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第34回大会 ミスミ賞

YOGOROZAヨゴローザ だうと

  • 當田 秀稔(とうだ ひでとし)さん
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皆の見本になるロボット」を意識する古豪

YOGOROZAの特徴

大きな両手のハサミが特徴的ですね。

當田さん: 2004年の、ホントのホントに最初に作ったロボットには付いてないんですが、その後すぐに付けました。マイナーチェンジはありますが、今のフォルムになってから8年はそのままですね。

ルールが変化する中で8年そのままというのは珍しいですね。

當田さん: 僕はYOGOROZAの形状がオーソドックスだと思っています。基本となる構造をみんなに見てもらって、誰でも作れる形状で、真似しやすいというのがコンセプトだったんです。だからじゃないですか。

この手にはどんなこだわりがあるのでしょうか?

當田さん: 攻撃の時に広範囲を捉えられるというのと、逆に攻撃を当てられる的になるという、諸刃の剣的なところがあります。それでもハサミを付けてる理由は、いろんなことをやりたいんです。せっかくのロボットだから「相手を掴む」っていうのをやりたいな、っていうのが最初からありまして。ただ、なかなか掴むモーションは難しいので、作り始めた頃は飾りでした。

YOGOROZA(ヨゴローザ)

  • Record

    第32回 ROBO-ONE 4位

  • Weight

    2.9kg

  • Height

    52cm

  • Axis

    サーボモーター24軸

市販品も利用した、わかりやすい構造

足は市販のフレーム部品も使っているようですね。

當田さん: 太ももやスネ部分は市販品ですが、付け根や足首、足の甲などに自作部品や異素材を混ぜたハイブリッド版です。製品のままでは、派手な動きを繰り返していると、フレームの切り込みを支点にバキッと割れてしまうことがあって。何回も買うともったいないんで、壊れにくいパーツを作ろうと。

パーツはご自身で製作されたのですか?

當田さん: 昔はまだCNC*1が一般の人が扱うほど普及して無くて、手加工の時代だったんで作っていました。僕自身はプラモとか作るの大好きだし、リアルサイズの車両整備とかやってますから、全然加工するのは嫌いじゃないんです。でも今は精度が必要で、手間暇かかる部品は地元のロボット仲間にお願いして作ってもらっています。3Dプリンタで作ったダミーサーボブロックや、削り出しの足の甲もですね。もちろんタダではありませんので、お金を出しています。外注に出しているのと変わらないですね。そういう部分はわかっている人に任せた方が確実かなと思って、お願いしていますね。

腰のピッチ軸*2を持つロボットはあまり見ません。

當田さん: 確かに、平行リンク*3を使った機体で腰にピッチ軸が付いているのは珍しいですね。これは結局、いろいろな動きをさせたいときに、ピッチ軸があるほうが(モーションの)幅が拡がるということです。重心位置を細かく変えたいときには結構多用しますし、平行リンクの機体が苦手な起き上がりがしやすくなる。自分が思ってる方向へ動かしたいときに必要なところはどこかな、という考えで作っています。

逆に最近見かける肩のヨー軸*4は付けないのですか?

當田さん: それをやっちゃうと、あまりみんなのお手本にはなりにくいなと。基本的な。一番基本の部分を出来るだけ見てもらえるように意識しているつもりです。

基本の中で一番大事にしているところはどこでしょうか?

當田さん: やっぱりガタが多いのはダメだよと。特に下半身です。そこに柱要るだろうって言うところに入ってないとか、ひねったら動いちゃったとか。それも計算に入れて作ってるってなら別ですけど。あとはその構造に対する動き、モーションですよね。他人の機体で、せっかくいいロボットなのに勿体ないな、と思うこともあります。

當田 秀稔さん

*1 CNCフライス: エンドミルとテーブルの移動がコンピュータで制御された切削加工機械。
*2 ピッチ軸: 進行方向に対し、水平かつ垂直に交わる向きの軸。縦方向に回転する動きの軸。
*3 平行リンク: リンク機構の一種で、向かい合うリンクの長さが同じもの。
*4 ヨー軸: 床面に対して垂直に立った向きの軸。旋回方向に回転する動きの軸。

形を変えてもYOGOROZAは「見本」に

YOGOROZAの現役生活はまだまだ続きそうですか?

當田さん: できるだけ早く引退させてやりたいです。今回ミスミ賞をいただいて、色々な所をバラしてメンテし直したら、外から見てもわからないですけど、フレームがかなり破断してるところがありました。そういうの見ると、引退させてあげたほうがいいかなと思ったりもします。

新しいロボットの構想は固まっているのでしょうか?

當田さん: じつはメインの部品を3Dプリンタで作る機体をやってみようと思ってるんですけど、もう構想5年くらい経っています(笑)。自分でいろいろ作りたいなと思って3Dプリンタは買ってあります。

他にもアイデアがたくさんあるそうですね?

當田さん: 基本は一緒です。平行リンク構造にするかどうかもあるんですけど、平行リンクの可動域をもっと増やしたバージョンにしたい。今の一般的な平行リンクだと90度しか可動範囲がないですよね。走ったりするとき、どうしてもその90度が枷になってスピードが上げられない。これから進化するために、もっと可動域を増やしたいなと。平行リンク+独立ピッチ軸を、もっと簡略化された、誰でも作れそうな構造のものも作ってみたいなと。色々考えています。

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