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第42回大会 ミスミ賞

飛騨神岡高校(ヒダカミロボ部)/NeutrinoーPeace

  • 倉住 夏音(くらずみ なお)さん
  • 中島 聖音(なかしま さとね)さん
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「部活だけではできないことが、たくさん経験できた大会でした」

ブルー/イエローのツートーンカラーが印象的な『NeutrinoーPeace』。先輩から受け継いだ機体は2人の夢を乗せてファイト部門ベスト8まで進出しました。製作した倉住さん・中島さんの熱い想いはどんなところに込められていたのでしょうか。

頑張る姿に憧れて、ロボ部へ

『NeutrinoーPeace』製作での担当分けはありましたか?

中島さん:私はパフォーマンス部門でのパフォーマンス内容を考えました。“幸せなら手をたたこう”の動きでパフォーマンスをしたのですが、それをやろうと思ったきっかけが、私自身の将来の夢が保育士で、子供とロボットが関わる機会を増やせたらと考えているからです。

倉住さんは操縦者ですか?

倉住さん:そうですね。パフォーマンス内容を提案してもらって、それを元に2人でディスカッションしてどんな動きをするか決めた上で、プログラミングなどのモーション作りをメインで担当しました。

NeutrinoーPeace

  • Concept

    世界に平和をもたらすロボット

  • Weight

    3500g

  • Height

    55cm

  • Actuators

    サーボモーター18個

ロボット作りを始めたきっかけを教えてください。

倉住さん:入学前から高校紹介などでロボット部があることは知っていました。それまで全く技術的な知識はなかったんですけど、ロボ部の部活見学で実際に先輩方がプログラミングしている姿だとか、自分で操作してロボットを動かしているのを見て、すごく面白そうだなって思ったんです。自分が今まで出会ってこなかった分野で、新しいことにも挑戦してみたいなという気持ちから始めました。

中島さん:去年のROBO-ONEに姉が出場して、手話のパフォーマンスをしたのがきっかけです*1。ロボットがファイトをしているところは見たことがあったんですが、パフォーマンスで人の役に立つことをしようという考え方が、すごく素敵だなと思ったんです。私は1年生から文芸部に入っていたんですが、倉住さんが2年生で女子1人なのにロボ部で頑張っているのもかっこいいと思っていました。もともと仲が良かったのもあって、2人でロボットを作ることができたら楽しいかなということも理由になって、2年生からはロボ部も兼部しています。

ロボ部はいま何人の部員がいらっしゃるんですか?

中島さん:3年生がこの夏に引退したので、2年生が6人と、1年生が1人の合計7名で活動しています。ですから来春はたくさんの人にロボ部に入ってほしい気持ちがありますし、できれば女の子も入ってほしいですね。いまは私たち2人だけなので!

左から
中島 聖音(なかしま さとね)さん
倉住 夏音(くらずみ なお)さん

会場の皆さんと一緒に手を叩けたのがとても嬉しかった

『NeutrinoーPeace』は前回大会にも出場してパフォーマンス部門2位に入っていますが、先輩から引き継いだ機体なのでしょうか?

倉住さん:『NeutrinoーPeace』は、昨年私と3年生の先輩が一緒に製作して、前大会のパフォーマンスも先輩と共同でプログラムした機体です。先輩は卒業されたので、私が引き続き担当しています。ヒザの外側に見えている星は、実は『NeutrinoーPeace』を一緒に作った先輩が「光星」さんで、ロボットの名前も宇宙に関連することから入れたワンポイントなんです。3Dプリンターで浮き彫りにして、CFRP*2を切り抜いた板をはめ込んでいます。先輩の思い出がそこに残っている形ですね。

『NeutrinoーPeace』製作で楽しかったこと、苦しかったことはありますか?

