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第39回大会 ミスミ賞

SERENA DIOS 神戸市立科学技術高等学校

  • ハドソン大加(はどそん たか)さん
  • 真鍋知久(まなべ ともひさ)さん
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後輩へのノウハウ継承のためにリモート大会へ参戦

先輩と後輩がタッグを組んで参戦する伝統を持つ、神戸市立科学技術高等学校。部活動の制限とリモート大会が続く中、大会参加のノウハウを継承するために参戦した今大会では、ブランクを感じさせない好成績を収めました。

ミスミ賞の受賞おめでとうございます。

真鍋さん&ハドソンさん:ありがとうございます。

『SERENA DIOS』はお2人で制作されたのでしょうか?

ハドソンさん:真鍋は1年生で操縦者、私は3年生で制作者のハドソンです。

SERENA DIOS

  • Concept

    セレナで勝利していく

  • Weight

    2950g

  • Height

    46.5cm

  • Axis

    サーボモーター21個

ROBO-ONEへの参加は初めてですか?

真鍋さん:僕は初めてです。

ハドソンさん:僕は1年生の終わりに1度参加しています。リモート大会はこれまで学校全体で参加していなかったので、今回が初体験になりました。

ロボットの製作経験はいかがですか?

ハドソンさん:入学までは製作するどころか、ロボットに触ること自体が初めてでした。進路で迷っていた時にちょうど科技高の文化祭がありまして、そこで機械工作部が製作していたロボットに触れたり、当時の部長さんからロボットについての話を聞いて入部しました。

真鍋さん:小学3年生くらいからプラモデルなどを作っていまして、小学5年生くらいからはロボット教室に通い続けています。高校でもモノづくりがしたいと考えて調べている中で機械工作部の紹介動画を見つけ、入学しました。

お2人とも、ロボットが入学のきっかけになったわけですね。今回のリモート大会初参加にも何かきっかけがあるんでしょうか?

ハドソンさん:対面での大会は会場の雰囲気であったり、そこでしか経験できない緊張感のような学びがありましたが、リモートではそれが経験しにくいこともあって、学校として参加していませんでした。しかし、今回のROBO-ONEに参加せずに僕たちの世代が卒業すると、現役生に大会経験者がいなくなってしまいます。今後大会が復活した時にやるべきことがわからなくなるのは困るので、参加することになりました。

先輩から後輩へのノウハウ継承という面が大きかったわけですね。

ハドソンさん:ロボットのデータや設計図の引き方については、パソコンにデータが残りますが、実際に大会に出ての色々は出場経験者にしか分かりません。ノウハウの継承は、部の伝統として行っていることでもあります。自分自身は3年生ということもあり、次の大会に選手として参加することは難しいので、技術を教えたり、後輩の学びに託していきたいと考えています。

ハドソン大加さん、真鍋知久さん

先輩の機体を受け継いでカスタマイズ

『SERENA DIOS』のエントリーIDはかなり若い番号ですが、先輩の機体そのものを引き継がれているのか、名前を引き継がれている形なのでしょうか?

ハドソンさん:先輩の機体を引き継いでいる形です。途中抜けている時期はあるかもしれませんが、これまで4~5人が受け継いできた機体になります。僕自身も真鍋のように先輩について『SERENA DIOS』に触れて、そこから「ここを良くしていきたい」「ここを変えていきたい」と考えるようになり、自分で設計・改良した形で出場しています。

以前の『SERENA DIOS』からハドソンさんが変えたのは、どの部分ですか?

ハドソンさん:腕の先端です。以前はパンチを当てることをメインの攻撃として考えていた機体だったので、もっと直線的でシャープな形をしていました。自分で使っていく中で「相手に当てづらいな」という感覚もあり、相手の胴体の下から撫でるように攻撃するスタイルに変更したことから、より曲線的な先端にしたほうが戦いやすいと考え、長さなども含めて設計し直しました。

胴体や足は変えていないのでしょうか?

