino-Azulニュートリノ アズール 飛騨神岡高校(ヒダカミロボ部)

  • 中村 英樹(なかむら ひでき)さん
  • 鈴口 玄起(すずぐち げんき)さん
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人間のことについてもわかるロボットに関わっていきたい」

技術的にも、コスト的にもハードルが高い二足歩行ロボット競技に、2004年から参加し続けている高校がある。ほとんどが年上の対戦相手に臆することなく、しかし常に謙虚な姿勢で幾度となく入賞している“ヒダカミロボ部”の師弟コンビが作った新機体とは。

あえて主流の「平行リンク」を
チョイスしない機体

第33回大会ROBO-ONEは、完走者が13機しか出ない厳しい予選でした。その中に食い込んだ「Neutrino-Azul」(エントリー名:Bluethunder?)は、どういった機体なのでしょうか?

鈴口さん:じつはROBO-ONEのために作った機体ではなく、別の競技会でボールを強く「蹴る」ために作った機体なんです。去年、足が平行リンクの機体でその競技に出たんですが、構造的にどうしても威力が出なくて……ボールが飛ばないので、平行リンクじゃないロボットを作って大会に出ようっていうことになりました。

中村さん:格闘競技のROBO-ONEでは、一般的に平行リンクの機体が有利とされています。でもこの機体の足は直動(関節1つに対して1つのアクチュエーターを直結)です。直動はバランスを取るような動きを制御しやすいので、段差があるROBO-ONEの予選も視野に入っていました。ただ、生徒たちは直動の足構造を持った機体を10年以上製作していなかったので、この機体に関しては顧問の私と鈴口くんの2人で、2Dと3DのCADを併用して設計しました。

しっかり歩くロボットを作るコツはありますか?

中村さん:使用している部品の剛性を高めて、歪まないように設計しています。強いロボットは下半身がガッチリしていますよね。また、曲げ加工などの加工精度にもこだわっています。

鈴口さん:足の部品の曲げ加工は僕が行いました。でも、部で一番上手い人が曲げた肩部品は、長さを測るとピッタリすぎて怖いくらいです(笑)。

中村さん:私たちの平行リンク機体では、エクセルを利用したシミュレーターでモーションを生成していますので、そのノウハウもあってしっかり歩いているのかなと思います。「Neutrino-Azul」では、そのしっかりとした足腰で相手を倒せる動きを作っていきたいです。

Neutrino-Azul(ニュートリノ アズール)

  • Record

    第33回ROBO-ONE本大会 ベスト16
    第30回ROBO-ONE 予選4位

  • Weight

    2.7kg

  • Height

    46cm

  • Axis

    サーボモーター19軸

高校生チームの古豪・ヒダカミロボ部

飛騨神岡高校のロボ部は第6回ROBO-ONE(2004年8月)から参加している古株ですね。中村さんがロボットを始められるきっかけは何だったのでしょうか?

中村さん:前任校時代に「Metallic Fighter」というロボットがにょきにょきと起き上がる動画を見て衝撃を受け、高校でもやりたいなと思ったのが最初です。翌年に飛騨神岡高校に転勤になって、そこで二足歩行ロボットを始めました。当時のROBO-ONEのトップの方にお話を聞きながら手探りで始めて第6回大会に出場したんです。じつは今、地元でROBO-ONEの認定大会『飛騨神ロボットバトル』を計画してくれているのが、その時のメンバーなんです。

鈴口さんは、飛騨神に入る前からロボットが好きだったんですか?

鈴口さん:好きは好きだったんですけど、ただ好きって言うだけで。ロボ部があると知ったのは、高校説明会の時です。そこで中村先生が来てくださって、先生のロボットを初めて見て……「すごい!」と思って飛騨神に決めました。

操縦してみたいというよりは、作ってみたいという気持ちですか?

鈴口さん:そうですね。

鈴口 玄起 さん

「要らない部品がない」ことに
気づくことができた

ロボットづくりの魅力について教えてください。

中村さん:あえてマイコンカーなど、他のロボットではなく「二足歩行ロボット」をやっているのは、人間のすばらしさ、人間の凄さみたいなことを理解するには、二足歩行ロボットが一番だと思うからです。大会を通じて色々な人と出会えることも魅力です。そういう場所を提供するのが僕の仕事だと考えています。場を作ることで来てくれる子もいるし、将来ロボットの研究者になりたいと言って大学に行ってくれる子もいます。

鈴口さん:高校に入るまでは全くロボットに関わりがなかったんです。先輩から折り曲げの仕方だったり、何をすればいいのかから教えてもらいました。映像で見ていると「ココをこうすればいいのに」と思ったりもするんですけど、実際にプログラムをやってみると、本当に思い通りにいかなくて。人が普通にできることなのに、ロボットにやらせると、色々なところを動かさないとできないっていうのを知ることができるのは面白いです。

鈴口さんは、「Neutrino-Azul」の中で、中学生の頃の自分だったら気づかない、中学生の自分に教えてあげたい部分はありますか?

鈴口さん: 整備していると、ここに何でこの部品を使うのかなっていう理由が……ひとつひとつ、要らない部品がないんだなっていうのを、すごく実感できます。最初は訳がわからないままやっていて、後からだんだん「そうだったんだ」と気づかされますね。
例えばこういう平たいネジの頭は、関節部分を動かすときに引っかからないようにしているんです。簡単なことなんですけど、そんな、どんなネジを使っているのかなんて、中学生の時には気づかないんで。そんなところまで見ていなかったなと思います。

この先の進路、将来の夢を教えてください。

鈴口さん:将来の夢っていうほど明確なものはまだ無いんですけど、工学部に進学して、これからもものづくりに関わっていけたら、ということは考えています。

中学生の時点では興味がなかったという鈴口さんが、そういう進路を取ろうとしていることについて、中村さんはいかがですか?

中村さん:本望ですね(笑)。

これから先は、どんなロボットを作りたいと思われていますか?

鈴口さん: どんなところが動いているとか、機械だけではなくて人間のことについてもわかる、こういう二足歩行ロボットとか、動物的な動きをするロボットに関わっていきたいと思っています。
あ、あと、ROBO-ONEで優勝します!(どよめき) シズラーC(第29回ミスミ賞)のカッコ良さと、キング・プニ(第29回・30回ROBO-ONE優勝)の強さを兼ね備えたロボットを作りたいです。

中村 英樹 さん

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