倉住さん:楽しかったことと苦しかったことが同じ出来事かもしれません。今回私がメインでプログラミングしたんですが、いろいろ試行錯誤していく中で自分が思っていたのと違う動きになることや、動かなくなってしまうこともありました。思いもよらないことがいっぱい起こるのがつらかったですし、うまくいった瞬間は本当に嬉しくて。今回特にパフォーマンスを通しでやってみてうまくいった時は本当に嬉しかったです。自分でいろいろ試行錯誤して成果が出ることが、すごく楽しいと感じる瞬間でした。

中島さん:『NeutrinoーPeace』のパフォーマンス、“幸せなら手をたたこう”がかわいくできた時は嬉しいなと思いました。でも、それから本番に向けて秒数などを細かく詰めて作っていくうちに、初めて苦しさも実感しました。夏休みに1度パソコンの電源が落ちてしまって、プログラムのデータが消えてしまった時は本当につらかったです。それからまた2人で話し合って本当にいいものができたので、そこを乗り越えられて嬉しかったです。

細かく調整した動きはどの部分になるのでしょうか?

倉住さん::“幸せなら手をたたこう”で手を叩いたり足を鳴らしたりする動きがあるんですが、リズムよく叩くためにプログラムを色々試してみたのに、いくら作ってもぎこちない動きになってしまうところが多々ありました。最終的に思ったような動きができるようになるまで結構時間がかかってしまったので、そこが一番大変で力を入れたところではあります。基本的な足を曲げる動作や腕を振る動作は楽に作ることができたので、手を動かす速さとタイミングを合わせるのに、プログラムにかけた時間の半分以上を使っていたと思います。ラストは本来、手を叩いて足を叩くという連続の動きなのですが、手と足をそれぞれ叩くところでもかなり時間をかけていたので、さらに連続した動きのプログラムは結構難しいよねと2人で話し合って。最後は結局…

中島さん:…ハートのポーズで終わったよね。

倉住さん:もう無理やり終わらせたみたいな感じになったんですが(笑)。

中島さん:最終的にかわいい形で終わらせられたのでOKです(笑)。

中島さんがパフォーマンスでこだわったのはどの部分ですか?

中島さん:『NeutrinoーPeace』という名前の通り、平和や幸せを大きなテーマとして作ったので、パフォーマンスの時にとるハートのポーズのような、見ている人に幸せになっていただけるような、会場の人も一緒にできるパフォーマンスを考えていました。会場の皆さんが手を叩く動きを一緒にやってくださった時は非常に嬉しかったです。また、保育士という私の夢にも関係するんですが、ロボットが急に動き出すと子供を怖がらせてしまうかもしれないので、可愛く優しい動きができるように意識したところですね。

それは中島さんの実体験から来る考え方なんですか?

中島さん:はい。今年、学校として保育園の子どもたちと交流する機会があったんです。そこで「不安な表情を出さないように」や「かがんで子どもたちと目線の高さを合わせる」といったことを実践する機会があって、そういった部分を意識して取り入れながら考えていました。

今回、ファイト部門ではベスト8まで進出しましたが、練習もされたんでしょうか?

倉住さん:パフォーマンスの方に力を入れていたので、実はファイトの練習はあまりしていなかったんです。自分でも驚いていて、気づいたら1勝してる。2勝してる。あれ? ベスト8みたいな感じだったので、もうちょっと練習しておけばもっと活躍できたのかなと。負けた対戦相手は『クロムキッド』*3で、その時に「次に倒す目標は『クロムキッド』にしよう」と部内で話をするきっかけになりました。ヒダカミロボ部は今までパフォーマンスのほうに力を入れていたんですけど、今大会はファイトの結果も良かったので、次からはファイトの方にもちょっと力を入れて練習していきたいなと思いました。

かわいいいロボットが増えれば女子も増えるかも

次のROBO-ONEは『NeutrinoーPeace』で出場されるんですか?

倉住さん:1年生の頃に初めて加工をして、プログラミングをした思い入れのある機体なので、できれば私は次も『NeutrinoーPeace』と一緒に戦いたいなという気持ちはあります。

中島さんもそのままペアで次を目指す形でしょうか?

