支援団体インタビュー

2018年度

神奈川大学 宇宙エレベータープロジェクト

KUSEP

インタビューイメージ

【活動内容】

神奈川大学宇宙エレベータープロジェクト(以下KUSEP)は、地上と宇宙間の新たな輸送機関として注目されている「宇宙エレベーター」の実現に向け、競技会出場および地域の中高生を対象とした交流会などを実施しています。

■神奈川大学宇宙エレベータープロジェクトHP http://space-ev.kanagawa-u.ac.jp/

【インタビューに答えてくれた方】(2019年11月現在)

清水 理紗子さん(神奈川大学経済学部 現代ビジネス学科 3年) ※ 写真前列右端
後藤 敬雄さん(神奈川大学大学院工学研究科、機械工学専攻 2年) ※ 写真後列左端

『ミスミ学生ものづくり支援』を
利用して

「ミスミさんは技術資料が魅力です。私たちが製作するクライマー(昇降機)は、学生がゼロから設計するために、豊富かつ詳細に記述されている技術資料がとても参考がなります。また仕様変更やトラブルなどで急きょ部品が必要になるときに、少ない個数の注文でも素早く届けてくださるので大変助かっています」と話すのは後藤さん。『学生ものづくり支援』ではクライマーやロボットといったすべての機体に共通した部品の発注に利用していただきました。
「クライマーの重要部品であるローラやプーリで使用する軸については、振れや偏心を起こさないよう精度の高いミスミ製を利用しています。ミスミさんの軸はとにかくバリエーションが豊富なので、まとめて発注できて効率的です。製作期間の短縮にもつながります」

インタビューイメージ

宇宙エレベーターと
KUSEPの活動

KUSEPが取り組む宇宙エレベーターとは、地上と高度3万6000キロの宇宙ステーションをケーブルで結んで行き来するエレベーターのことで、実現すればロケットに代わる大量輸送手段として期待されています。 KUSEPは、2009年にからはじまった活動で、宇宙エレベーター協会が主催する『宇宙エレベーターチャレンジ(SPEC)』に出場し、昇降機であるクライマーの技術向上に努めてきました。クライマー製作を通じて機械・電子工学に関連する専門的な内容を学び、卒業生や民間エンジニアの方との交流も盛んに行われています。
ところで部長の清水さんは経済学部生。工学の知識はなくても入会できるのでしょうか?
「神奈川大学生なら学部問わず1年生から大学院生まで誰でも参加できます。私も工学系に興味があって参加しました。

インタビューイメージ

機体製作はしていませんが、展示イベントなどの広報活動や運営業務を担当しています。文系でものづくりに関わる人が増えると“ものづくりの支え方”が変わってくると思います。宇宙エレベーターを知ってほしい、多くの人にSPECに参加してほしいという気持ちで活動しています」
『SPEC』は、最高で地上1200メートルほどに上昇させたバルーンからテザー(ケーブル)を垂らし、クライマーが駆け上るスピードなどを競うものです。

インタビューイメージ

『SPEC』は2019年から競技内容が変わり、『宇宙エレベーター クライマー・ロボティックス競技会(SPEC x ROC)』となって、クライマーの性能を評価する競技と宇宙エレベーター建設を想定したロボット競技が行われることになりました。クライマーはロボットを積んで100メートルまで上昇し、クライマーから射出信号を与えて上空から降下し、着地させます(今年度のプロジェクトではパラシュートを使用)。9月に行われた大会では、KUSEPチームはクライマー部門では3つの賞、ロボット部門は努力賞を受賞しました。

インタビューイメージ

高大連携・人材交流を活発に行う

KUSEPの活動が特徴的なのは、『SPEC』の他に『宇宙エレベーター実験機(SPIDER)チャレンジ企画』の後援をしていること。『SPIDER』は、市販ラジコンカーを基本ベースとした軽量クライマーの競技会でSPECとの違いは、主に高校生や中学生を対象にした活動であることです。
「『SPIDER』は、そもそも神奈川県と神奈川大学の共同事業として実施されていました。共同事業が終了した後も、KUSEPが単独で続けています。高校生に機体をつくってもらい、神奈川大学で競技会を開催しています。中高生に宇宙エレベーターに夢を持ってもらい、クライマー製作を通してものづくりに興味を持ってほしいと思っています」(清水さん)。

インタビューイメージ

実験工作教室
県内の中高生を対象に
実験工作教室を実施

SPIDERの試走会
神奈川大学23号館にて
SPIDERの試走会

貨物積載打ち上げ
SPEC×ROC大会での
貨物積載打ち上げの様子

「KUSEP-510」
3賞を受賞したクライマー
「KUSEP-510」

ものづくり人材の
裾野拡大に貢献

今後は、競技会において、高高度をスピーディーに駆け上がるクライマーの製作と過酷な環境でも安定して昇降したり作業できるロボットづくりの両方に挑戦することになると話す清水さんと後藤さん。しかし、毎回機体製作は大変です。強度計算を重ね、安全率も取っていても機体が壊れてしまうことも多々あるそうです。
「軸の径を大きくしたり、ベアリングを強いものにしたりと品質上の課題をチームのみんなで解決してきました。こうした良い機体を後輩に譲りたいと思いますし、機体だけでなくノウハウの伝承も大切で、過去の機体仕様や設計データ、過去の大会で生じた問題と対応などを次の世代にしっかり伝えていきます」(後藤さん)。
今後の活動について部長の清水さんにお聞きしました。
「SPECもSPIDERも、さらに競技人口を広げ、宇宙エレベーターのことをもっと知ってほしいです。東京の私立高校に交渉し、宇宙エレベーターの展示会を開催させてもらいました。高校生の発想は豊かです。ものづくりに興味を持ち、工学系の学校に進学する人が増えるといいなと思います」
夢としか思えなかった宇宙エレベーターは、確実な技術発展と、多くの若い人の挑戦で実現可能なものになろうとしています。

インタビューイメージ