インタビュー
第37回大会 ミスミ賞
二足歩行ロボットだけでなく、ロボットの世界で広く知られる「ロボット好き」の内海さんご夫妻。操縦専門の香さんと、設計・制作・メンテナンスを引き受ける宏さんのお2人に『ガルー』のコンセプトをお聞きするうちに、ロボットを育て上げる二人三脚の光景が浮かび上がってきました。
ミスミ賞の受賞おめでとうございます。
香さん: ありがとうございます。選ばれるとは思っていなかったので、本当に驚きました。
ガルー
Concept
巨大な敵に立ち向かう勇士
Weight
2940g
Height
38cm
Axis
サーボモーター21個
強豪として有名なお2人ですが、ROBO-ONEにはいつから参加されているんですか?
香さん:2007年9月の第12回の高松大会ですね。『クロムキッド』*1の賞金で、『ガルー』が誕生したんです。その大会で初優勝しました。
内海 宏さん、内海 香さん
初出場初優勝はすごいですね。
宏さん:当時は秋葉原に「ROBOSPOT」*2がありまして、そこでサッカー競技をやったりしてロボットがスピーディーに動けるようになったのと、ROBO-ONE GP*3に出ているような選手といろいろお話をして、アドバイスもたくさんいただきました。
香さん:最初はKHR-1*4を購入してROBO-ONEにも出ていたんですが、予選で落ちていたんです。ROBO-ONE以外の大会も今より多かったので、どんどん参加して経験を積んでいきました。
お2人とも、昔からロボットなど機械に興味があったんですか?
香さん:最初はAIBOを購入したのがきっかけで、それからいろんなイベントに2人でロボットを見に行っていました。たまたま別のロボットを見に行った日本科学未来館でROBO-ONEを見かけて、しばらく間があいてからKHRを購入するという流れでした。興味を持ったのは大人になってからですね。
宏さん:私は中学の時は工芸部という、机やテーブルなどの家具を作る部活だったんです。そこからモノ作りが好きになって、建築とかのほうに興味が出てきて、建築学科に進みました。そのため元々は電子とか機械系ではないんです。
今の『ガルー』は何代目くらいなんですか?
香さん:だいたい大会ごとに何かしらの部品は変わってるんですよ。家からは段ボールひと箱分くらいの、昔のガルーの部品がいっぱい出てきます(笑)。
宏さん:大きくなったり小さくなったり、途中で足の構造も大きく変えて…大きなアップデートで6代目くらいだと思います。機体自体は組み替えているので一番大きいものしか残っていませんけど。
『ガルー』の設計コンセプトはどういったものなんでしょうか?
香さん:今主流の足構造で、高い位置からパンチで倒す…というのではなくて、ひたすら足を掴みたい。なるべく低めの機体で、相手の裏をかくような、そういう攻撃スタイルの設計コンセプトを持つ機体です。
宏さん:機体の剛性というか、壊れないようにというところは一番気を遣っています。あとは組み立てやメンテナンスが簡単にできるようにも作っています。サーボがすぐ交換できるようにとか。胴体の軸がすぐ外せるようにとかですね。
なぜメンテナンス性が高い機体を目指されるんですか
宏さん:以前は大会直前に足回りのサーボを全部取り外して分解し、中のギヤを交換してたんです。今はギヤも丈夫になったのであまりしていませんが、大会中でも試合中にギヤが渋くなると交換したいなと思うときもあります。そういった場合にメンテナンス性が高い機体は素早く調整ができて便利ですから。
香さん:昔、本当に大会中にロボットを分解した事があったんです。その時は構造が同じ兄弟機の『クロムキッド』と足ごと取り替えました。*5
今回はリモート大会でしたが、何か特別なポイントはありましたか?
宏さん:今回はロボットとの対戦形式ではなかったので、相手の攻撃を受け流す関節構造をなくしたり、防御用のセンサーを切ったりしました。普段のバトルで遠くに攻撃するために肩幅が広いままだったので、横向きのハイキックがやりにくく、前向きのキックを出すなどの工夫をしました。
香さんはまったくロボットは作らないんですか。
香さん:どんなモーションがバトルで勝てるか、といったアドバイスは出します。形に関しては、基本、任せてますので当日知ることもあります。今回のリモート大会も当日にボタン配置とモーションを教えてもらったんですよ(笑)。
宏さん:モーションが当日にできたんでどうしようもなかったです。今回は(Lightの)KHRやROBO-ONE剣道もルールが特殊だったので、いろいろ時間が必要でした。(香さんは)作りはしませんが、ものに対しての愛情が強いですね。ロボットに対して「頑張って」と声をかけたりだとか。自分が作ったロボットに愛情を注いでくれているので、それは嬉しいです。
香さん:愛情込めて動かしてるいるのと丁寧に扱っているかどうかはまた別なんですけどね。 (笑)。大会が終わった後に必ず私たちは反省会を開くんです。そこでよくプチ文句言ってますね。「どうしてもっと効果のあるモーション作んなかったのよ」みたいな。
宏さん:モーションが当日にできたんでどうしようもなかったです。今回は(Lightの)KHRやROBO-ONE剣道もルールが特殊だったので、いろいろ時間が必要でした。(香さんは)作りはしませんが、ものに対しての愛情が強いですね。ロボットに対して「頑張って」と声をかけたりだとか。自分が作ったロボットに愛情を注いでくれているので、それは嬉しいです。
今回はリモート大会でしたが、何か特別なポイントはありましたか?
宏さん:そうだったなと思うこともありますが、間に合わなかったという時もあります。気が付かなかった所を指摘されたり、いろいろですね。
次回もリモート大会だった場合、どのような工夫や練習をされますか?
香さん:操縦者としては、いかに失敗しないように操縦するかってことで、練習をする。それのみですね。ダミーロボットに対しての距離感を掴み、一発で技を決められるように、そして緊張して失敗したときのリカバリーをいかに早くやるか。そこでミスしてしまうと終わりなので。
宏さん:普段と同じ環境にいながら大会に参加するわけで、失敗しないように事前にもっと調整して、繰り返し試してみるのが必要かなと思います。それで完全に出来ていれば、試合の時にはきっと大丈夫なはずなので、頑張りたいと思います。
機体はどんなバージョンアップを考えていますか?
宏さん:ぜひミスミさんの「meviy」でテフロンの切削をお願いして、関節のサポート部品や足裏の一部パーツとして使ってみたいと思っています。