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第42回大会 ミスミ賞

蔡 昇恩サイ・ショウオンさん/Taiwan No.1

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日本の選手たちと台湾の競技会で試合をしてみたいです

「二足歩行ロボット教育の分野で、世界的に有名なファウンダーになりたい」と力強く話してくれた蔡 昇恩さん。実は高校生の頃からROBO-ONEに出場していたという蔡さんにとって、『Taiwan No.1』や二足歩行ロボットはどんな存在だったのか。また、台湾や日本のロボット業界の未来についてどのように考えているのか。その想いを熱く語ってくれました。

ROBO-ONEの魅力は出場しているロボットの多様性

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。

蔡さん:ありがとうございます。今回初めてミスミ賞をいただくことができて、とても感謝しています。

ROBO-ONEを知ったきっかけと、出場を決めたきっかけをそれぞれ教えてください。

蔡さん:ROBO-ONEは、日本留学の経験があり、ロボットに関する経験や知識を教えてくれたROBOFACTORY*1の胡先生を通じて知りました。出場を決めた最大の理由は、競技が楽しく、日本に行くこともできるからです。

Taiwan No.1

  • Concept

    Try the all you can

  • Weight

    3300g

  • Height

    50cm

  • Actuators

    サーボモーター21個

ロボット作りを始めるきっかけとキャリアを教えてください。

蔡さん:ロボット作りを始めるきっかけは、初めて二足歩行ロボットの格闘競技を見て、ロボットに強く惹かれたことでした。実際に製作を始めたのは高校生になってからで、最初は1人でロボットを作って経験を積んでいました。その後、2016年に選手として初めてROBO-ONEに参加した際には、予選で第6位の成績を収めることができました。今では台湾で二足歩行ロボットの教育に関わる会社を経営しています。製作や大会を通じて3Dモデリング、プログラミング、応用などに関する経験や知識を学校で学ぶよりも短時間で身につけることができましたし、更に多くのひらめきやノウハウを得ることができました。ロボットのおかげで人生が変わりましたね。

台湾では二足歩行ロボットの競技会はどれくらい行われていますか?また、ROBO-ONEは知られていますか?

蔡さん:台湾では約2カ月ごとに大きな競技会が行われています。格闘だけではなく、バスケットボールやボウリング、3on3サッカーなどの競技もあります。ROBO-ONEは台湾において国際的な大会ですし、とてもチャレンジのしがいがある競技会だと思います。

ROBO-ONEの魅力はどこにありますか?

蔡さん:出場しているロボットの多様性だと思います。一度にこれほど多くのロボットを見ることができる機会は、台湾ではあまりありません。私たちもバラエティに富んだロボットづくりを目標にしており、自分で設計したロボットを製作できるようになってきました。

蔡さんのチームウェアには「ROBOT COMBAT LEAGUE」という大会のロゴがありましたが、この大会と「ROBO-ONE」の違いは何ですか?

蔡さん:大会規則が大きく異なります。「ROBO-ONE」ではシングルイリミネーション(トーナメント)方式で、一度負けるとその場で脱落します。「ROBOT COMBAT LEAGUE」ではその場でチームを結成して、優勝するために他のチームと協力し合う必要があります。

蔡 昇恩(サイ・ショウオン)さん

「彼を知り己を知れば百戦殆からず」を実践

『Taiwan No.1』というロボット名には、どんな由来があるのでしょうか?

蔡さん:ロボット製作を始めた頃から持っていた、台湾一になりたいという気持ちを込めています。そして、台湾のROBO-ONEで優勝することで、その夢を叶えることができました。私が歩んできた人生を表現するものだと思っています。

ご自身のチームの強みを教えてください。

蔡さん:どんな強い相手にも屈しない意志ですね。次は必ず『Typerion』を打ち破りたいです!

