支援団体インタビュー

2021年度

大阪電気通信大学 3D工房プロジェクト

地域連携ものづくりプロジェクト

インタビューイメージ

【活動内容】

日本金型工業会が主催する「学生金型グランプリ」プラスチック金型部門に参加、入賞を目標とし、本年度は「環境にやさしい金型づくり」をテーマに制作活動をしています。

■大阪電気通信大学Project now 機械工学科HP
https://www.osakac.ac.jp/project_now/me/

【インタビューに答えてくれた方】(2022年3月現在)

宮城 慶雅さん(プロジェクトリーダー)
日高 雄斗さん 木山 裕貴さん 山本 大気さん(大阪電気通信大学 工学部 機械工学科 4年)

『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して

今回は、「学生金型グランプリ」参加・入賞を目標に、金型作成から、成形部品の組み立てまでを学生自らが行っている大阪電気通信大学『3D工房プロジェクト「地域連携ものづくりプロジェクト」』のプロジェクトリーダー宮城 慶雅さん、日高 雄斗さん、木山 裕貴さん、山本 大気さんにお話を伺いました。

ミスミ学生ものづくり支援では、今回の大会に向けて製造する、金型主要部で使う高精度で高品質なプリハードン鋼※1や私たちでは製作不可能なアンダーカット部の関連部品、成形品取り外しのスリーブなどを注文させていただきました。

以前は、工作機械などの設備やものづくりのノウハウが十分でないことから、学生による精密金型の製造は困難でした。ですが近年は、高精度で特殊な工作機械を必要とした金型部品が購入できるようになり、加えて、私たちの先輩が培ってきた設計・製作の知見から、ものづくりの経験が浅くても金型製造が可能となりました。さらに精密金型向けに提供されているミスミの標準部品と特注品を利用することで、迅速に製作でき、学生でも企業の製造現場における「ものづくりレベル」に近づきつつあるのではないかと思います。

※1高硬度・高強度であるが加工・仕上げが容易な金型鋼

インタビューイメージフライス盤による
金型部品の切削加工

インタビューイメージ金型主要部に使用する部品や、
関連部品などを注文

地域連携により実現する、
金型製造での「ものづくり」

私たちのプロジェクトは、日本金型工業会が主催する「学生金型グランプリ」プラスチック金型部門に参加するため、2019年に設立されました。「学生金型グランプリ」は、毎年9月に製品図や仕様などが提示され、翌年4月までに金型を完成させて成形します。今年度は「環境にやさしい金型づくり」のテーマのもと、成型部品5点で組み立てる「飾り小物」が課題となりました。そこで、私たちは犬をモチーフとした金型・成形品を制作しました。提出した成形品と金型は、国際的な見本市である「INTERMOLD 2022」で展示、学生団体による発表会が行われ、金型研究センター(大学院)や金型コース(学科)からの参加が多いなか、学生金型グランプリで金賞を受賞することができました。

インタビューイメージ

学生が主体となるプロジェクト(制作活動)では、工作機械などの設備や設計・製作のノウハウが足りないため、ものづくり競技会に参加したいけれど断念するケースが多いように思います。私たちの先輩はこの課題に対し、地域連携ものづくりプロジェクトを立ち上げました。私たちは先輩の後を引き継ぎながら、不足設備や設計・製作のノウハウを近隣の職業訓練校や民間企業、ネットワークを利用して関東の大学などと補完し合い、お互いの強みを活かしたものづくりを実現しています。

最近では、コロナ禍により対面での共同製作が難しいですが、ICTやクラウドコンピューティングにより、設計や製造データの交換をオンライン上で行い、金型のダウンサイジングやモジュール化によって、宅急便で部品の受け渡しを可能にするなど、工夫と対策を凝らし活動しています。また当学は、射出成形機がないため学外に行って成形しなければなりません。コロナ禍のため学外での作業日程を確保においても大変苦労しました。

インタビューイメージ成形品5点組み立てによる飾り小物

また現在のものづくり設計は2次元の図面ではなく、3次元の立体モデルを利用するようになり、それが世界標準になりつつあります。3次元製品情報付加モデル(3D Annotated Model:3DAモデル)では、寸法公差や幾何公差などの製品特性や部品の名称・個数といったモデル管理情報を付加でき、後工程での解析や製造場面で、データ活用する際にも役立ちます。私たちのプロジェクトでは、この手法を金型の設計・製作に応用できないかも探っています。

インタビューイメージ3Dモデル、3DAモデル 図面

金型製造の可能性を探り、
日本のものづくりに貢献したい

新たな技術が進化していく中で、3Dプリンターは、付加製造技術(Additive Manufacturing)により、デジタルデータから直接様々な造形物を簡単に作り出すことができるようになりました。私たちのプロジェクトは、3Dプリンターが金型製造で利用できるか今後探っていきたいと考えています。具体的には、金属造形製金型入れ子と樹脂造形製金型入れ子について、造形の難易度、強度・剛性、寸法・幾何精度、射出成形での成形性などについて検証することを計画しています。

現在、日本の大学では、金型製造を学べるところはほとんどありません。金型製造は、製品の企画・設計、金型設計・製作、成形を通じ、「ものづくり」を体系的に学ぶことができます。また、3次元CADやCAD/CAM、NC工作機械や組立て、成形検証といった製造における技術も養うことができます。私たちは、知識・理論だけではなく実際の生産現場を理解している技術者として、今後の日本のものづくりに貢献したいと考えています。

インタビューイメージ
インタビューに答えてくれた
写真上 山本大気さん
写真左から 宮城慶雅さん、木山裕貴さん、日高優斗さん

インタビューイメージ
製作現場の様子

最後に、「ミスミ学生ものづくり支援」と「ものづくりに取り組む学生のみなさん」へ
メッセージをいただきましたのでご紹介します。

ものづくりには、多くの制作費用が発生します。ミスミ学生ものづくり支援のようなプログラムからご支援いただくことで、私たちのプロジェクトは大変助かっています。しかし、当学でもこの支援を受けている活動団体は私たちの他にはないと思いますし、他学でもまだ知らない学生が多いのではないかと思います。ものづくりを目指している学生に対して、ミスミ学生ものづくり支援がより多くの方に認知され、そして支援により私たちと同様に、ものづくりの面白さや達成感、そして自信をもってもらえたらと思います。