支援団体インタビュー

2024年度

京都市立芸術大学 宙漆プロジェクト

宙漆

インタビューイメージ

【活動内容】

スペースバルーンを用いて漆塗りの芸術作品を成層圏で撮影するアートプロジェクトです。

■空漆 公式HP
https://soraurushi.studio.site/

【インタビューに答えてくれた方】(2025年6月現在)

大嶋 シュテファンさん(機体開発/名古屋大学 大学院 工学研究科 航空宇宙工学専攻 修士 1年)
川瀬 幹己さん(共同代表/名古屋工業大学大学院工学研究科 工学専攻 修士 2年)

漆アートが宇宙に映える―地球と宇宙の融合プロジェクト

アートとテクノロジーの融合を目指し、日々革新的な活動を展開する京都市立芸術大学の「宙漆プロジェクト」。今回は、この画期的な取り組みを推進する大嶋シュテファンさん、川瀬幹己さんにお話を伺いました。

「宙漆プロジェクト」は、京都市立芸術大学で美術を学ぶ学生と名古屋大学・名古屋工業大学などで工学を学ぶ学生が協力し、アートとテクノロジーの融合を目指す取り組みです。漆を使ったアート作品を成層圏(高度約30km)までスペースバルーンで運び、漆の表面に地球と宇宙が映し出される様子を撮影・鑑賞することを目標としています。

このプロジェクトでは、アート作品の制作と並行してスペースバルーンの機体開発も行っており、今年度は3月に日本モンゴル共同気球実験において放球実験を実施しました。今年度の目的は、最高高度付近で日の出が作品を照らし出す映像の取得でした。

※スペースバルーン:ヘリウムの浮力を用いて高度30km近くまで上昇する気球

インタビューイメージ今回スペースバルーンに搭載し撮影した漆塗りの作品「颯」

考え方の違いが生んだ、新しいカタチ

芸術分野では制作過程や背景が重視される一方、エンジニアリング分野では成果物が適切に機能することが何より重要です。こうした考え方の違いから、プロジェクト途中でチームメンバー間での衝突も生じました。

しかし、丁寧な対話を重ね、互いを理解し尊重し合うことで、放球実験は見事に成功を収めました。多様な視点が融合したことで、革新的な成果につながったのです。

「工学と美術、それぞれ異なる専門性や背景を持つメンバーとの協働を通じて、互いの考え方や価値観に触れることができました。これは、ものづくりの幅を広げる貴重な経験になりました」

分野を超えて一つの成果を創り上げる面白さと難しさは、このプロジェクトを通じて得た大切な学びとなりました。

インタビューイメージメインペイロード
インタビューイメージメインペイロードに搭載しているカメラの画角調整

まだ見ぬ宇宙を求めて

チームはこれまでに培ってきた小型・軽量な観測機器および通信技術の知識と経験を活かし、限られた重量、電力、通信環境でも安定して動作するシステムの構築を目指しています。特に、気球実験のような特殊な条件下でも、このシステムを活用することで、どのような環続でも安定的に作品を撮影することを実現したいと考えています。

将来的な目標として、オーロラを背景にした壮大な作品の撮影にも挑戦し、宇宙をより身近で豊かな領域にしたいと考えています。これにより、技術の限界を押し広げるだけでなく、観る者の心を動かすような感動的な作品を生み出し、異分野協働の可能性を広げ、さらなるチャレンジを続けていきたいと思います。

インタビューイメージ

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」への
メッセージをお願いします。

ミスミのECサイトはソート機能が充実しており、品揃えも豊富で、いつも本当に助かっています。特にMISUMI FRAMESは、アルミフレームで治具などを制作する際、CADに不慣れなメンバーでも簡単に設計できるため、とても重宝しています。プロジェクトを進める上で、予算の問題は常につきまとうものです。今回、特別支援という形でご協力いただけたことは、本当に心強く、大きな支えとなりました。

学生同士で『やりたい!』という気持ちで集まったメンバーと、あれこれ言いながら進めるものづくりは、かけがえのない貴重な経験であり、何より楽しい時間です。今回のスペースバルーンの取り組みもその一例ですが、こうした楽しさを多くの人と共有できることは、私にとっても大きな喜びです。このプロジェクトを通じて、より多くの方がものづくりの楽しさを体験し、共に分かち合えることを願っています。

ミスミ学生ものづくり
支援担当より

宙漆プロジェクトは、伝統工芸と最先端技術の融合により、新たな表現の可能性を切り拓いています。彼らの挑戦は、異分野協働の重要性と、創造性に垣根がないことを私たちに教えてくれる貴重な取り組みです。