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第37回大会 ミスミ賞

Bluethunder なかむー

  • 中村 英樹(なかむら ひでき)さん
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子どもたちの心をつかみたくて作ったロボット

ROBO-ONE出場ロボットの中では、かなり小型・軽量の部類に入る『Bluethunder』。しかし愉快な動きと美しい歩行の存在感は強い印象を残してくれます。そんな小さなヒーローの制作者は、ROBO-ONEの常連出場チームとして知られる「ヒダカミロボ部」のそばで、いつも柔和な笑顔でほほ笑んでいる顧問の先生、中村英樹さんでした。

小さなロボットでバックドロップを決められたのが良かった

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。今回は生徒さんではなくご自身が受賞ということになりました。

中村さん:これまで生徒が何度も受賞させていただいているんで、嬉しいです。これで僕が先だと複雑な気分ですが。(笑)

Bluethunder
/なかむー

  • Concept

    子供のお手本になるマジメなロボット

  • Weight

    2200g

  • Height

    37cm

  • Axis

    サーボモーター23個

先生はどういったきっかけでロボットを作り始められたんですか?

中村さん:本校へ赴任する前の年、2002年にROBO-ONEの映像を初めて見ました。やってみたいと思っていたところで飛騨神岡高校に転勤となり、それをきっかけにロボット作りを始めた形になります。最初はいきなり二足ではなく四足だろうと考えて、犬型の四足歩行ロボットを作りました。今のような市販のマイコンボードも無いので全部組みあげたものの、計算歩行では歩かせるのも大変でした。その後、飛騨神岡高校では二足を始めてみたいと思い、当時のROBO-ONE上位者のブログを拝見したり、直接メールでお聞きしたりなんかして、部員募集で集まって来た生徒たちと一緒にロボットを作り始めました。

今回のリモート大会は先生自身の個人参加以外に、生徒さんのリモート参加のサポートも同時に行ってらっしゃったんですよね。大変だったと思いますが、初のリモート大会はいかがでしたか?

中村さん:生徒たちにはリモート大会のことは気にせず、やらせてあげたいという気持ちがありました。コロナの影響で3年生最後の大会がなくなったような部活もある中、短期間でこういったシステムを構築して開催していただいて感謝していますし、実際、本当にいい大会だったなというのが感想です。

『Bluethunder』をリモート大会のために変えた部分はありますか?

中村さん:腕の長さが昔のレギュレーションのままだったので、逆立ちをするために、今大会のレギュレーションに合わせて伸ばしたことと、前日に一睡もしないで予選の攻撃などのモーションを作りました。学校が忙しくて、全くできていなかったので。その中でも、バッテリー込みで2.2kgを切る小さな軽いロボットで、バックドロップを決められたのは良かったかなと思います。

中村さん

大会のルールありきではなく、自身のやりたいことに合わせて改良する

部活動で生徒さんがROBO-ONEに参加を続ける中で、『Bluethunder』は先生の個人参加用として作られたんですね。

中村さん:ROBO-ONE大会の公式MCを務めている荒井愛結さんは、飛騨神岡高校の卒業生なのですが、彼女が在学中の頃、部活動を引退して進路が決まった後に時間があったので、一緒にロボットを作りたいと言ったのがきっかけですね。顔も彼女がデザインしたりとか。板金の曲げ部品もかなりの部分彼女が行っています。ちなみにチーム名の「なかむー」も、彼女が学生時代に裏で僕のことを呼んでいた名前です(笑)。

『Bluethunder』はどんなコンセプトで作られているんですか?

中村さん:これは生徒たちがつくるヒダカミロボ部のロボットとも同じですが、精度を高く、剛性を高く作ろうというところがまずあります。その上でアルミの板金部品、3Dプリンター、CNCといった設備を活用して生徒たちの見本になるようなロボットにすることです。特にこの機体については、生徒たちではなく僕が全てメンテナンスするので、多少複雑にしても良いですし。結果的にこれを参考にして、ロボットをやっている高校生たちが優勝できればいいと思っています。

生徒さんは『Bluethunder』のどんなところを参考にされているんでしょう。

中村さん:歩行などは、僕の作ったロボットを参考にしているようです。美しく動くので、そこはビックリしてくれますね。生徒が作っているのは平行リンクの機体で、構造自体は違うんですが、足の運びとか重心の動かし方とかを参考にしているようです。アルマイトでの表面処理も学校でやっていて、生徒たちもカッコよさでやり始めるんですが、結構大変なので後悔しているようですね(笑)。

機体は小改良しているとおっしゃってましたが、どんなところを変えられているんですか?

中村さん:ROBO-ONEの規定に合わせて変えているわけではないんです。胴体のあたりにしゃべるユニットを組み込んだりとか…あとはもっとこうしたら動きが良くなるとか、剛性を高めるために作り直したりとか。僕自身のやりたいことに合わせて改良しています。

子どもたちを喜ばせて、惹きつけたい

先生の“ロボットでやりたい事”とは?

中村さん:子どもを喜ばせたいんですね。例えば高校説明会とかに、ROBO-ONEに出るような格闘系のロボットを持っていくよりも、『Bluethunder』を持って行ってコミカルな動きをしたほうが、子供たちや保護者の方の心を掴めます。事実これまでも何人もの生徒が、僕が中学校に行って説明会をしたときの『Bluethunder』を見て、飛騨神岡高校に来たいと思って来てくれました。ロボットに興味を持ってもらい、惹きつけるきっかけになれたらと思います。

今後はどういったロボットを作っていきたいですか?

中村さん:少し始めているんですけど、自律化はやりたいなと思います。今でもライントレース*1であるとか、ボールを追いかけるなどのプログラムを作っているんですけども、そういったことをもっと真剣に取り組んでいきたいと思っています。

中村先生にとって「ROBO-ONEで勝つ」が目的ではないそうですが。

中村さん:不思議とROBO-ONEで自分自身が優勝したいとは思わないんです。今回のミスミ賞のように、ロボットの技術的な面が評価されるのは嬉しいんですけども、やはり生徒たちが優勝を目指して活躍する場としての「ROBO-ONE」に魅力を感じています。二足歩行ロボット以外では得られないような、人型ロボットだから人間のすごさがわかったりするので、ROBO-ONEというのは大事な存在なんです。仕事でもありますけど、そこに参加を続けるモチベーションがあります。

  • *1 ライントレース 床に示された線をセンサーで認知し、たどっていく技術。利用した自動運転カーなどによる競技会が開催されている。

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