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第39回大会 ミスミ賞

シンプルファイター zeno

  • 近藤隆路(こんどう たかみち)さん
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「自分でできる精度以上のものをつくってくれるmeviyだから制作できました」

ROBO-ONE優勝経験もある近藤さんが、家族との時間を確保しながらこだわりのロボットを自作する決定打として選んだのがミスミの「meviy」。利用することで、自加工以上のクオリティで部品が製作できたそうです。

きっかけは生まれた子供と遊びたい気持ち

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。

近藤さん:ありがとうございます。

近藤さんのロボット歴を教えていただけますか?

近藤さん:ロボットを作り始めたのは大学1年生からで、2002年からになります。ROBO-ONEの世界に入ったのが 2005年です。第4回ROBO-ONE J-class*1にサーボモーター4つだけの『シンプルファイター』で出場して、予選は通過しましたが、1回戦負けでした。 また2016年に、株式会社シンプルファイターを設立し、ロボットに関する研究を行っています。

シンプルファイター

  • Concept

    カッコいいと思う形状の
    ロボット

  • Weight

    2990g

  • Height

    55cm

  • Axis

    サーボモーター20個

そこからROBO-ONEに参加を続けていらっしゃるんですね。

近藤さん:2009年か2010年に初めて3kg級を作って参加しました。毎回参加ではないですが、10年以上参加していて、2014年には優勝もさせていただいています。

近藤隆路さん

今回の機体はミスミさんの「meviy(メヴィー)」を利用して作られたそうですが、「meviy」はどれくらい前から使われているんですか?

近藤さん:実は今回が初めてなんです。ずっとROBO-ONEの会場で「meviy」の宣伝動画を目にしていて気になってはいたのですが、2020年の11月にロボット関連の展示会にミスミさんのブースがありまして、そこで丁寧に教えていただきました。その場で実際に図面をアップロードして費用が出てくる様子を見させていただいて、「あ、これはいいな」と。

これまでロボットを制作されていた環境はどういうものだったんでしょうか。

近藤さん:自宅ないしは職場のNCフライスを使用していました。自宅の工作機械は処分してしまったので、今は職場にしかありませんね。

今回制作方法を変えるに至ったきっかけは何だったんでしょうか。

近藤さん:最大のきっかけはですね、子供が生まれて時間が無くなりまして。これまでロボットを1台作ろうと思ったら、勤務後に夜、職場で作業するのを1か月くらい続けなければならなかったんです。そんなことをしていたら子供と遊べませんし、下手すると家族の大問題になってしまいます(笑)。子供と遊ぶ時間、家族との時間を確保したうえで理想のロボットを作るには、「meviy」の利用は必然でした。

自分で制作されていた方が外注するとなると、制作スピードなどで不満があったりはしませんでしたか?

近藤さん:確か部品を火曜日に注文したら、金曜日か土曜日に届いたんですよ。3日、4日くらいで届くんですね。

設計をして、火曜に発注をし、部品が届くまでの間はお子さんと遊び、週末に組み立てる、と。そういう日程で1週間が動いていたわけですか。

近藤さん:土日もずっと作業していたわけではなくて、間に合わずに木曜や金曜に発注した時は、土日はもう諦めて子どもと遊んでいました。

「自分がかっこいいと思う形状を詰め込みました」

今回のシンプルファイターは、どういうロボットにしたいと思って作られたんでしょうか?

近藤さん:私は「ROBO-ONE Light」に出場している機体の形が気に入っているんです。これまで「ROBO-ONE」に出場していた機体は、バックドロップされても壊れない、バトルに特化した勝てる機体だったんですが、今回は直接のバトルもないですし、床運動という新たな課題も出てきたので、バトルでの強化部分を少し減らして、自分の好きなことをやろうかなと考えました。腕の細さとプロポーション部分のこだわりですとか、絶対入れたかった肩の“角”とかですね。この“角”も贅沢に重量を割いて入れました。自分がかっこいいと思う形状を、誰になんと言われてもやろう、と考えて作った機体です。

そのこだわりは十分反映することができたんでしょうか。

近藤さん:本番のロボット部品を頼む前に、3月くらいから試作部品をmeviyで注文させて頂いていて、作りたい部品が確実に作れるのはわかっていました。むしろ自分で作る精度以上のものを「meviy」では作ってくれるんです。例えば足の部品ではコの字型の曲げが上下2方向になっていますが、これを個人レベルで曲げようと思うと、とても大変です。あとは10°の曲げを2回付けている部品もあります。今回は遠慮なく、自分の環境では絶対できない、大変で絶対やりたくない曲げ加工を盛り込めました。

ROBO-ONE出場機体の中では珍しいステンレス素材のフレームも作られていますね。

近藤さん:私の作る部品ではステンレスのほうが安価だったので選びましたが、強度を確保することが難しかったです。同じ厚みならステンレスのほうが曲がりにくいのですが、ROBO-ONEで一般的なアルミと比較すると、どうしても重くなってしまいます。重量制限にかからないよう厚みを薄くすると断面積が小さくなり、ソフトでの計算上でも強度が弱くなりがちでしたから、強度と重量のバランスを取ることに苦労しました。

ステンレス材を利用するためにかなり工夫された機体なのですね。しかしその結果、完成直後は重量が3kgを超えてしまったとお聞きしました。

近藤さん:CAD上ではステンレス材で重量計算を行っていたんですが、ネジとサーボホーン、配線の重量をきちんと計算せずに「多分大丈夫だな」としてしまったのが失敗でした。

プロポーションを維持して強いロボットを目指す

“ヘッドバッド”モーションにもチャレンジされていましたね。

近藤さん::腰部分にピッチ軸*2を自分としては初めて入れました。足のピッチ軸にもスピードがあるサーボモーターを使用したので、ジャンプが絶対やりやすいのはわかっていまして、絶対入れようと考えていました。

ちなみにこれから先、近藤さん自身がこういうロボット作っていきたい、といったもうちょっと未来まで 見通したものはありますか

近藤さん:直近のROBO-ONEのことに意識が取られてしまっていて、5年後といった先のビジョンはあんまり考えられていないですね。もともと中学校、高校と吹奏楽部だったんで、格闘できる体ではありませんが、格闘技には興味がありました。ROBO-ONEであればロボットを使って格闘できるというのが嬉しくて、その気持ちで続けています。たとえ年を取って体が動かなくなっても続けられますし。次のROBO-ONEでは機体重量を4kgまで増やせるので、また「meviy」のステンレスで作って、色々強いモーターを積むような4kg専用ロボットを設計しようと考えています。重さにも余裕があるので、現在のプロポーションも踏襲したうえで、もっと丈夫にしたいですね。

  • *1 2006年まで開催された、現在の「ROBO-ONE Light」に似た軽量級の大会。家族で参加するとポイントが加算されるルールがあり、親子で競技に臨むチームも多かった。
  • *2 ロボットに正対した際、前後に可動する軸。

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