インタビュー
第33回大会 ミスミ賞
わずか6歳ながら、異国のロボット大会であるROBO-ONEにエントリーした承展くん。しかも受賞ロボット「Rule the world」は自ら組み立てたものだというのだから驚きです。
なぜロボットを作ろうと思ったんですか?
承展くん:「カッコイイからです」
さすが6歳。作り始めるきっかけもシンプルで直球です。しかし、二足歩行ロボットは技術的にも難しいはず。「Rule the world」は市販キットを元にしているとはいえ、いきなり挑戦するのは難しかったのでは……と聞いてみると、承展くん本人は「前にも、後ろにも歩けるし、パンチができて、とても楽しいです!」と答えてくれます。なにぶんまだ6歳ですから、大人はどれくらい手伝ったのかな、とお母さんの黄睿瑩さんに尋ねてみました。
睿瑩さん:「承展は3歳からロボットで遊んでいました。マインドストームのEV3などですね。今回出場したロボットも、承展が組み立てました」
何と、6歳にしてロボット歴はすでに3年。承展くんが、とんでもないロボット・エリートであることが明らかになりました。「Rule the world」を作っている姿は、ご家族のスマホに記録されていました。承展くんが真剣な目でドライバーを握り、ねじを締めてどんどんロボットを作り上げていく様子が動画として収められています。
「Rule the world」の中で一番の“推し”ポイントはどこですか?
承展くん:「頭です。頭がロボットの中心で、そこから手や足に指令が行くからです」
工夫したところがあれば教えてください
承展くん:「色やシール(外装)のほかに、モーションを自分で作りました。パンチの手が動く速さを変えたりもしました」
「Rule the world」の頭の中には、全身をコントロールするマイコンボードが確かに搭載されています。つまり承展くんは、ただ組み立てたわけではなく、自分のロボットがどんな構造で、どの部品がどんな役目をしているかまでをしっかり把握しているのです。そして格闘競技で勝つにはどうしたらいいのかを検討し、動きを改良する。身体は小さくとも、まごう事なき“ロボット・ビルダー”の姿そのものでした。
Rule the world(ルール ザ ワールド)
Record
第33回ROBO-ONE 初出場
Weight
2.1kg
Height
38cm
Axis
サーボモーター15軸
承展くんは現在、台湾のロボット教室に通っており、初級コースに在籍中。初級とはいえ、承展くんほど低年齢の生徒は、やはり特別・特例なんだそうです。今大会に揃って参加した“Dragon Warrior”チームは、同じロボット教室の仲間たちでした。
台湾ではロボット教室は身近なのでしょうか?
睿瑩さん:「まだ台湾ではロボット技術を学ぶ場は多くないのですが、ロボット教室の先生と出会ったおかげでこんなロボットを製作できるようになって、感謝しています。私の父は承展のロボット製作をとても応援していて、今回のROBO-ONE参加の話をいただいたときにも、『彼ならできる』と言って、後押ししてくれました」
台湾でもROBO-ONEのような格闘競技大会は開催されており、選手は毎週行われる大会や、年2回の大きな大会に向けて日々勉強しているそうです。睿瑩さんが言うように、まだ教室の数はそれほど多くないですが、講師を養成するなど、環境を整える方向に進んでいるようです。
また、今回台湾からの参加チームは共通のキットをベースにしており、日本勢のようなオリジナル機体が見あたりませんでしたが、これは参加メンバーの多くが初級の生徒だったことが要因。前回ROBO-ONEを席巻した韓国チームも、かつては市販機ベースで参加者を増やし、経験を積んでいた時期があります。同様に大会参加でノウハウを蓄積し、進化させたロボットが将来的にROBO-ONEの舞台に登場してくるに違いありません。
睿瑩さん:「承展には今後、ハードウェア、ソフトウェア両面を勉強させてあげたいと思っています。ロボットに関しては、組み立てるだけではなくて、ソフトウェアの開発であったり、数学や英語もきちんとできなければ作成することが難しいので、それも勉強させてあげたいですね」
これから先、こんなロボット作ってみたいという目標はありますか?
承展くん:「全体を黄色にしたいです。あと、指を作りたいです」
将来は何になりたいと思っていますか?
承展くん:「ロボットを作る会社の社長さんになりたいです。社長さんになっても、二足歩行ロボットを作りたい。あと、お母さんの家事の手伝いロボットを製作したいです。お母さんは昼間仕事をしてて、夜もずっと家事をしているのを見ていました。だから、一番の夢は、家事が出来るロボットを発明して、お母さんが早く寝られるようにすることです」
一番に挙げたのが、ロボットの「色」というあたりは微笑ましい答えですが、同時に挙げた「指」は、承展くんの夢“家事手伝いロボット”に繋がっている、大人顔負けの視点です。そして何より、お母さんのことを思いやる優しい気持ちが、ロボットづくりや学習へのモチベーションになっているのが伝わってきました。
遠い国に行かなければならないし、大変だと思いますが、今後もROBO-ONEに参加してくれますか?
承展くん:「(即答で)はい!」
力強く断言してくれた承展くんは、ロボットを作る純粋な楽しさにあふれた笑顔でした。