過去のROBO-ONEで蔡さんが製作されたロボットは手が大きく、足を高く上げて歩く、パワフルなイメージの機体でした。『Taiwan No.1』はスリムで俊敏なロボットのように見えます。どんなコンセプトの変化があったのでしょうか?

蔡さん:これまでのROBO-ONEでは多くの制限があり、自分の思い通りにロボットを設計すると、予選通過が難しかったのですが、今年はパフォーマンス形式で順位を決める形式に変わり、私たちのチームにとって設計の自由度が広がりました。準備していたBGMは使用できませんでしたが、高い評価をいただきました。審判の方にも感謝しています。

ファイト部門での非常に強い左右のフックパンチが印象的でした。

蔡さん:ROBO-ONEでは4kg近くのロボットが使われているため、攻撃力が強くなければ倒すことは困難です。バトル競技において防御するだけでは勝つのは不可能なので、設計する時から攻撃する動きを考えて工夫しました。

『Taiwan No.1』が優れた成績を残すことができた理由はどこだと思いますか?

蔡さん:大会前には、YouTubeで対戦相手がROBO-ONEなどの格闘競技で戦っている動画を確認し、相手の反応や速度、そして攻撃が有効な距離をじっくり観察していることが理由の1つかもしれません。「彼を知り己を知れば百戦殆からず」ですね。

ロボットの部品加工や板金加工はどうされていますか?

蔡さん:CNCマシン1台でC-FRPを加工しています。台湾ではアルミは少量生産だと非常に値が張るため、今回はC-FRPと3Dプリンターをメインに作りました。ただ、大量生産するのであればコストが抑えられるので、私が設計して商品化したロボットではアルミの曲げ加工部品を使用しています。

ROBO-ONEに出場するまでにミスミのことを知る機会はありましたか?

蔡さん:はい。大学時代、私たちが使っていた金具やユニフレームは全てミスミのものでした。可能であれば、台湾のロボットビルダーにもアルミ加工やその費用など、技術的な支援をいただけると嬉しいですね。

将来的には台湾と日本の選手の交流会を実現したい

久々のROBO-ONEリアル大会はいかがでしたか?

蔡さん:やっとCovid-19から日常を取り戻すことができたと思いました。ROBO-ONEには2016年から参加していますが、ルールの細部まで理解できないと勝つことが難しいので、今年は万全の体制で臨みました。

蔡さんはリモート大会にも参加されていましたね。

蔡さん:実際に会ってコミュニケーションを取ることはとても大事です。もし可能であれば、オフライン交流会の機会を設けて、練習試合をしたり、互いに交流したりできると嬉しいですね。私たちはYouTubeを通して、日本のロボットビルダーたちのテクニックを観察し、改善するようにしています。日本ではたくさんの人が二足歩行ロボットに関わっていて、とても羨ましいですね。私もそれに負けないよう、日々努力しています。

世の中ではどんどん自動化が進んでいますが、ロボットの格闘競技大会においては人間による手動操縦こそが真髄となるのではないかと考えています。将来、より多くの日本の選手たちに台湾で行われる大会に参加していただけるようになると嬉しいですね。

ロボット製作をしていて良かったこと、苦しかったことをそれぞれ教えてください。

蔡さん:ロボットを完成させるたび、大きな達成感を得られることがロボット製作の良いところだと思います。製作から競技まで全てを自分の手で行っていることは、私のモチベーションになっています。大変なところは資金調達ですね。ゆくゆくはスポンサーやサポーターが必要になるかもしれません。

ロボット製作を通じて、今後成し遂げたいことはありますか?

蔡さん:台湾で二足歩行ロボットの教育と普及に関わりたいと思っています。中期目標としては、100人のチームを率いて日本のチームと対戦できればと思っています。

蔡さん自身は将来的にはROBO-ONEでどんなロボットを作りたいですか?

蔡さん:ROBO-ONEで優勝できるロボットを作りたいです!

  • *1 台湾のロボット教室

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