中島さん:そうですね。私は入部してからずっと倉住さんと一緒に『NeutrinoーPeace』を触っているので、最後までこのペアで頑張りたいなって思っています。

こんなことができたらいいな、と思われている機能はありますか?

倉住さん:今回は『NeutrinoーPeace』だけでなくロボ部の他のロボットも含めて福祉や保育に繋げられそうなパフォーマンスをしたので、まだ具体的にはないですが、新しい技術や機能を搭載して、もっと実用に近づけられるようなロボットを来年のROBO-ONEで見せられるようにしたいです。

ロボット製作の経験を通じて、今後ご自身に活かせそうなことはありますか?

倉住さん:今のところ進路はものづくりと少し違う分野の勉強をする予定でいるのですが、今ロボットはいろいろな分野で使われていると思うので、自分の学習する分野とつなげていきたいなとは思っています。あとはロボットを作る中で、諦めずに試行錯誤して繰り返していけばきっと結果が残るということをとても実感しました。『NeutrinoーPeace』は先輩がやっていることを見て学んできたつもりだったんですが、実際に作ってみるとうまくいかないことが多くて。先生や先輩方から色々な知識で助けていただきながら自分なりに手を動かしました。その経験はこれから進学して研究する時にも、諦めずに最後まで取り組むことに繋げられるかなと思っています。

中島さん:私はパフォーマンスのきっかけにもなったように保育士になりたいと考えているので、情報化が進む中で子供達がロボットを怖がるのではなくて一緒に遊べる、学べるんだよということを、正しい知識で子供達に教えられるような先生になれたらなと思います。ものづくりを学ばせていただく中で「これはできないだろうな」と思ったことでも、まずはやってみる。子供に教えていく立場になるときに、「一緒にやってみようよ」という考え方が大事になってくると思うので、そういうところにも活かしていけたらなと思います。

ROBO-ONEという大会にはどんな魅力があると思いますか?

倉住さん:普段部内でしかロボットを触っていないのですが、大会に参加すると技術者の方や、同年代でロボットを製作されている方と交流する場があるのがすごく魅力的だなと思っています。会場にいた方は皆さん優しくお話してくださり、いろいろなことを教えてくださいました。憧れの存在だったビスコさん*4とお話しして、機体にどんな工夫をされているのか聞くことができて良かったです。

中島さん:本当にいろんな方と交流ができることが魅力だなと思っています。2人でいる時に海外の方が話しかけてくださって、つたない英語になっちゃったんですけど頑張って返事をしたら笑ってくださったり、普段部活をやっているだけではできないことがたくさん経験できる場だと思いました。本当に普段から皆さんが私たちのことを気にかけてくださっているので、感謝の気持ちを忘れずに次の大会も出たいなと思います。

どうしたらものづくりに興味を持ってもらえるか、同世代に伝えたい思いやアイデアはありますか?

倉住さん:私たちもやっぱり女子なので、かわいいものが好きです。人形みたいな可愛いロボットでもいいんですけど、動物の顔を付けてかわいくすると、ロボットの魅力がもっと伝わりやすいのかなと思います。あとはビスコさんもやってらっしゃいますが、着せ替えできるロボットのような楽しみ方があると、女の子も「ロボットを作ってみたいな」とか「ロボットもちょっと知りたいな」と思ってくれるのかもしれません。

  • *1 第41回ミスミ賞『KAGRA-菫』
  • *2 炭素繊維で強化された樹脂素材。一般に流通している板素材の中では軽量・高強度だが、高価であり、加工も難しい。カーボンファイバー。
  • *3 第11回ROBO-ONE軽量級優勝。前大会ファイト部門準優勝、今大会ファイト部門3位。
  • *4 第37回ROBO-ONE優勝者。今大会パフォーマンス部門準優勝。

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