支援団体インタビュー

2024年度

東京農工大学 航空研究会

NoKoLAT

インタビューイメージ

【活動内容】

ラジコン飛行機やマルチコプター、モデルロケット、CanSatなど主に空を飛ぶものの設計・製作をしています。

■NoKoLAT 公式HP
https://web.tuat.ac.jp/~birdman/

【インタビューに答えてくれた方】(2025年6月現在)

米田 陽さん(部長/東京農工大学 機械システム工学科 3年)

空への挑戦、仲間と共に

ラジコン飛行機やマルチコプターなど「空を飛ぶもの」の設計・製作に特化し、魅力を伝えることを目的に活動している東京農工大学航空研究会「NoKoLAT」。今回は、この挑戦的な取り組みを推進する米田陽さんにお話を伺いました。

東京農工大学航空研究会は、機械システム工学科公認のものづくりサークルです。140人ほどの学部生が所属し、9月に行われる「全日本学生室内飛行ロボットコンテスト」と3月に行われる「種子島ロケットコンテスト」の2つの大会に出場しています。2つの大会に向けて製作活動をするのはもちろん、自由製作もさかんに行っており、各々が日々作りたいものを作りたいときに作っています。

ものづくりサークルの活動や工学の魅力を伝えることを目的に外部へのアプローチも行っています。昨年度は国際航空宇宙展(JA2024)に参加し、東京ビッグサイトにて展示飛行とプレゼンテーションを実施しました。この経験は、国際的な場で私たちのものづくり活動を発表する貴重な機会となりました。また、近隣の保育園児を対象に手作り飛行機教室を開催しました。今後もこのように積極的により多くの人にものづくりの楽しさを届けたいと思っています。

インタビューイメージラジコン飛行機

軽量化と剛性の両立に挑む技術力

私たちの製作活動において最も重要なのは、軽量化と剛性確保の両立です。飛行ロボットコンテストの一般部門では飛行重量200g未満という厳しい制限があり、この制約の中で最高性能を発揮する機体を作る必要があります。

まず、ラジコン飛行機の製作についてご紹介します。私たちは発泡スチロールの板材から電熱線とやすりを用いて胴体や翼を切り出し成形しています。ラジコン飛行機において「翼面荷重」(機体重量/翼面積)という評価指標があり、翼面荷重が小さい、つまり軽くて翼面積が大きいと機体の性能は向上する傾向にあります。しかし翼面積を増やすことは重量増加につながり、剛性を疎かにしすぎると機体構造を保つことができません。

そこで私たちは、機体の主材料に低密度の発泡スチロールを採用して軽量化を図る一方、機体構造を担う重要な部分にはバルサ材、カーボン素材、3Dプリンターパーツなどを活用して剛性を確保しています。これにより、必要最低限の翼桁で剛性を保つ構造を実現し、制限重量内でできるだけ大型の機体を製作することを可能にしています。

インタビューイメージアルミフレーム 発泡スチロールの角材

一方、マルチコプターでは独自のフレーム製作技術を開発しています。一般的にマルチコプターのフレームは外注することが多いですが、外注のフレームには形状自由度が極めて低いという課題があります。そこで私たちは、カーボンクロスとエポキシ樹脂を購入し自前でCFRPの積層を行っています。

特に昨年度の飛行ロボットコンテストでは、25分割された3Dプリンター製の中子※を用いて積層した、中空構造の完全一体成型フレームを使用したマルチコプターで出場しました。この革新的な製法により、台形断面やI字型断面などの立体形状の製作を実現し、他団体と同じ重量制限の中で、より大型の機体での出場を可能にしています。

こうした軽量化技術は、種子島ロケットコンテストに出場するCanSatやモデルロケットにも応用され、私たちの技術力の幅を広げています。

※中子:鋳造で中空構造を形成するために用いられる内型。

インタビューイメージラジコン飛行機の機首

仲間と共に築く、挑戦し続ける未来

航空研究会での活動を通して、イメージしたアイディアや図面上のものが形になる瞬間の喜びや、試行錯誤する過程そのものの面白さ、ものづくりの楽しさを共有できる仲間の存在の大切さを強く感じています。現在、現役部員が約140名所属しており、この規模だからこそ実現できる活発な意見交換と切磋琢磨が、私たちの技術力向上の原動力となっています。

これまでの成果についてご紹介すると、飛行ロボットコンテストにおいて8年連続でいずれかの部門で優勝しており、直近の大会では4部門中3部門で優勝という圧倒的な成績を収めています。種子島ロケットコンテストでも4年連続でいずれかの部門で入賞を果たしており、得意分野の軽量化や飛行技術を応用した私たちならではの発想や手法が評価されています。

今後の展望として、まず大会面では製作・操縦技術を受け継ぎ、さらに発展させていくことで、大会を牽引する存在であり続けたいと考えています。技術面では、学生ならではの自由な発想のもと、新たな小型無人航空機のコンセプトに挑戦していきます。

そして、私たちが最も大切にしたいのは、学生だからこそできる形で無人航空機やものづくりの魅力を発信し続けることです。今後も仲間たちとともに妥協のないものづくりを楽しみながら、より多くの人にものづくりの楽しさを届けていきたいと思います。

インタビューイメージ

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」への
メッセージをお願いします。

毎年ご支援いただきありがとうございます。部員一同、心より感謝申し上げます。私たちはさまざまな場面でミスミの製品を活用させていただいております。まず、大きな発泡スチロールの板材から直線で切り出す際にアルミフレームを使用しています。また、ラジコン飛行機のモーター取り付け部をはじめとする電装部品の固定にはミスミの鉄ねじやポリカねじ、ナットを使用しています。また、このご支援を機に私たちはコンプレッサーを導入しました。発泡スチロールを加工する際には、多くの削りかすが発生します。それを部品から除くために使用しており、とても重宝しています。

ものづくりに取り組む皆さんとは、『作りたい』を大切に、『楽しい』を原動力に、ぜひ一緒にものづくりに励みたいと思います。私は、いつでもそのときだからこそできるものづくりがあると考えています。工学の魅力に気づき、ものづくりを楽しんでいる『ものづくり仲間』がたくさんいると幸せです。

ミスミ学生ものづくり
支援担当より

東京農工大学航空研究会NoKoLATは、軽量化技術と独自の発想で航空機ものづくりに挑戦し、全国大会での圧倒的な実績を築いています。彼らの活動は、技術力の向上と仲間との絆を大切にしながら、空への夢を追い続ける貴重な取り組みとなっています。