支援団体インタビュー

2019年度

金沢工業大学 夢考房

メカニカルサポートプロジェクト

インタビューイメージ

【活動内容】

『メカニカルサポートプロジェクト』(以下メカサポ)は、地震などの災害時に活躍する『救助(レスキュー)ロボット』を製作。被災者の救助につながるレスキューロボットの実用化を目指し、救助システムの評価やレスキューロボット・コンテストなどの参加を計画しています。

■メカニカルサポートプロジェクトHP http://www2.kanazawa-it.ac.jp/mecha-sp/

【インタビューに答えてくれた方】(2020年11月現在)

工藤 健剛さん(機構班リーダー/金沢工業大学 工学部(機械工学科)3年)
高水 想太さん(制御班リーダー/金沢工業大学 工学部(電気電子工学科)3年)
渋谷 享史さん(現プロジェクトリーダー/金沢工業大学 工学部(ロボティクス学科)2年)

『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して

メカサポは、レスキューロボット『OD1』を製作しています。一台の機体は、本体のほかマニピュレータ*1機構、制御*2、アームとクローラ*3、センサー、それに地図生成の専門グループによって製作されています。どんな困難な状況でも「自分たちの夢(Our Dream)」を載せて進んでいきたい、そんな希望を『OD1』という名前に込めています。
「普段からミスミさんを利用していて、特にパーツのCADデータを提供してくれる『MISUMI ECサイト』はかなり使わせてもらっています」と話すのは機構班リーダーの工藤さん。
「例えば、脚の部分のクローラ(無限軌道)は複雑な機構で、モーターの力を伝達するベルトやプーリー、メカロックといった部品の形状も複雑です。こういうものは、自分たちだけでは設計できない特殊な部品のため、ミスミさんのCADデータを活用しました」
4つの脚のような形状のクローラは、がれきや階段などの急な勾配も駆け上がることができる性能をもっていて、『OD1』の大きな特長のひとつです。

インタビューイメージミスミ製品を使ったレスキューロボット『OD1』
*1:ロボット上部についているロボットアーム
*2:ロボットを動かすためのプログラムや、回路基盤
*3:キャタピラのような形の車輪

今回の『学生ものづくり支援』はどのように活用したのでしょう。
「ロボット作製の過程で重要なネジや金属板に利用しました。回路の電送部分も、丈夫なコネクタを購入できましたし、不足しているパーツの補充にも利用しています」
大きな負荷がかかるクローラには、ゴムやプラスチックなどの素材が使用されているため、ひとつひとつの部品の選定が、機体の強度にも影響してくるそうです。
「以前、スプロケットとチェーンがかみ合うかどうか、わからなかったときにミスミさんに電話で問い合わせたことがありました。いろいろ調べてもらって問題なく使用できると回答いただいたことがあって、とても安心して作製できました」

インタビューイメージコロナ禍でのオンライン取材
※下段左から工藤さん、渋谷さん、高水さん

がれきを踏破する性能、
人命救助に役立つ機能を搭載

気候変動や大地震など自然災害が発生すると、倒壊した建物による二次被害を受けるリスクがあります。レスキューロボットを導入すれば、救助隊に代わって建物の中を探索し、状況を知らせることができ、早急な人命救助につながります。
「そのために、がれきはもちろん、階段も走破できる性能や、開けにくくなったドアを開閉できるマニュピュレータ機構をもったロボットを作りました」(工藤さん)。
ドアを挟むアーム部分はサーボモータを多く使用することでスリムな形状を実現できたそうです。狭いところにも手が伸びていきます。
「いちばん意識したのは簡単に機体を操作できること。誰でも動かせるようゲームのコントローラに動作のボタンを割り当てました。クローラが4つの脚の形状になったのも、段差の踏破力を向上させれば難しい操作が必要なくなるからです」

インタビューイメージ特殊クローラで斜面を登る

「さらに、ロボットが実際どういう風景を見ているのか、カメラや体温や動体を検知するセンサー、火災を検知できるCO2センサーなどを搭載し、現状を察知できるしくみになっています」
さまざまな能力をもった『OD1』。実際の災害現場で走らせてみたい――そんな思いを実現するため、メカサポでは福島県にある、実際に倒壊した建物を使用できる実験場での試走を計画していました。ところが、新型コロナウィルス感染症拡大の影響で活動はストップ。計画は中止された状態となっています。
「ちょうど実験が終わっていろいろな課題が見つかったところで活動はストップしました。メンバーたちは校内に入れず、機械加工ができる状況ではありませんでした」(高水さん)。
「制御担当たちはプログラムを改良して、何か解決できることはないか、回路設計は回路で解決できることはないかなど、できる限り設計は進められました」
計画に遅れが出ていますが、それでもロボットを完成させたいというメンバーたちの気持ちにブレはなく、現在もロボット製作は続いています。

インタビューイメージゲームコントローラで操作

救助に役立つ日が来るまで、
ロボットをつくり込む

実際の災害現場で人命救助に役立つロボットを作りたい。メカサポの活動ポリシーは、2011年の東日本大震災をきっかけに明確になりました。
「この目的を実現するためにクリアしなければならない課題は増えましたし、ロボットの性能や機能への要求レベルも高くなりました。それでもメンバーたちが熱心に開発に取り組むのは、やはりロボットを人命救助に役立てたいという気持ちがあるからです」(工藤さん)。
「災害現場で走らせるというのは、私たちの最終ゴールですが、メカサポは通常、週6日も活動するスケジュールの中で進めているので、どうせやるなら自分たちの満足するものをつくろうというのが私のモチベーションですね」(高水さん)。
大学の授業で学んだことをロボットづくりに活かせたり、ロボットづくりで学んだことを授業で活かせたり、ものづくりに対する面白さを実感する機会が多いと語る高水さん。
どんな困難な状況でも前に進む姿は、レスキューロボットも、メンバーたちも同じようです。

インタビューイメージ階段を登れない原因を調査中

マニピュレータ実験
マニピュレータ実験

『OD1』組み立て中
『OD1』組み立て中

『OD1』改良中
『OD1』改良中

インタビューイメージ