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第36回大会 ミスミ賞

Neutrino-Rossoニュートリノ ロッソ 飛騨神岡高等学校(ヒダカミロボ部)

  • 鈴口 玄起(すずぐち げんき)さん
  • 倉家 悠里(くらけ ゆうり)さん
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ROBO-ONEで培った経験が、次の挑戦の原動力に

2004年からROBO-ONEに出場し、優秀な成績を収めている、「ROBO-ONE伝統校」岐阜県立飛騨神岡高等学校・ヒダカミロボ部。今大会では3機が予選を突破しましたが、なかでも「Neutrino-Rosso(ニュートリノ ロッソ)」は、鮮やかな前転宙返りで大きな注目を浴びました。設計・操縦を担当した鈴口さん、加工を担当した倉家さんにとって、ROBO-ONEは自分を成長させる良い機会になっているようです。

土壇場で魅せた前転宙返り

ミスミ賞の受賞、おめでとうございます。

倉家さん:ありがとうございます。ぜひとりたいと思っていたので、すごく嬉しいです。

鈴口さん:高校最後のROBO-ONEで、爪跡を残すことができてよかったです。

Neutrino-Rosso
(ニュートリノ ロッソ)

  • Concept

    前転宙返りができるロボット

  • Record

    第36回 ROBO-ONE 決勝トーナメント出場

  • Weight

    3.0㎏

  • Height

    55cm

  • Axis

    サーボモーター19軸

ミスミ賞受賞のポイントとなった予選の床運動。規定演技4の前後方回転では、完璧な前宙を決め、この演技だけで10点を獲得されました。

鈴口さん:規定演技1の移動や2の逆立ちで連続転倒した時は、正直「もうダメだ……」と思いました。でも、せっかく前宙ができるようにつくり上げてきたので、最後まで全力でやりきろうと気持ちを切り替え、土壇場で逆転できて嬉しかったです。

前宙の成功者はほとんどいませんでした。成功させたポイントは?

鈴口さん:ひとつは、一連のモーションのプログラムをつくる際、重心を意識したことです。着地の時は前転の反動で倒れやすいので、どうやってその力を抜くかを考えました。また、股関節のロール軸という箇所を「長穴減速」にしました。スピードが2分の1になるかわりにトルク(力)が2倍になるため、着地が安定しやすくなるのです。これができたのは、倉家さんの精密な加工技術のおかげです。

倉家さん:私がアルミ板の加工を担当したのですが、長穴減速にするためにはアルミ板を0.1㎜以内の誤差で折り曲げる必要があり、そこが一番大変でした。

鈴口さん:倉家さんの加工技術は本当にすばらしいです。

お互いに助け合っているのですね。

倉家さん:はい。私たちの高校は岐阜県で一番生徒数が少ない高校で、部員も11人しかいません。電車の駅が近くにはなく、最終のバスが18時出発なので、部活の時間は1日2時間半が限界です。そのため、皆で意見を出し合ったり、わからないところを聞いたりして、フォローし合っています。

鈴口さん:予算もたくさんあるわけではないので、サーボモーターも古いものをメンテナンスしながら使っています。でも、部員同士の仲が良いので、工夫しながら楽しくものづくりができています。

倉家 悠里さん、鈴口 玄起さん

ロボットづくりのレジェンドたちから学んだ

いつからロボットづくりをされているのですか。

鈴口さん:ヒダカミロボ部に入ってからです。学校の説明会で顧問の先生がつくったロボットを見て「飛騨神岡高校に入ってロボットをつくりたい」と思ったのです。

倉家さん:私も高校に入ってからです。見学したら楽しそうだなと。女子部員は1人しかいませんでしたが、気になりませんでした。私は少し変わっているのかもしれません(笑)。

実際、やってみたら、ハマったと。

倉家さん:はい。つくるのは大変ですが、できたときの達成感がたまりません。

鈴口さん:最初は覚えることが多いのですが、やりがいは大きい。モーションのプログラムが成功したときは「できたー!」と叫びたくなります。

倉家さん:それから、ROBO-ONE大会会場に行くと、ロボットづくりの達人たちの話が聞けるのも、楽しみのひとつです。

鈴口さん:キング・プニ(第29・30・34・35回ROBO-ONE優勝)やレグホーン(第24・28回ROBO-ONE準優勝)などを製作されているレジェンドの方に、ロボットづくりの考え方をたずねたら、出し惜しみされることなく、いろんなことを教えてくださいました。キング・プニの製作者の方に、ロッソのハンドの設計を褒められた時は嬉しかったです。

ロボットづくりをきっかけに拓けた未来

そうして身に付けた知識は財産になっているのでは。

倉家さん:ROBO-ONEを通して得た知識は、他のロボットに関しても役立つことを実感しています。私は産業用ロボットにも興味があり、よく展示会に行ったりするのですが、企業の方が話される内容の理解度が高まるにつれ、より詳しいことまで教えていただけるようになりました。昨年開催された「インターナショナルロボットハイスクール」では、ロボットについて英語でプレゼンし、最優秀賞をいただくことができました。

鈴口さん:僕は、ROBO-ONEでの経験が進学に直結しました。今年、信州大学工学部への推薦入学が決まったのですが、選考の際、ロボットについてプレゼンする機会があって、説明の仕方を繰り返し練習しました。ROBO-ONEでのロボットづくりの経験が他のスキルアップにも繋がったと感じています。

今後の抱負をお聞かせください。

鈴口さん:ROBO-ONEをきっかけに興味を持った制御工学を、大学で学びたいと考えています。制御の技術はスマートフォンをはじめ、あらゆる機械に使われていますから、様々な機械づくりに携わりたい僕にとっては絶対に必要な学問です。ロボットについても、人型ロボットかどうかはまだわかりませんが、学術的にアプローチしてみたいと考えています。

倉家さん:私はまだ2年なので、まずはROBO-ONEで優勝したいです。高校卒業後は、ロボットと経済学の関係を学びたいです。今後、ロボットが経済に与える影響はすごく大きいはずだと思っています。

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