支援団体インタビュー

2024年度

徳山工業高等専門学校 支援技術チーム

徳山高専ATチーム

インタビューイメージ

【活動内容】

社会の困り感を科学技術で軽減することを目的に、地域連携を大切にしながら、支援技術に関する開発、普及活動を行っています。

■徳山工業高等専門学校 HP
https://www.tokuyama.ac.jp/chiikirenkei/gear50-society50.html

【インタビューに答えてくれた方】(2025年6月現在)

奥田 颯大さん(徳山工業高等専門学校 機械制御工学専攻 1年)

地域と共に歩む支援技術開発

社会の困り感を科学技術で軽減し、誰もが活躍できる社会環境の実現を目指して活動している徳山工業高等専門学校支援技術チーム「徳山高専ATチーム」。今回は、この意義深い取り組みを推進する奥田颯大さんにお話を伺いました。

私たちは地区市民センターや県内の特別支援学校と連携しながら、高齢者ICT相談会、障害に対応したプログラミング教室、ボッチャ教室などの開催に取り組んでいます。また、重度障害に対応した電動ボッチャ装置の開発、手話の学習の補助を目的とした画像認識システムの開発、ボッチャランプの性能解析なども行っています。

※ボッチャとは、重度脳性麻痺者もしくは同程度の四肢重度機能障がい者のために考案されたスポーツで、パラリンピックの正式種目です。

高齢者向けのシニアICT相談会は市民センター、地区社会福祉協議会と協力しながら2018年から開催しており、累計70回、300名弱の方に受講していただいています。プログラミング教室は障害の有無を問わず誰もが楽しく学べる講座で、2024年度には100名弱の方に受講していただきました。

電動ボッチャ装置は従来のボッチャのルールでは参加することが難しい寝たきりの障害者の参加を可能にすることを目的に開発を行っており、指先の動きや視線入力などの多様な入力を用いてボッチャランプを操作できるものです。

インタビューイメージ電動ボッチャ装置

ものづくりで実現する多様な参加の場

今回の支援では主にミスミ製のアルミフレームとその関連部品、ねじなどの消耗品を購入しました。アルミフレームはボッチャランプの性能解析を行う実験装置の構造用部材や、支援用具の試作検討に用いました。部品の規格がシリーズとして分かりやすく分かれており、注文しやすかったです。

私たちの開発する電動ボッチャ装置は、従来では参加が困難だった重度障害者の方々にも競技への参加機会を提供します。指先のわずかな動きや視線入力など、一人ひとりの身体状況に合わせた多様な操作方法を実現することで、より多くの人がスポーツを楽しめる環境を作り出しています。また、プログラミング教室では障害の有無を問わず誰もが学べる環境を整備し、将来の就労機会拡大にもつなげています。

この活動を続ける中で、技術者は自分の専門領域にとらわれず多種多様な学びが必要であることを実感しました。障害に対応したものづくりを行うためのヒントは機械や電気の知識だけではなく、教育や医療など様々な分野にあるからです。ときには玩具や食品からヒントを得ることもありました。自分の専門分野を深めることももちろん大切ですが、それ以外の領域にも学びの領域を広めることが必要だと感じました。

インタビューイメージ支援物品での制作物

インタビューイメージ
ボッチャの体験会の様子

技術の力で描く、優しい社会の未来

キット化を目指して電動ボッチャ装置の開発を進めていき、全国の特別支援学校の児童生徒に使ってもらえるようにしたいです。現在は個別対応が中心ですが、将来的にはより多くの人が手軽に利用できる汎用性の高いシステムとして普及させることを目標としています。また、障害に対応したプログラミング教室を拡大していき、特別支援学校の児童生徒の就労機会の増加に少しでも貢献できたらと思います。

私たちが目指すのは、単に支援技術を開発することではなく、それを通じて社会全体の意識を変えていくことです。高齢者ICT相談会では、デジタル技術に不安を感じていた方々が自信を持ってスマートフォンやタブレットを使えるようになる瞬間を何度も目にしてきました。こうした小さな変化の積み重ねが、年齢や障害の有無を問わず誰もが活躍できる社会環境の実現につながると信じています。

今後も地域の皆さんと手を携えながら、支援技術の研究開発と普及に取り組みます。技術の力で、一人ひとりが自分らしく輝ける社会を築いていきたいと考えています。

インタビューイメージ学協会での発表風景

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」への
メッセージをお願いします。

この度は、徳山高専支援技術チームをミスミ学生ものづくり支援の特別支援団体に採択していただき、ありがとうございました。ミスミオリジナルのアルミフレームの豊富な品揃えは私たちATチームの活動にとって大変有益なものになりました。ご支援いただいた物品を用いて、さらに多くの人の困り感の解消に貢献できるように努めていきます。

ものづくりによって生み出される全てのものには必ずそれを使う人がいます。使う人のことをよく考えて、その人が笑顔になれるようなものづくりを学生のころから意識して取り組むと、誰にでも優しいものができ、それが普及すると優しい社会になると思います。ものづくりに取り組む皆さんとともに、技術の力でより良い社会づくりに貢献しましょう!

ミスミ学生ものづくり
支援担当より

徳山高専ATチームは、支援技術を通じて社会の困り感を解決し、誰もが活躍できる社会の実現を目指しています。彼らの活動は、技術が持つ人を支える力と、学生だからこそできる地域貢献の可能性を示してくれる貴重な取り組みとなっています。