ハドソンさん:胴体の部分は、ほぼそのまま先輩から引き継いでいます。足は軸受にベアリングを入れています。部内では『SERENA DIOS 』だけですが、ベアリングを使うことで軸の動きが一定になり、メンテナンスや調整に割く時間を減らすことができるところに目をつけて組み込みました。重量が少し増える分は、足全体に肉抜きを多めに入れて対策しています。

板材に縞模様が見えますが、CFRP材(*1)なども使われていますか?

ハドソンさん:いえ、CFRP柄のシールをアルミ材に貼っています。この部分の板厚は1mmと薄めですが、今までの部活動での経験から、厚さが必要な部位や逆に薄くても問題のない部位はわかってきたので、ところどころ使用する板の厚みを変えています。

メンテナンスも意識されているんですね。

ハドソンさん:特にサーボモーターは引き継いで長く使用しているものが多いので、メンテナンスには気を遣っています。サーボモーターの内部ギヤを洗浄する際には、ミスミさんのパーツクリーナーをたくさん使用しています。

『SERENA DIOS』の頭部も特徴的ですね。

ハドソンさん:先ほどお話しした部分ごとのシールのように、外装には力を入れています。肉抜きした足の中にはシートを挟み込んでいて、外側からは光っているように見えます。頭は何個かの部品を別々に3Dプリンターで出力して組み合わせています。CAD上と現物にした時に印象が変わってくるものがあったので、実物でカッコいいかなと思った形に作り替えたりしました。やはり実際に物を起こして形にした時のほうが、質感がしっかり感じられますね。

「1ラウンドごとに区切られるリモート大会は難しく感じました」

真鍋さんとしては、初めての大会での操縦はいかがでしたか?

真鍋さん:予選ではだいたい意図していたように動かせていたと思います。決勝トーナメントの最初の試合で「巴投げ」をかけようとしたときに、技の途中で故障して急に力が抜けてしまい、負けてしまったのは悔しかったです。

大会に向けて真鍋さんはどれくらい操縦練習されたんですか?

真鍋さん:1か月ぐらいです。緊急事態宣言の影響もあって、部活動が毎日できなかったですし、大会用のモーションもなかなか完成しませんでした。

リモート大会を体験して、難しかった面はありますか?

真鍋さん:準備期間が短かったのもありますが、対面での試合のように勢いに乗って一気に3ダウンを連取できるわけではなく、ラウンドごとに時間内で技を決めなければならないこと、失敗するとリカバーする時間が短いことは難しく感じました。

ハドソンさん:操縦は真鍋ですが、試合中は私もすぐ横について、アドバイスを送っていました。

次の大会に向けて、こうしていきたいという目標はありますか?

真鍋さん:次の大会では直に戦うことができそうなので、出足が速くて相手を倒しやすい「前転キック」などを使って勝ち進んでいきたいです。

ダミーロボット相手のモーション作りは、対面での対戦大会のモーション作りと違った点はありましたか?

ハドソンさん:相手がロボットであれば、機体のバランスや重心を考えて攻撃を当てる位置を調整することもあるのですが、ダミーロボットは重心が非常に低く、重さも一定なので、その重心をどう利用して倒すかを考えて作りました。予選では良い結果を残せましたが、うまくできなかった前転のような部分はもっと改善させて、自分たちがうまくできたモーションは部内で共有して、部員全員が予選を通ることができるようなモーションづくりをしていきたいと考えています。

ちなみにハドソンさんご自身は、卒業後にロボット製作を続けられるんでしょうか?

ハドソンさん:就職することが決まったので、新たな場所でまだまだロボットを触っていきたいと考えています。新しいロボットを作って、ROBO-ONEのリングでこれからは機械工作部の後輩と戦っていきたいですね。

『SERENA DIOS』の今後にメッセージを。

ハドソンさん:これから行われる大会は4kgまで重さが拡大すると思うので、『SERENA DIOS』は大きく変わっていくと考えています。自分たちが先輩から受け継いで使っていた『SERENA DIOS』の姿も知っていてほしいという気持ちもありますが、そうなった時には、新しい『SERENA DIOS』として後輩に使ってほしいです。

  • *1炭素繊維で強化された樹脂素材。一般に流通している板素材の中では軽量・高強度だが、高価であり、加工も難しい。カーボンファイバー。

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